【トヨタ ヴェルファイア 試乗】2.5Lガソリンモデルでも“大空間高級サルーン”を堪能可…青山尚暉

試乗記 国産車
トヨタ ヴェルファイア
トヨタ ヴェルファイア 全 12 枚 拡大写真

「トヨタの最上級ミニバンではなく、大空間高級サルーンです」。開発陣がそう胸を張るのが、乗り心地にもこだわったという新型『アルファード』『ヴェルファイア』だ。

先代に対して全長、ホイールベースを伸ばし、迫力と高級感たっぷりの顔つきを持つボディーは、一目でアルファード/ヴェルファイアと分かるものの、存在感はまさに巨大な背高高級サルーンと言っていい。

新型の大きなハイライトのひとつが4種類に増えた2列目席。8人乗りベンチシート、7人乗りリラックスキャプテンシート&エグゼクテイブパワーシートに加え、さらに上級のエグゼクティブラウンジが加わった。もはやシートの立派さ、かけ心地、装備、機能、リクライニング角度ともに航空機のアッパークラスさながらなのである。

パワーユニットはガソリンが先代より排気量をアップした新開発の2.5リットル直4と、キャリーオーバーの3.5リットルV6。そして2.5リットルのHVを用意。リヤサスペンションがトーションビームからより乗り心地や操縦安定性に優れるダブルウィッシュボーンに変更されたのもニュースである。

ここで試乗したのはヴェルファイアの2.5リットルガソリンエンジン+CVT(JC08モード燃費11.6km~12.8km/リットル)の18インチタイヤを履くエアロモデルだ。

走りだせば、新エンジンは実に滑らかに回る。回転を上げていっても直4とは思えない上質な回転フィールを示し、たとえ5000回転まで回しても無粋なノイズ、振動とは無縁だ。

ただ、エンジンが先代の2.4リットル、170ps/22.4kg-mから、2.5リットル、182ps/24.0kg-mに排気量、パワー、トルクアップしていても、先代の2.4リットルモデルの想定外に軽やかな加速感は期待できない。先代より車重が増し、燃費に振ったエンジン制御を施しているためだと思われる。

もちろん、速度に乗ったクルーズでは過不足ない加速力を発揮。静かな大空間高級サルーンの心地よさをしっかり味わえる。ちなみに0-100km/h全開加速のタイムは先代の11.8秒に対して11.3秒(メーカーデータ)と、わずかとはいえ速くなっている。

驚かされたのは操縦安定性である。パワステは応答性に優れ、カーブを勢い良く曲がり、高速レーンチェンジを意図的に素早くこなしても、車体はほぼ水平感覚。先代より重心は10mmしか下がっていないはずだが、それ以上の低重心感覚と鼻先の軽さ感、全高を感じさせない安定感、フットワークマナーの良さを披露してくれるのだ。

18インチタイヤを履く乗り心地も悪くない。基本的にフラットで、荒れた路面や段差越えでもゴツゴツ感は最小限。後席乗員の揺すられ感も同様だ。

そうした乗り心地の実現は、ボディー回りの200カ所に及ぶスポット増しや、レクサス譲りの構造接着剤を採用したことで剛性ががぜん高まり、サスペンションを柔らかめにセッティングできたことが効いていると考えられる(HV、エグゼクティブラウンジ仕様はさらに乗り心地に振ったサスチューニングが施されている)。

ところで、リラックスキャプテンシートはスライド量を30mm伸ばし830mmに。かけ心地は先代より背中の包まれ感が増した印象で、上位シートと比べると見劣りはするものの、快適感はなかなかだった。

しかも身長172cmのボクのドライビングポジション基準でニースペースは驚愕の870mmに達し(先代800mm)、1列目席ははるか遠い。その数値、というかニースペースは全シートバリエーション中、最大でもある(ベンチシート460mm、エグゼクテイブパワーシート510mm、エグゼクティブラウンジ460mm)。リクライニング角度は173度。背もたれを目いっぱい倒しリラックスして足を伸ばし切っても、前席に靴が触ることはなかったのだから、広さはもうクルマの後席の常識外である。

新型ヴェルファイアはエグゼクテイブラウンジ仕様の650~700万円!! というハイエンドモデルの価格が話題になり、高根の花感があるものの、標準的な2.5リットルガソリンエンジンのリラックスキャプテンシート仕様なら約400万円。先代に対して驚くほど高くなったわけではない。2.5リットルになった新エンジンや装備の充実度を考えれば、納得するしかない絶妙の値付けである。

ペットフレンドリー度も抜群だ。スライドドア、3列目席をハネ上げ格納し拡大した荷室フロア側のどちらからでも乗降は極めて容易。乗せ場所も2/3列目席、荷室フロアに加え、リラックスキャプテンシートを最後端位置までスライドさせると2列目席足元に幅1350mm、奥行き720mmものフラットスペースが出現。そこで大型犬をゆったりくつろがせることも可能だから、乗せ方、乗せ場所は自由自在である。静かで滑らかな走行感覚、2/3列目席をカバーした空調も、聴覚に優れ、どこかにつかまれず、暑がりの犬にとってうれしいポイントだろう。

■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア/居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★★
オススメ度:★★★★★
ペットフレンドリー度:★★★★★

青山尚暉|モータージャーナリスト/ドックライフプロデューサー
自動車雑誌編集者を経て、フリーのモータージャーナリストに。自動車専門誌をはじめ、一般誌、ウェブサイト等に執筆。ペット(犬)、海外旅行関連の書籍、ウェブサイト、ペットとドライブ関連のテレビ番組、イベントも手がける。現在、犬との自動車生活を提案するドッグライフプロデューサーとしての活動も広げている。

《青山尚暉》

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