【インタビュー】「ハイパワー&ロングツアラー」こそ不変のアイデンティティ…ベントレージャパン代表

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ベントレー モーターズ ジャパン&コリア代表 ティム・マッキンレイ氏
ベントレー モーターズ ジャパン&コリア代表 ティム・マッキンレイ氏 全 16 枚 拡大写真

2003年、それまでのロールスロイス傘下からVWグループの一員になったベントレー。それ以降、モデルラインナップを刷新し、順調に販売は推移している。ベントレーの現在、そして、今後について、ベントレー モーターズ ジャパン&コリア代表のティム・マッキンレイ氏に話を聞いた。

◆2014年は好調な1年だった

----:2014年を振り返って、世界と日本のベントレーの状況について教えてください。

マッキンレイ氏(以下敬称略):昨年は、ベントレー史上最高の販売台数、1万1020台を記録しました。これは2013年に比べて9%アップした数字です。エリアではカナダを含めた北米が一番大きなマーケットで、ここ数年この傾向は変わりません。そして、2番目の中国(香港、台湾を含む)もベントレーにとって非常に大きなマーケット。3番目に大きいのがイギリスを含むヨーロッパ。そして中東となります。

私が担当する日本と韓国に関してですが、日本は昨年度300台を超え、満足出来る販売台数でした。そして、特に注目したいのが韓国のマーケットです。ビジネスを始めた2006年には80台からスタートし、昨年は300台以上の販売台数を達成することが出来たのです。実に4倍以上の成長率になります。

◆ベントレーのアイデンティティはハイパワーでロングツアラーであるということ

----:1919年にベントレーは設立され、その後、ロールスロイスの傘下を経験したのち、2003年からはVWグループに属しています。この長い歴史を振り返り、そして、将来を見たときに、ベントレーというブランドは、どういう方向性を持っているのでしょうか。

マッキンレイ:ベントレーは、安定したブランドスタイルで、あまり大きな方向の変更はこれまでも、そしてこれからもする予定はありません。

(VWグループに入った)2003年からは、ブランドとして成長を見せ、新しいプロダクトラインである、『コンチネンタルGT』を導入しました。それによって、ブランドのキャラクターは大きく変わったと思いますし、コンチネンタルシリーズを導入したことが、ベントレーのイメージを一番大きく変えた出来事だと思います。

更に、ベントレーを購入するユーザーのプロファイル、年齢も変わってきましたし、女性も購入しています。つまり、ベントレーが成長することで、いままでベントレーとは接点のなかったお客様にも、購入の機会が増えていくと思っています。

しかし、ベントレーのブランドアイデンティティは変わりません。それは、ハイパワーでロングツアラーであるということです。現在、そして今後はそれをもっと強化させていきます。

◆プレミアムブランドとラグジュアリーブランドの違い

----:我々は普段、量産車を主に取材をしており、そこには当然プレミアムブランドと呼ばれるメーカーも含まれています。しかし、ベントレーは量産とはいえワンオフの世界もお客様に提供しています。そこを踏まえると、マスプロダクトのプレミアムメーカーと一線を画していると考えるのが正しいのでしょうか。

マッキンレイ:もちろん我々もクルマを作る工程では機械を使います。一方ラグジュアリーカーであるということは、テーラーメイドを受けられる体制にあるということが重要なのです。当然我々もお客様の要望に応じたカスタムメイドを受けられる体制になっています。

ベントレーの購入を検討し始めたお客様が最初に驚くのは、色々な選択肢があるということです。プレミアムブランドではチョイスは限られていますが、ラグジュアリーブランドのベントレーは、そのチョイスは無限大なのです。

ペイントに関していえば、特殊なカラーや、自分の好きなカラー、例えば自分が持っている船や飛行機、更にはリップスティックと同じカラーにしてほしいなどの要望が多くあります。そういうオーダーの全てをベントレーは受け入れているのです。

そういったカスタムメイドを受け入れるために、我々には“マリナー”と呼ばれるディビジョンがあります。ここではお客様がユニークでパーソナルなものを作りたいという要望に対し、お客様と一対一で対面しながら、思うような仕様を決めてもらえるようなスペースもあるのです。

