【VW シャラン 試乗】プラットフォームに古さを感じるがパッケージングはさすが…青山尚暉

試乗記 輸入車
VW シャラン ハイライン
VW シャラン ハイライン 全 8 枚 拡大写真

2011年の日本導入から4年、VWの7人乗り大型ミニバンの『シャラン』が新しくなった。

マイナーチェンジの主な内容はまず、自動ブレーキを含む先進安全装備を全グレードに装備したこと。そしてこれまでの「コンフォートライン」、「ハイライン」に加え、エントリーグレードとして360万円の「トレンドライン」を新設定。これで『オデッセイ・アブソルートEX』並みのスタートプライスになった。

パワーパッケージは新開発の1.4リットルターボ、150ps、25.5kgmユニットを新搭載。6速DSGとの組み合わせで前モデルより11%向上した15.0km/リットルの燃費性能を実現している。スマホとインフォテイメントシステム(ナビ含む)が連携可能なApp-Connecttが全グレードに標準装備されるのも、この時代にうれしいニュース。また、後席一体型のチャイルドシートが選択できるようになり、ファミリー層、子育て世代へのアピール度を増したと言える。

試乗車は463万円のハイライン。車重1820kgに対して150ps、25.5kgmのパワー、トルクは必要十分。出足の一瞬を除けば、VWターボユニットならではのトルクの厚みで気持ち良く加速する。

ただし、『ゴルフ』や新型『トゥーラン』とは違い、VW最新のMQBプラットフォーム以前のモデルであり、225/50R17サイズのタイヤを履く足回りは路面によってややバタつくことがあり、ステアリングはセンター付近の不感帯が気になるシーンがあったのも事実。

とはいえ、乗り心地は基本的に足がよく動き、VWとしては比較的ソフトなタッチが好ましく、速度が高まるほどフラットになる設定。ロードノイズを含めた静粛性の高さもさすが上級ミニバンらしく、ロングドライブでの快適感は文句なしと言えそうだ(エンジンを回すと途端にノイジーになるが)。

居住性は大型ミニバンらしく、例えばトゥーランには勝って当然。特に2-3列目席のシアター度、つまり、2列目席に対して3列目席の着座位置が高く、全席見晴らし感覚。ちなみに身長172cmのドライバー基準で、2列目席のひざ回りスペースは24cm。3列目席でも最小3cm、2列目席ひざ回りスペース16cmで5.5cmあり、3列目席の実用性は文句なしと言える。

ラゲッジは開口部フロア地上高こそ66cmと高めだが(トゥーランは61cm)、奥行きは46cm(トゥーラン34cm)もあり、2/3列目席を格納したときの完全フラットなフロア奥行きも最大2mに達し、車中泊も容易である。

新設定のトレンドラインの価格はたしかに魅力的だが、装備的にはレーンキープアシスト、後方死角検知機能、後退時衝突軽減ブレーキ、そして純正ナビゲーション“714DCW”、ETC2車載器、メイクアップミラー、前席パワーシートなどの設定がなく、おすすめはやはりコンフォートライン以上となりそうだ。

というより、エントリーグレードとはいえ、純正ナビゲーションが装着できないのは、いかがなものか。『ポロ』のベースグレードだって設定があるんですから…。

■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★
フットワーク:★★★
オススメ度:★★
ペットフレンドリー度:★★

青山尚暉|モータージャーナリスト/ドックライフプロデューサー
自動車専門誌の編集者を経て、フリーのモータージャーナリストに。自動車専門誌をはじめ、一般誌、ウェブサイト等に寄稿。自作測定器による1車30項目以上におよぶパッケージデータは膨大。ペット(犬)、海外旅行関連の書籍、ウェブサイト、ペットとドライブ関連のテレビ番組、イベントも手がけ、犬との自動車生活を提案するドッグライフプロデューサーの活動も行っている。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

《青山尚暉》

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