「Art of Auto」をテーマとした、バンコクモーターショー15が3月25日~4月5日の約2週間にわたって一般公開される。それに先立ち、23日には重要顧客を対象にしたVIPデー、24日には報道関係者向けのプレスデーを開催した。
タイは東南アジア(ASEAN)域内でいち早く自動車産業が発展した国でもある。タイ国内には日本を含め海外の自動車メーカーの生産拠点が並び、昨年、販売台数でこそインドネシアにASEANナンバーワンの地位を奪われたものの、生産台数では今もなおASEANナンバーワンを誇る。それだけに自動車産業に携わる関係者も多く、自ずと自動車への関心も高まる。毎年180万人規模の来場者を数えるのもそんな背景があってのことだろう。
日本をはじめとするモーターショーの多くがコンセプトカーを出展して“将来の夢”を競い合うが、バンコクモーターショーなどASEANで開催されるショーでそうしたクルマはほとんど見られない。その理由は、モーターショーそのものが“受注商談会”的な特性が色濃いからだ。そのため、出展車両も実際に販売されているか、間もなく販売されるものばかり。ショーの開催時間も連日夜22時までと長く、会場内には商談スペースが必ず用意される。「誰よりも早く新型車に乗りたい」そうしたユーザーが数多く会場を訪れるのだ。
昨年開催されたバンコクモーターショー14では期間中に3万9415台を受注。前年に比べて台数ベースでは約4%ほど下回り、2年連続で受注台数が落ち込む結果となってしまった。それはタイ経済の経済成長に加えて、初めてマイカーを購入する人向けの「ファースト・エントリーカー・インセンティブ」や、エコカー(1300cc以下で100kmを5リットル以下の燃料で走る車)購入者に対する物品税の優遇措置が2012年12月をもって終了してしまったことが要因と言われる。
これについてショーの主催者インタービューに答えたジャトロン・ゴモン・ミット氏は、「メルセデスベンツやBMWといったプレミアムクラスの販売実績が高まっており、金額ベースでは十分に上回っている」 という。また、ショーへの来場者の見通しも昨年並みを予想しているそうで、「政情が安定しない国情ではあありながらも、経済的な部分での不安は今後もほとんど持っていない」(ジャトロン氏)そうだ。
ただ、2013年以降、ショーでの受注台数は下降線を辿っているのは確か。そこで主催者として、「カンボジアやベトナム、ラオスといった周辺諸国からディーラー関係者を多数ショーに呼んでいる他、観光ツアーにショーを組み込んでもらって入場料を無料とする企画も進めているところ」(ジャトロン氏)だという。
一方、ショー自体を盛り上げようとする機運も高まっており、中でもメルセデスは9500万バーツ、BMWは7000万バーツを投入。日本やドイツ、イギリスの各メーカーも本国より業者を呼んで、“本物志向”で各ブースの設営を行っている。また、フォードはバンコクモーターショーをアジアにおけるショーの中核と考えており、今回のショーでは海外のメディア関係者150人も呼んでいるというほどだ。
ジャトロン氏の報告によれば、23日のVIPデーと24日のプレスデーの2日間で、ロールスロイスが3台、アストンマーチンが2台の受注を獲得。メルセデスやBMWも、数字は正確ではないが共に50台以上を受注している模様だと語った。各社とも目標の受注台数を前年比アップで据えており、このまま行けば前年を上回れるのではないかと予測した。
今回は、ワールドプレミアが一台もなく、海外メディアの立場からすれば話題に乏しいショーとなってしまっている。しかし、ショーの質の高さは最近の東京モーターショーを上回ると感じるほど。インドネシアでのモーターショーも年を追うごとに盛り上がりを見せており、ASEANで開催されるモーターショーは確実に侮れない存在へと確実に成長していることを再認識した。