自動車業界で最近話題のテクノロジーのひとつが自動運転だ。グーグルなどの新興勢力に対抗すべく、多くのカーメーカーが、自分たちの技術こそ自動運転に近いと競い合っている。しかしマツダの先進安全技術、 i-ACTIVSENSEは独自のスタンスにある。
『CX-5』と『アテンザ』の改良モデルにも、その姿勢は受け継がれてることを、車両開発本部車両システム開発部 大村博志氏のプレゼンテーションで教えられた。
「マツダの安全思想の特徴は、人間重視であるということです。ドライバーへの情報提供こそが大切だと思っています。具体的に言えば、事故が迫っていることを教えてあげる技術です。機械よりもドライバーのほうが頭が良いと私たちは考えていますから」(大村氏)。
i-ACTIVSENSE では、フロントグリル内にミリ波レーダー、ルームミラー脇にカメラと赤外線レーザーを備え、クルーズコントロールを含めた運転支援を行う。リアはバックソナーに使っているミリ波レーダーのうちの2個を活用している。
今回の改良では、スマート・ブレーキ・サポート(SBS/自動ブレーキ)が進化した。後退時についてもペダル踏み間違いによる暴走防止を盛り込んでいる。マツダ車では初めてレーンキープ・アシスト・システム(LAS)とドライバー・アテンション・アラート(DAA)も採用。国産メーカー初のアダプティブ・LED・ヘッドライト(ALH)も投入している。
いずれも一部の輸入車や国産車に採用例はあるが、細部にはマツダらしさが盛り込まれていた。とりわけALHについては独自のこだわりが感じられた。
「ALHは遮蔽版を用いず、複数のLEDを使い分けることで対向車や前方車の眩惑を防止しています。またワイド配光ロービームは低速のみの作動としています。高速ではドライバーの意識を前方に集中させたいので、ロービームを意識的にカットしているのです」(大村氏)。
暗室を用いての実演では、速度や舵角に応じてLEDの明るさや照射角が的確に変化し、運転者だけでなく対向車や先行車が望む明るさを絶妙に提供してくれることが分かった。
マツダのテクノロジーが技術のための技術ではなく、人間が扱う技術であり、社会を見据えた技術であるというスタンスが、ALHというひとつの結晶を通して伝わってきた。