レクサスからクーペモデルの『RC』が加わった。『SC』以来の久々のラグジュアリークーペであり、プレミアムブランドにとって必要なモデルである。
RCには「RC350」と「RC300h」の2モデルが基本として設定されている。RC350にはV型6気筒3.5リットルエンジンが、RC300hには直列4気筒2.5リットル+電気モーターのハイブリッドシステムが搭載されている。
この両モデルに試乗し、果たしてこのラインナップで良いのかと思った。RC350は走りのパフォーマンスは十分なものがあるが、環境性能とエコカー減税に全く届かないレベルである。せめてアイドリングストップ機構くらいは装着してほしい。
RC300hは燃費を中心に環境性能は素晴らしいが、クーペらしいスポーティな走りとなると何とも物足りない。なので、どちらもRC用のパワートレーンとして中途半端であるように思えた。
レクサスには『NX200t』に搭載した直列4気筒2.0リットルの直噴ターボ仕様エンジンがある。RC350とRC300hではなく、この2モデルに代えて「RC200t」だけにした方が良かったのではないか。200tなら走りと環境性能を高次元で両立させてバランスの良いクルマになる。
パワートレーンは何とも中途半端な印象だが、それ以外の部分は割と良くできている。外観デザインはラグジュアリーなスポーツモデルらしいカッコ良さを備えているし、『IS』をベースにしたインテリアもまずまずのクオリティを感じさせる。
クーペボディにレーザーウェルディングの溶接技術や構造接着剤が採用され、高いボディ剛性を得たことが安定した走りにつながった部分があり、ボディがしっかりしたクルマならではのドライブフィールが得られる。
中でも「Fスポーツ」の引き締まった走りは好感が持てる。可変ステアリングやLDHと呼ぶ後輪操舵(そうだ)の機構が加えられ、軽快なハンドリングを感じさせる。標準車に比べるとクルマが一段と思うように動く感じになり、ドライバーがクルマを操つる実感が高まる。
それだけに、RC200tの電子制御8速AT仕様があったなら、さぞかし良いクルマになっていただろうと思う。
■5つ星評価
パッケージング:★★★
インテリア/居住性:★★★
パワーソース:★★★
フットワーク:★★★★★
オススメ度:★★★
松下宏|自動車評論家
1951年群馬県前橋市生まれ。自動車業界誌記者、クルマ雑誌編集者を経てフリーランサーに。税金、保険、諸費用など、クルマとお金に関係する経済的な話に強いことで知られる。ほぼ毎日、ネット上に日記を執筆中。