『MT-25』のコンセプトは「大都会のチーター」。豊かなトルクと軽快なハンドリングを生かしたキレのいい走りが魅力のスポーツネイキッドモデルだ。
先に発売された250ccフルカウルスポーツ、『YZF-R25』とプラットフォームを共有化しつつ、MTシリーズらしい躍動感のあるフォルムと快適なライポジが与えられている。
見た目は存在感があり大柄に見えるが、実際に跨ってみるとスリムで足着きは良い。上体が起きすぎない絶妙なハンドル位置で、自然にリラックスできるポジションだ。
R25と共通の水冷並列2気筒エンジンは低中速トルクに厚く扱いやすい特性。回転数を上げなくてもストレスなく流せるし、シフトチェンジも滑らかだ。特に気に入ったのはエンジンのドライバビリティ。スロットルオフからオンに切り替えていくときの過渡特性がとてもスムーズなので、コーナーでも安心してスロットルを開けていける。その気になれば、1万4000rpm過ぎまで吹け上がる高回転での伸びやかなパワーはまさにR25譲りだ。
ハンドリングは軽快かつ安定感があり、何も考えなくても目線を向けたほうに曲がってくれる素直な特性。前後サスペンションもストローク感が豊富で、ヤマハらしいしなやかな乗り味が印象域だ。
ブレーキタッチも穏やかで入力をコントロールしやすい。とにかく乗りやすく、それでいて速い。否、乗りやすいからこそ速くも走れるのだと思う。無理せず誰でも気軽にスポーツマインドを楽しめるモデルである。
軽量コンパクトな車体に扱いやすくパワフルなエンジンということで、街乗りなどの普段使いからツーリングまで幅広くこなせるし、一方でサーキット走行もこなせる運動性能も兼ね備えている。洗練されたデザインと上質感のある作り込みも魅力だ。ビギナーはもちろん、ベテラン向けのセカンドバイクとしてもおすすめしたい。
■5つ星評価
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
快適度:★★★★
タンデム:★★★
オススメ度:★★★★★
佐川健太郎|モーターサイクルジャーナリスト
早稲田大学教育学部卒業後、出版・販促コンサルタント会社を経て独立。編集者を経て現在はジャーナリストとして2輪専門誌やWEBメディアで活躍する傍ら、「ライディングアカデミー東京」校長を務めるなど、セーフティライディングの普及にも注力。(株)モト・マニアックス代表。バイク動画ジャーナル『MOTOCOM』編集長。日本交通心理学会員。MFJ公認インストラクター。《佐川健太郎》