【スズキ エブリイ 新型発売】クラストップの室内空間実現、乗り越えた障害とは

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スズキ エブリイ ワゴン ハイルーフ
スズキ エブリイ ワゴン ハイルーフ 全 16 枚 拡大写真

10年ぶりのフルモデルチェンジを実施したスズキの『エブリイ』と『エブリイワゴン』が2月18日より販売開始となった。

「エブリィに乗っている方に、フルモデルチェンジにあたって、何か不満がありますか? どんなことがご要望ですか? と、開発をスタートするときに、現場まで行って聞いてみました。すると、やはり荷物がたくさん積めて、快適に乗れて疲れなくて、安心できる…と。漠然と言えば、そういうことになります。特に仕事で使う商用のエブリイについては、運転席から後ろの座席を倒したときの荷室が、どれだけ広く、荷物をどれだけ積めるのか? ということを考えました」と、エブリイのチーフエンジニアを務めたスズキの水嶋雅彦氏は振り返る。

広い室内を実現させるために新型エブリイは、ピラーを前進させて、さらに直立度を高めた。サイド面の角度も立てて、スクエアなクルマとした。フロントタイヤの位置、運転席などの前席の位置も前進している。その結果、新型エブリイは、クラストップの荷室長、荷室幅などを実現した。しかし、得るものがあれば失うものもある。そのひとつがフロント部のクラッシュストロークの減少である。つまり、前面の衝突安全性能が厳しくなるのだ。

「商用車はフルモデルチェンジのインターバルが長いんですね。乗用車は普通4年から5年のところを、倍以上ですから。先代の例でいえば10年くらい存続しないといけない。そうなると、どれだけ先取りしたことをやらないといけないか、を考えましてね。まずは、安全対応をしっかりとやらなければいけない。鋼材の見直しや骨格への補強の入れ方を考えました。鋼材は、新しいウルトラハイテンの780や980MPaを使っています。また、今のご時世は燃費も良くしないといけないので、軽くしないといけない。相反するものですが、構造材の入れ方を考えながら、クルマの骨格を仕立てています」と永嶋氏。

また、クルマがスクエアになるほど、他にも厳しい面が発生する。それがデザインだ。

「ピラーを立てると、デザインに使える“造形しろ”がどんどんなくなっていくんですね。その中で、ちゃんと剛性を感じられる面を構成できるデザインテーマを選ぶというのがメインとなりました。限られた幅の中で面の強さを出すために、入ったり出たりを繰り返して、それぞれの面に張りを持たせていきます。このキャラクターラインの位置、深さ、それと各ラインとの幅。そういうところを綿密に計算して、少ない寸法の中で、ちゃんと強さを見せることができるようなデザインを選んでいます。グラフィックとディティールの作り込みが重要になります」と語るのは、チーフデザイナーの松島久記氏だ。

また、新型エブリイは燃費性能の良さも特徴のひとつとなる。NAエンジンにはロボタイズドMTとなるAGS(オートギヤシフト)が組み合わされ、最高でJC08モード燃費は20.2km/リットルを達成。これはクラストップの数値だ。

「MT車に乗っている方に話を聞くと、“燃費がよくて力もあるからMTに乗っているけど、さすがにクラッチが疲れる。自宅のクルマは普通のCVTとかATだから、MTは嫌なんだよ”と言うんです。逆にATのお客様に話を聞くと、“力がないのと燃費が悪い。高速に乗るとギヤ比が低いので、うるさいよ”と。それならばAGSが一番あっているのではないかと。MTにお客様にもATのお客様にも満足できるものとしてAGSに切り変えました」と水嶋氏。

そして、最後の新型エブリイの特徴は、ユーティリティの向上だ。

「商用車もそうですが乗用のお客様を見ると、家族で旅行に行ったりしています。移動の手段だけではなく、キャンプをしたり、釣りをしたり、趣味でバイクを積んだりしていて。そういうのを見に行くと、みなさま改造しているんですね。棚をつけたりして凝っている人は本当にすごい。だったら最初から、そういう仕掛けをしようと。今回は、荷室のサイドの上下に仕掛けをしています」と水嶋氏。

それが多彩なアクセサリーに対応するための上下2段のラゲッジボードステーだ。室内天井近くの左右や窓の下には、アクセサリーを取り付けるナット「ユーティリティナット」10か所が用意されているのだ。

10年ものスパンを考えて生まれ変わったエブリイ。新型モデルも、働くクルマや趣味の乗用モデルとして、また長く愛されることは間違いないだろう。

《鈴木ケンイチ》

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