【ホンダ N-ONE モデューロX 試乗】ドライブフィールの雑味を排除…井元康一郎

試乗記 国産車
ホンダ N-ONE MODULO X
ホンダ N-ONE MODULO X 全 20 枚 拡大写真

ホンダのアフターパーツ部門、ホンダアクセスが軽自動車『N ONE』に手を入れたモデル、『N-ONE MODULO X』をテストドライブする機会を得たのでリポートする。

◆価格は抑えめ、乗り心地も良好

もともとモデューロはアクセサリー、走行部品とも後付け扱いなのだが、『N BOX』で初めて登場したモデューロXは他の量産モデルと混流生産されるという点が通常のモデューロと異なる。純正部品が無駄にならないぶん、すべてを後付けする場合に比べて大幅に価格が抑えられているのが特徴だ。また、N BOXモデューロXは改造車扱い、持ち込み車検であったのに対し、N-ONEモデューロXは量産車と同じ扱いで、JC08モード燃費も記載されている。

さて、そのN-ONEモデューロXを、ホンダアクセスがセッティングを行う際に最もよく利用しているという、群馬サイクルスポーツセンターのロードコースで走らせてみて、まず最初に印象的だったのは乗り心地の良さだった。

モデューロの思想は、しなやかにストロークするサスペンションがストリートにおいて最も良いサスペンションであるということ。筆者は以前、N-ONEターボで東京~鹿児島を往復してみたことがある。シートの出来や直進性のよさ、小洒落ていながらとても使いやすいインテリアなど、軽自動車なのにロングツアラーとして数々の高い資質を持ち合わせている中で、明確な不満点であったのが乗り心地の悪さだった。道路の段差を踏んだときの突き上げは大きめで、また路面のうねったところではサスペンションが伸びた後の受け止めかたが固く、強いピッチングや揺すられ感が出てしまう。その悪い動きを秀逸なシートがフォローし、結果として動きが悪いわりにロングドライブ耐性は軽自動車の中では特筆すべき高さになっていた。

N-ONEモデューロXは、そのノーマルN-ONEの脚の悪い部分に徹底的に手が入れられ、一転して素晴らしくしなやかな乗り味になっていた。路面のかなり悪いところでも跳ねてグリップが抜けるような動きがなくなり、乗り心地も大幅に向上した。またノーマルの場合、フロントサスペンションが突っ張りすぎであるため、コーナリング手前でブレーキをかけて前輪に重さをかけないとダダダッと外に膨らむような動きになりがちだったのに対し、こちらはフロントが素直に沈み込むため、ちょっとハンドルを切っただけでクルマが曲がる姿勢になる。これはクルマの動きとしては得点が高い。バンパーをはじめとする空力パーツもスタビリティや曲がりのフィーリング向上に役立っているのだという。

◆走りもデザインもスポーティに

7速マニュアルモード付きCVTは、Sレンジのシフトプログラムを『S660』ベースに変更し、よりクイックなシフト操作が可能になっている。が、有段変速のようなかっちりとしたステップ感ではなく、あくまで角のはっきりしないCVTのMTモードの域を出ない。ベースモデルにMTがあればと思われたが、これはないものねだりだ。

インテリアはブラックで統一。天井トリムまで黒に変えるほどに力を入れてカラーコーディネートされており、なかなか精悍でスポーティな印象となった。モデューロ以外のほんわかした雰囲気もちょっと日本車離れしていて良いものに思われたが、シャープさなら断然モデューロXだろう。ただ、シート素材はやや滑りやすく、標準型のほうがもっちりしていてホールディングが良かったようにも感じられた。

今回は試乗時間、コースとも限られていたが、N-ONEの欠点であるドライブフィールの雑味が相当取り除かれたという点では、モデューロXはとても良いクルマであることは間違いない。問題は通常のターボモデルであるプレミアムツアラー・ローダウンに比べて20万円高い189万8000円という価格だ。空力デバイス、足回り、インテリア、ホイールなどをアフターパーツで固めればこんな価格ではすまないことは十分に理解できるのだが、軽自動車というカテゴリーにおいては絶対的に高価であることは否めない。先に述べたようにMTがあれば、軽プレミアムスポーツという価値付けをより明確に打ち出すことができるのだろうが、残念ながらベースはCVTのみ。

もっとも、レースやラリーに出走できていることからもわかるように、絶対的な速さはCVTにもあるし、Sレンジならブースト圧を維持できる回転域に滞在させることも可能。要は、ベース車両の制約もあって、軽云々は関係なくこれ以外には選択肢がない! と言えるほどのアイデンティティが確立されていないことが問題なのだ。可愛らしい形と上質な乗り心地、そして自在に振り回せる運動能力を持つ軽ロングツアラーがほしいというカスタマーには大いに価値のあるモデルではある。

■5つ星評価
パッケージング:★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★
フットワーク:★★★★★
オススメ度:★★★

《井元康一郎》

井元康一郎

井元康一郎 鹿児島出身。大学卒業後、パイプオルガン奏者、高校教員、娯楽誌記者、経済誌記者などを経て独立。自動車、宇宙航空、電機、化学、映画、音楽、楽器などをフィールドに、取材・執筆活動を行っている。 著書に『プリウスvsインサイト』(小学館)、『レクサス─トヨタは世界的ブランドを打ち出せるのか』(プレジデント社)がある。

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