【池原照雄の単眼複眼】2020年へ横一線の開発レース…日本3社の自動運転車

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自動運転実験車「Highway Teammate」によるデモ走行
自動運転実験車「Highway Teammate」によるデモ走行 全 6 枚 拡大写真

自工会は「自動運転ビジョン」を公表

11月8日まで開催された東京モーターショー2015に合わせ、日本の自動車メーカー3社が自動運転実験車の公道走行実験を報道関係者に公開した。いずれも2020年までの高速道路内での実用化を目指している。

モーターショー関連イベントとして開催したシンポジウムでは日本自動車工業会の池史彦会長が「世界で最も安全、効率的で、自由なモビリティー社会の実現を目指す」という「自動運転ビジョン」を公表、自動車各社は、時に協調も図りながら開発を競い、この分野でも世界をリードする構えだ。

今回、実験を公開したのはトヨタ自動車、日産自動車、ホンダの3社で、筆者はいずれも同乗試乗する機会を得た。この3社のほか、自動ブレーキシステムなどで先行してきた富士重工業(スバル)も、吉永泰之社長がモーターショー会場で20年の高速道路内での自動運転実用化を表明した。

3社による公開実験はいずれも東京都江東区を起点にトヨタとホンダは首都高速道路内、日産は一般道での走行を披露した。トヨタの実験車はレクサス『GS』のハイブリッド車、ホンダは『レジェンド』のハイブリッド車を改造している。ルートは異なるがいずれも首都高で片道8kmの往復コースを走り、本線への合流やレーンチェンジ、分流などを制限速度に沿った加減速を交えてこなした。

◆この2年で大きく成長した3社の実験車

一方、日産の実験車両は量販電気自動車(EV)『リーフ』の改造車。東京ビッグサイト周辺で全長約17kmの左回り周回コースを設定した。左回りとしたのは、人も難儀する交差点での右折は現状では「クルマだけのセンサーだと対向車が見えないケースが生じる。“路車間通信”の手助けがないと難しい」(同社ADAS&AD開発部の飯島徹也部長)状況にあるからだ。

それでも、クルマとバイクのほかに自転車も走り、横断歩道などには歩行者も登場するという、高速道路よりはるかに厳しい混合交通環境をまずは無難に走った。コースの制限速度は50km/hと60km/hの2種類で、交差点、三差路などの信号は約15か所あった。

この3社の自動運転実験車には、2年前の東京モーターショーのころにも試乗したが、いずれも2年間で大きく成長したという実感だ。同時に3台の車両からは際立った優劣の差異は感じられず、技術開発競争は横一線という印象を受ける。3社の開発担当者も異口同音に「ヨソさんの動向はよく分からないし、自分たちが特段進んでいるとは思えない」と話す。

◆「合流能力」が技術進化のバロメータに

実際、「認知」「判断」「操作」という運転要素のなかで、入り口となる「認知」のデバイスは2年前には3社間でばらつきがあったが、最新実験車では同一構成になった。つまり使い方に濃淡はあるが、3社の実験車はいずれもカメラ、ミリ波レーダー、レーザースキャナー(レーザーレンジファインダーなどとも呼ばれる)という3種のセンサーで構成した。

いずれのセンサーも日々、性能及びコスト面での進化が進んでいる。とりわけ、周囲の物体や交通状況を3次元で認識するレーザースキャナーの小型化と性能向上が著しい。トヨタとホンダは6個、日産は4個を前後バンパーなどに搭載し、認知能力を飛躍的に向上させたという。センサー類は「2020年に向けて、より現実的な構成ができるようになった」(トヨタBR高度知能化運転支援開発室の鯉渕健室長)のだ。

もっとも、実用化に向けた課題は山積というのも各社の共通認識だ。今回の3台の試乗で自動運転走行中に、ドライバーが介入したのは2度あった。いずれも渋滞している右車線へ合流するケースだった。合流はいわば、人と人が無言のコミュニケーションで成立させており、自動運転が苦手とする代表的なものだ。

ホンダの横山利夫・本田技術研究所上席研究員は「最も渋滞が厳しい首都高と阪神高速での渋滞時の合流という難関をどれだけ克服できるか」が、実用化のカギとも指摘している。これからは「合流能力」も技術進化のひとつのバロメータとして注目していきたい。

《池原照雄》

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