60~70年代のアメリカ西海岸で、若者を中心としたカウンターカルチャーから生まれたのが「チョッパー」というカスタム。映画『イージーライダー』の爆発的ヒットもあって世界中に浸透したが、そのカスタム・カルチャーはいまなお根強い人気がある。
その代表作がハーレーダビッドソンの『FXDWG ワイドグライド』。フロントフォークを寝かせて取り付け、ロー&ロングの車体を強調。足を置くステップを前方に取り付け、両足を投げ出すようにして乗る姿がまた個性的だ。
ハンドルは高く、上半身を起こしてバイクを操るのだが、視線が高く遠くまで見渡せるから市街地でも安全で、堂々とした気分になれる。
チョッパーの本場、アメリカで乗ったがその意味がよくわかった。真っ直ぐにどこまでも続くハイウェイを何時間もかけて走らなければならない広大な大陸の道。このライディングフォームが、じつによく板につくのだ。
決して快適なんかじゃない。風は容赦なく全身に当たるし、両足が疲れてくる。ただし、堂々としたこの姿勢で、アメリカのとてつもなく広く長い道を走ると、とにかく気持ちいい。
エンジンは1584ccもの大排気量を誇り、高回転まで引っ張り上げなくとも悠然と巡航できる力持ち。トップギヤ6速に入れたら、あとは忙しないシフトチェンジは不要となり、長いトレーラーを追い越すときもアクセルをワイドオープンすればしっかり加速してくれる。
この頼もしさと不良的なダークさを合わせ持った匂いは、ストリートで若い人たちが乗ってもよく似合うだろう。こだわりを持つ新しい世代にこそ、ぜひ乗ってもらいたい。
■5つ星評価
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★
コンフォート:★★★
足着き:★★★★★
オススメ度:★★★★★
青木タカオ|モーターサイクルジャーナリスト
バイク専門誌編集部員を経て、二輪ジャーナリストに転身。国内外のモーターサイクルカルチャーに精通しており、取材経験はアメリカやヨーロッパはもちろん、アフリカや東南アジアにまで及ぶ。自らのMXレース活動や豊富な海外ツーリングで得たノウハウをもとに、独自の視点でオートバイを解説している。現在多くのバイク専門誌、一般誌、WEB媒体で活動中。