ランクル に待望のディーゼル復活「ようやく世界の規制が日本に追いついた」

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2.8リットルクリーンディーゼルエンジン「1GD-FTV」を搭載する ランドクルーザープラド
2.8リットルクリーンディーゼルエンジン「1GD-FTV」を搭載する ランドクルーザープラド 全 5 枚 拡大写真

トヨタ自動車は『ランドクルーザープラド』を一部改良し6月17日に販売を開始した。今回の改良では、新開発の2.8リットルクリーンディーゼルエンジン「1GD-FTV」を国内初搭載。日本でランドクルーザー・シリーズにディーゼルエンジンが復活するのはおよそ8年ぶりとなる。

国内の自動車マーケットでは、エコカーといえばハイブリッド車という見方が主流となっており、ディーゼルエンジンは、石原元東京都知事の会見に代表されるように、長らく「環境に悪い」というイメージが付きまとっていた。

しかし近年では、マツダが国内で数多くのディーゼルエンジン搭載モデルを投入、メルセデスベンツやBMWなどのドイツ勢も加わることで国内の市場が活性化してきている。23日には、スウェーデンの自動車メーカー・ボルボが、販売台数の9割を占める主力5モデルに自社設計のディーゼルエンジンを投入するなど、メーカー側の積極的な商品訴求によって、消費者のディーゼルに対するイメージは確実に変化してきている。

この状況下で、ハイブリッド普及の立役者であるトヨタがディーゼルを国内に投入する意義はどこにあるだろうか。ランドクルーザーのチーフエンジニアを務めるトヨタ自動車 製品企画本部の小鑓貞嘉氏によると、「ようやく世界の規制が国内の水準に追いついてきた」と話す。

もともと『ランドクルーザー』には8年ほど前までディーゼルエンジンがラインアップにあり、国内でも多くのディーゼルモデルが存在した。しかしながら、小鑓氏の言う「ズバ抜けて高い」規制が課せられた結果、国内のディーゼル市場は壊滅。ランドクルーザーにおいてもラインアップから姿を消してしまった。それがここに来て、欧州の規定であるEURO6が日本とほぼ同じ水準に達したことで、世界規模での展開が可能となり開発を進めることができるようになったという。

「やはりある大きな塊(台数)がないと作ることができない。例えば、日本の100台のために開発ができるかというと、技術的には可能でもお客さんはそのコストを支払えるかという問題になってしまう。エンジニアにとっても国内にディーゼルを出したいというのは念願で、ディーゼルをラインアップから落とすときとても悔しい思いをした。いつでも出せるという思いで彼らは開発してきたが、最後はお客様が買える価格になるかということがものすごい大事。日本でモノ作りをしていて、日本で出すというのは開発者の夢でもある」(小鑓貞嘉氏)

確かに当時、ディーゼルの国内市場は壊滅したが、それはつまり世界一厳しい環境規制を生み出し、マツダの快進撃から見て取れるように、日本の技術力を高めることに一役買ったと見ることもできる。

プラドに搭載される新開発の「1GD-FTV」エンジンは、『ハイラックス』や他の商用車でも展開する計画で、将来さらに厳しくなる規制にも対応できるほどのポテンシャルを秘めている。今回日本に導入されるのは、尿素SCRシステムやDPR(排気ガス浄化装置)など全てを搭載したフルスペック仕様。規制がゆるい地域では、DPRのみとし価格を抑えるなどして展開していくという。

この尿素による浄化システムは、欧州やトラックなどの大型車では一般的な技術だが、トラックよりも“小さな”車両ではトヨタとしては初のシステムとなる。マツダのディーゼルエンジン「SKYACTIV-D」は、圧縮比を低く設定することでNOxの発生を低減、尿素システムを使わずに価格を抑えたことが普及に一役買ったと言える。トヨタでは尿素は必須の技術だったのだろうか。小鑓氏は次のように説明する。

「プラドは世界的に見ると重いものを牽引したりするなど、使用環境としてはものすごく負荷をかけることを想定しなければならない。負荷をかけた時でも浄化性能は求められ、これを尿素以外のアイテムでクリアしようとすると、成り立たない訳ではないが、重いものを引っ張れなくなるなど様々なものを制限しなくてはいけない。NOxを低減するのに尿素を使うのは全世界的に見ると当たり前のこと」

尿素SCRシステムやDPRなどを装備した結果、国内におけるガソリンとディーゼルの価格差はおよそ60万円。補助金を含めても約40万円ほどの価格差があるが、どうやら国内のマーケットはこの差を安いと見たようだ。

プラドの発売からおよそ1か月での受注数はおよそ1万台。そのうちの約8割はディーゼルが占めるという。小鑓氏は「(8割という数字は)お客様が受け入れてくれたという証拠。60万円は、最後にはお客様が決める価値観の差なので、その価値観がある程度受け入れられたのかなと。開発者側としては非常に嬉しい」と述べた。

《橋本 隆志》

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