つまりプレミアムブランドでは、直接お客様が会社に行って好きな仕様を選んだり変更したり、デザインしたりという経験はなかなか出来ないでしょう。そういう方たちを我々は受け入れて、エンジニア、デザイナー、クラフトマンと直接お話をして、仕様を決めていくという経験が出来る。この経験が非常に重要だと思っています。

◆ラグジュアリーブランドとして成長を止めない

----:ベントレーは年間約1万台販売をしており、今後はさらに台数を伸ばしていくことも目標としていますね。しかし先ほどのお話の通り、ベントレーはマスプロダクトのプレミアムブランドではないとしています。そこで、今後の「台数」の考え方について教えてください。

マッキンレイ:おそらく2つの側面があります。ひとつは、これまでベントレーが販売されていないマーケットに参入することで台数が伸びていく、ということが考えられます。現在ベントレーは販売拠点を全世界に増やすべく活動をしています。昨年はベトナムに新拠点をオープンしました。韓国も同様で、2006年にディーラーをオープンし、そこから数年で300台を超える台数に成長しているのです。今後も、いままでケア出来なかった世界にクルマを供給していくということを進めていきます。

もうひとつは、ベントレーは新しいセグメントを作っているということです。2003年には2000万円以上のセグメントにクルマはほとんどありませんでした。そこにコンチネンタルGTを投入したことで、新しいセグメントを作ったのです。そして、今年の後半に『ベンテイガ』という新しいSUVモデルを発表します。このクルマも新しいラグジュアリーSUVセグメントを作っていきますので、またボリュームが伸びていくでしょう。

----:このベンテイガはどういう市場で好まれるのでしょうか。

マッキンレイ:もちろん台数ではアメリカ市場が一番大きいのでそこがターゲットになってくるでしょう。しかし、ほかのマーケット、例えば日本や韓国にもこういったクルマに興味を持つお客様が多くいると感じています。

例えば我々のグループ会社のポルシェ『カイエン』も新しいセグメントを作り出した良いクルマで、街で見かけることも多いのではないでしょうか。ベンテイガも同じように日本でも韓国でも興味を持ってもらえ、かつ、どこかほかのクルマとは違うということを感じてもらえるでしょう。

◆将来パワートレインが変わったとしてもベントレーらしさは忘れない

----:そのポルシェは最近プラグインハイブリッドなど、スポーツカーブランドでありながらも、電動化などの方向性も打ち出しています。では、ベントレーは今後どういう方向性を考えているのでしょうか。

マッキンレイ:我々はVWグループに属していますので、一番のアドバンテージメリットはグループ内ブランドの様々なテクノロジーに触れることが出来るということです。更にそのテクノロジーのうち、どれがベントレーに適しているかを考え、選択出来るということもメリットだと思います。

昨年、『ミュルザンヌ』をベースにしたハイブリッドコンセプトを発表しましたが、それもひとつの方向性だと思います。いまは多くの可能性を調査している段階ですので、そのうち一番適した形で導入されると信じています。

----:最近日本では水素、FCVが出てきて話題になっています。ベントレーのアイデンティティのハイパワーでロングツアラーであることを考えると、EVよりFCVの方が即しているように感じますがいかがでしょう。個人的な意見で結構ですのでお教えください。

マッキンレイ:私はエンジニアのエキスパートではありませんし、どちらが良いかという意見はありません。最終的にはお客様が決めることで、お客様の人気のテクノロジーが、良いテクノロジーであろうとは思っています。

ベントレーにもハイブリッドのテクノロジーは将来入ってくるでしょう。しかし、それによってベントレーのキャラクターが変わってしまい、お客様がベントレーらしいと感じなければその技術は失敗ですし、そもそも採用はしないでしょう。

お客様にとっては、どんなテクノロジーが入っているかは関係ないのです。運転したフィーリングがベントレーだからこそ、ベントレーだと感じてもらえる。そこが非常に重要なのです。

《聞き手:三浦和也、まとめ:内田俊一》

内田俊一

内田俊一(うちだしゅんいち) 日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員 1966年生まれ。自動車関連のマーケティングリサーチ会社に18年間在籍し、先行開発、ユーザー調査に携わる。その後独立し、これまでの経験を活かしデザイン、マーケティング等の視点を中心に執筆。また、クラシックカーの分野も得意としている。保有車は車検切れのルノー25バカラとルノー10。

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