【未来対談 2】“持たざる国”ニッポン、技術が資源を生み出すとき…三浦和也

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レスポンス三浦和也とトヨタ自動車 製品企画本部の田中義和主査
レスポンス三浦和也とトヨタ自動車 製品企画本部の田中義和主査 全 8 枚 拡大写真

「未来の自動車」に対する一つの解として、トヨタが世に送り出した燃料電池車(FCV)『MIRAI』。その開発主査を囲み、「MIRAIのある生活」、「MIRAIに求めるもの」について本音をぶつけあう対談の第二弾。

トヨタ自動車から製品企画本部の田中義和主査、「これ一台で勝負できるクルマ」といち早くMIRAIを購入した自動車評論家の松下宏氏、そして行司役としてレスポンスの三浦和也が参加。今回は、水素を燃料として走るFCVを通して見えた、資源エネルギーのあり方、その可能性について語る。

◆技術が資源を生み出す

松下:地球温暖化という深刻な問題があり、CO2削減が国際社会の大きなテーマになっています。炭素社会から水素社会へという大きな流れに期待しています。

田中:日本にとっては水素というエネルギー・カードを持てることが、選択の自由というか、エネルギー・セキュリティ上もすごく有効だと考えています。

三浦:約50年前、1963年は、黒部ダムが完成して水力発電が始まり、東海村の動力試験炉が原子力発電をはじめて行った年です。第二次中東戦争と第三次中東戦争の間の時期と重なります。日本は足りないエネルギーを補う意味でも、エネルギー・セキュリティのためにも先人はエネルギー・カードを増やしてきました。それらの安定したエネルギーが日本の高度経済成長を支え、結果として今の繁栄があります。

2011年、震災があって、不幸な原子力の事故が起きたことがきっかけとなり、日本のエネルギー・セキュリティの要である原子力に疑問符がつきました。でも、それをきっかけとして日本にとって水素のエネルギー活用に目を向ける転機になりました。

水素というどこにでもある、奪い合いがおきない物質をエネルギーとして社会システムに組み込む水素社会へのチャレンジは、何十年後かに「やっててよかった」と思える日が来るのではないでしょうか。

田中:じつは、水素に関しては、我々トヨタも知らなかったことがいっぱいありまして。たとえば水素は、褐炭という売り物にならない若い石炭から水素を安く作る方法があるなど。今まで使っていないものから水素を作るアイデアや技術がいろいろあってびっくりしています。

松下:価値あるものとして水素を探せば埋蔵金がいっぱいあると。埋蔵水素が(笑)。水素元素は地球上でもっとも多く存在する元素ですから。売れるとなれば、いろいろ副生物として出た水素も集めようとなるでしょうしね。

三浦:技術が資源を生み出すわけです。

田中:“(天然資源を)持たざる国”のひとつである日本が、まさに技術力で水素を活用する。日本と組むと、今まで使っていなかった資源を活用してくれる。世界と対話するチャンスができると思います。

◆エネルギーの観点からダイナミックに捉えることが重要

三浦:世界の大多数の持たざる国が、中東やロシアなど産油国・天然ガス産出国へのエネルギー依存度を下げることで、エネルギー・セキュリティのアップに貢献する。それも日本の生きる道のひとつですよね。

松下:田中さんが、MIRAI発表のときにおっしゃっていましたが、カナダの水力発電で水素を作って、それを日本に持ってくるという話もあるようですね。

田中:カナダ領事館の方の話を新聞で読みました。「カナダは水資源が豊富で、電気を輸出したいけど、電気は運ぶことができない。もし水素を活用できるようになったらやってみたい」と。

三浦:不毛の砂漠で太陽光発電した電気を利用して水素を作り、電気の需要地に運ぶとうこともできるかもしれない。

田中:電気では、なかなか移動させにくいので、水素にして運ぶと。

松下:水素なら、貯蔵もできますし。

三浦:ダイナミックな話ですね。

田中:FCVの話は、クルマを飛び出してエネルギーの話にまで広げてダイナミックに考えないとだめだと思います。時間はかかりますが、その間に、我々はガソリンを大切に使いながら準備を進めていく必要があります。

確かにFCVの普及は壮大で、大きな夢です。けれど、これをやることによって、国に報える可能性がある。経済活動をしっかりやりながら、企業として大きな意義を感じて取り組みたい。

三浦:佐吉の時代じゃないので、「国」と言っていないで「地球」に報いて欲しい(笑)。エネルギー問題に貢献することは、世界平和に貢献することとイコールです。

松下:おっしゃる通り。エネルギーの奪い合いで、世界中で戦争をやっているわけですから。

田中:ありがとうございます。我々も自信を持って頑張れます。

《鈴木ケンイチ》

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