【日産 エクストレイル ハイブリッド 発表】待望のHVはまさに「真打ち」!? SUV市場に新風なるか…高山正寛

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日産 エクストレイル ハイブリッド
日産 エクストレイル ハイブリッド 全 12 枚 拡大写真

4月7日、日産は“待望”の新型『エクストレイルハイブリッド』を発表した。SUVの人気車種『エクストレイル』は、ハイブリッドの設定が無い中でも4万2533台(自販連調べ)と2013年度SUV販売台数No.1を達成した。このクラスは今後も勢いのあるマーケットであることは誰もが認めるところ。2014年の新車登録台数ベスト30を見渡しても5車種がランクイン、この合計販売台数は約27万台というから好調さが伺える。一方、このクラスでも3台に1台はハイブリッド車であり、確実にこの需要が高まっていることがわかる。

そこに発表されたエクストレイルハイブリッドはまさに「真打ち」と言えるモデルだ。すでに日産は『リーフ』や『e-NV200』に代表される、究極のエコカーである「ゼロ・エミッション」やエンジン進化型エコカー「PURE DRIVE」をCo2削減の二本柱として展開しているが、今回のエクストレイルハイブリッドはEVで培った技術を元に開発した高効率のハイブリッドシステムを搭載することで後発の強みを生かしつつ、独自技術でSUVマーケットに新風を巻き起こそうとしていることが読み取れる。

◆「タフ ギア ハイブリッド」という新しい提案

では具体的にエクストレイルハイブリッドはどのようなクルマなのだろうか。そもそもベースとなるガソリン車を含め、歴代のエクストレイルは「TOUGH GEAR(タフ ギア)」をキーワードにシーンを問わない高い走行性能やアウトドアスポーツの道具としても優れた収納性や使い勝手の良さが評価されてきた。また昨今では常識になりつつある安全を含めた先進機能や環境性能の高さなどクルマとしての基本性能も充実していたのである。

特に日産が昨今展開している「ワクテク」と呼ばれる先進安全技術、具体的には標準装備のエマージェンシーブレーキやオプション装備でインテリジェントパーキングアシスト、アラウンドビューモニター、スマートルームミラーが設定されている。つまりまとめると元々エクストレイルというクルマは高い走行性能とセーフティシールドと呼ばれる安全装備を充実させたSUVであることがわかる。

ではこのエクストレイルが新たにハイブリッドシステムを搭載することでどのような“化学反応”、言い換えれば進化を遂げたのだろうか。ひと言で言えばそれは従来までの「TOUGH GEAR」に「先進性」を加えることで時代の要求に応える環境性能とパワフルな走り、さらに従来では味わうことのできなかった静粛性に代表される新しい走行フィーリングを得ることができるのである。

◆モーターのみで120km/hまで走行できる

エクストレイルハイブリッドに搭載されるシステムはすでに『フーガ』や『スカイライン』に搭載され高い評価を受けている「1モーター2クラッチ」と呼ばれる方式である。組み合わされるトランスミッションはこちらも定評あるエクストロニックCVT、早くからリチウムイオンバッテリーに着目し搭載してきた実績もあり、このクルマにもニッケル水素バッテリー比約2倍のエネルギー密度を持つ35kWのユニットを搭載、これによるシステムの最大出力は138kW(188ps)とガソリン車を大きく超える。

いわゆるパラレル式という領域に入るこのハイブリッドシステムだが、最大の特徴は1つのモーターで走行と充電を効率よく行える点にある。特にエンジンを完全に切り離すことができるので、モーターのみの状態で高速走行が可能なのである(アクセルオフ時のみ)。これはすでにフーガなどでも実証済みだが、他社が60~80km/hまでしかモーター走行ができないのに対し(実際はもっと早くエンジンが始動してしまう)エクストレイルの場合は120km/hまでの走行が可能(アクセルオフ時のみ)。これを数値に換算すると代表的なハイブリッドカーがEVで高速走行できる領域がわずか9%程度しかないのに対し、エクストレイルの場合は21%という驚くべき数値を達成していることになる。当然のことではあるが、この領域ではエンジンは停止しているのでより高い静粛性を実現する。

