“究極のストリート仕様”サスペンション、開発のカギはラリードライバーの声…HKS

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“究極のストリート仕様”サスペンション、開発のカギはラリードライバーの声…HKS
“究極のストリート仕様”サスペンション、開発のカギはラリードライバーの声…HKS 全 24 枚 拡大写真

HKSが7月末に発売を予定する新製品『ハイパーマックス マックスIV GT スペックA(HIPERMAX MAXIV GT SPEC A)』。同社の自動車開発部長である坂詰達也氏は、「HKSとしては、かなり意欲的な製品です」と説明を始めた。

マフラーやサスペンションなどの社外パーツを開発・販売するHKS。その人気商品のひとつがストリート向けのサスペンションキット「ハイパーマックス マックスIV GT」シリーズだ。そのシリーズの中でスバルの『WRX』向けとして新しく開発されたのがハイパーマックス マックスIV GT スペックA。いわゆる全長調整式の車高調整サスペンションキットで、スプリングとアッパーマウントも含まれる。減衰力調整30段階、フロントのアッパーマウントにはキャンバー調整機構を備えた。予定価格は19万円(税別)だ。

◆この新製品のどこが意欲的なのか? 

ポイントはスプリングレートにあった。フロントが5kgf/mm、リアが4kgf/mm。この数字は、純正のスプリングとほぼ同等である。さらに、車高調の存在理由である車高調整幅も従来品より少なくなっているという。

つまり、車高もそれほど下がらないし、スプリングも硬くなっていない。それでは、わざわざお金を払ってまで、サスペンションを交換する理由がないのでは? と思うのが道理ではないだろうか。つまり、そのようなスペックのサスペンションをリリースしたという部分が、冒頭の「意欲的」なところだったのだ。

「アフターの流儀というか、これまではどこかカタログスペックをビジネスにしている部分があったのです。ノーマルよりも高いスプリングレートや、幅広い車高調整幅が優先されていました」と坂詰氏。確かに、スペックを高めれば、追い込んでいったときの走行性能は高まる。しかし、代わりに失うものもある。日常に使う低速域での乗り心地だ。つまり、尖った部分を求めるばかり、通常使用する9割方のシーンで我慢を強いられることになる。

「そこにひっかかっていて、やっぱりそれは違うよね…と。本当に良いものを作るべきでしょうと、我慢をなくす方向に進んでいたんです」と坂詰氏。

そんな折、HKSは2005年・2007年のPWRCチャンピオンであるラリードライバー、新井敏弘氏と出会う。ラリーの世界では、サスペンションのスプリングレートを低くして、しっかりと接地性を確保するのが主流だ。新井氏とHKSは意気投合。新井氏のアドバイスを受けてWRXのサスペンションを製作することになったのだ。

◆ラリードライバーの意見活かし、走行性能と快適性を両立

目指したものは「究極のストリート仕様」。街中から高速道路までの一般道を「乗り心地がよく」「疲れず」「心地よく」走れることを狙う。もちろん走行性能の向上は大前提だ。

高い走行性能と日常域で我慢しなくてよい快適さの両立。その実現のためにいくつかの工夫が採用された。ひとつがノーマル同様の低いスプリングレート。しかし、そのままではより高いGのかかるシーンでの踏ん張りがきかない。それをカバーするのが、従来品の約1.5倍の寸法を持つ大きなバンプラバーだ。大きくストロークすると、途中からバンプラバーがストロークを受け止める。それもドン! と急に硬くならないように、くびれを入れるなど形状に工夫した。スプリングレートで言えば2kgf/mm相当になる。つまり、ロールの初期はノーマル同様のレートのスプリング、ロールが深くなると、もう少し硬いバンプラバーにバトンタッチする。ロールの途中でスプリングレートがより高くなるのと同様の効果が得られるのだ。

また、シャフトは従来品よりも10mm長いものにした。これにより、伸び側のストロークが伸びる。つまり車体が浮き上がるようなときも路面への追従性が高まる。その代わり、車高調整幅は12~38mm減少した。しかし、それでもフロントはノーマル比マイナス34mm、リヤでマイナス35mmは確保されている。逆に言えば、それ以上下げると車検は、まず通らない。実際には、そこまでの車高調整幅は必要なかったのだ。

新井氏は、「ノーマルよりも乗り心地はいいんじゃないかな。コーナリング中も突っ張った感じがなくて、気持ちよくロールします。速度が上がってくるとバンプラバーに当たってロールが止まるから安心して曲がっていける」と語る。アンジュレーションが大きく、路面状況も悪いクローズドコースで、製品化に向けた最終仕様のサスペンションを試し、その仕上がりに満足そうな顔を見せた。

「ノーマルのWRXって、リアが押すような感じなんですね。なので、小さなコーナーではプッシュ・アンダーが出ることがあります。でも、この新製品の出荷時のセッティングだと、フロントが引っ張っていくようなフィールですね。これをリヤの減衰をいじればリア・ステアっぽくもできる。富士スピードウェイのようなサーキットを全開で走るには足りないかもしれませんが、ミニサーキットなら十分。安全に楽しく走るにはベストのサスペンションなのではないでしょうか」と新井氏。

坂詰氏は、「この製品の市場の反応がよければ、いろいろな車種に展開していくつもりです。HKSが新しい方向に歩み出す、第一弾という製品ですね」と、今後の幅広い展開を予告した。

《鈴木ケンイチ》

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