モーター走行領域の拡大は全域にわたってこのクルマの走りの良さをサポートする。モータートルクによるレスポンスに優れた発進加速や270N・mという2.5リットル車を超える最大トルクは幅広い速度域で従来以上に余裕のある走りを実現してくれるはずだ。またこの1モーター2クラッチシステムは減速時に完全にエンジンとモーターの接続を切り離すことで、下り坂などではモーターへの抵抗が減ることにより効率よく充電できるなどのメリットも持っている。

これらを総合した環境性能だが、JC08モードは2WD車で20.6km/リットル、4WD車でも20.0km/リットルと落ち込みが少ないのが特徴だ。もちろん新エコカー減税に対しても減税額の減少が増えている中、自動車取得税と自動車重量税は免税となる点も高い環境性能が実現した結果と言える。

◆先進の安全装備&4WDシステム、実用性の高さも魅力

エクストレイルハイブリッドには2WDも設定されているが、何よりもこのクルマを表すのが4WDシステムであろう。ALL MODE 4×4-iはすでにガソリン車でも高い評価を得ているシステム。走行状態から常に適切に駆動力を分配することで、AUTOモードであれば前100-後0%から最大で前50-後50%まで駆動力を変化。さらに2WDモードを使えば前100-後0%に固定することでエコドライブにも適している。さらに前50-後50%に固定することでスタックからの脱出や悪路走行時にも適したLOCKモードも搭載する。

昨今の4WD機能の進化は各社とも目を見張るものがあるがALL MODE 4×4-iの場合、この他にも滑りやすい路面でも安定した走りを実現する「ヨーモーメントコントロール」機能や「ブレーキLSD」、また2WD/4WD共通の機能として細かな振動を低減する世界初の「アクティブライドコントロール」やフットブレーキの負荷を軽減する「アクティブエンジンブレーキ」そしてコーナリング時のスムーズな動きをサポートする「コーナリングスタビリティアシスト」などもガソリン車同様搭載している。

安全装備に関しては「20Xハイブリッド」には「エマージェンシーブレーキ」や「踏み間違い防止アシスト」、LDW(車線逸脱警報)や進入禁止検知機能などを標準装備。そして「BSW(側後方車両検知機能)」や「ふらつき警報」、さらに安全支援の立場から「アラウンドビューモニター」や「インテリジェントパーキングアシスト」などもメーカーオプションで設定する。

またSUVである以上、積載性も重要な要素となるが、エクストレイルハイブリッドの場合、高密度技術によりバッテリー自体もコンパクト化に成功、VDA測定値で400L以上と積載性を犠牲にしていない。それどころか、さらにフタ付きの約30リットルの容量を持つラゲージアンダーボックスも採用することでライバルと同等またはそれ以上の実用性を達成しているのだ。

さてこれだけ充実した内容をもつエクストレイルハイブリッドの価格は280万4760円からとかなりコストパフォーマンスが高い。想定されるライバルはマツダ『CX-5』あたりだが、最上位グレード同士で比較すると価格差は20万円以上とエクストレイルのコスパの高さが光る。一方でCX-5にはクリーンディーゼルという武器があるが、トータルのランニングコストを考えると現状では甲乙つけがたい。これらは今後試乗することで解明されていくことだろう。

高山正寛│ ITS Evangelist(カーナビ伝道師)/カーコメンテーター/AJAJ会員
1959年生まれ。自動車専門誌で20年以上にわたり新車記事&カーAVを担当しフリーランスへ。途中5年間エンターテインメント業界でゲーム関連のビジネスにも関わる。カーナビゲーションを含めたITSや先進技術のあらゆる事象を網羅。ITS EVANGELIST(カーナビ伝道師)として自ら年に数台の最新モデルを購入し布教(普及)活動を続ける。またカーナビのほか、カーオーディオから携帯電話/PC/家電まで“デジタルガジェット”に精通、そして自動車評論家としての顔も持つ。

《高山 正寛》

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