ファミリー派も納得、ミニバンの走りに安定感を…HKSのアル/ヴェル用新サスペンション「ハイパーマックス G」

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トヨタ アルファードにHKSの新サスペンションキット「ハイパーマックス G」を装着して試乗した
トヨタ アルファードにHKSの新サスペンションキット「ハイパーマックス G」を装着して試乗した 全 28 枚 拡大写真

ミニバンであっても、もう少し運転を楽しみたい、気持ちよく操ってみたい、と思っている人は多いはずだ。タイヤをインチアップしたときに純正のサスペンションでは物足りないと考えるユーザー、走りの楽しさや操舵の正確さにこだわる人に最適なサスペンションキットが、チューニング界の老舗、HKSから登場した。

それがHKSのノウハウを結集して開発された、純正同形状の「HIPERMAX G(ハイパーマックス G)」である。その第一弾となったのが、トヨタの『アルファード』『ヴェルファイア』用キットだ。

◆需要高いミニバン、走りの課題と物足りなさも…

20世紀の終盤まで、ファミリーカーの代表はセダンだった。が、今は違う。多人数乗車のミニバンが、ファミリーカーの主役の座に就いている。家族や友だちと広くて快適なキャビンを共有でき、ロングドライブでも快適だ。その頂点に位置するのが、プレミアム性の高さを売り物にするアルファード/ヴェルファイアである。ステータス性が高く、フロントマスクも押しの強いデザインだから、プレミアムセダンや上級スポーツカーから乗り換える人も少なくない。

2015年1月に登場した30系のアルファード/ヴェルファイアは、リアにダブルウィッシュボーン式サスペンションを採用し、走りのポテンシャルを大きく高めた。トレッドが広いこともあり、コーナリングしても安定感がある。高速道路ではどっしりとした落ち着きがあり、乗り心地も向上した。だが、背の低いクルマから乗り換えたオーナーのなかには、ハンドリングや接地フィールに物足りなさを感じる人もいるだろう。

ミニバンは1人で乗っているだけでなく、多人数乗車や荷物を満載してのドライブシーンも多い。しかも車高があるため重心も高めだ。着座位置とアイポイントが高いから視界がよく、まわりを見渡せる。が、サスペンション形式を一新したアルファード/ヴェルファイアであっても、ワインディングロードではロールを意識させられる。クルマが重いからコーナリング時やブレーキング時の挙動変化は大きい。当然、サスペンションだけでなく、ブレーキにかかる負担も小さくないのだ。

◆新コンセプトで作られた、ハイパーマックス G

ハイパーマックス G のプロフィールを簡単に紹介すると、このキットはショックアブソーバーとスプリングがセットになっており、バランス感覚を重視している。油圧式のショックアブソーバーは、HKSが長い経験と高い実績を持つ単筒式を採用した。形状は純正品と同じで、取り付けブラケットは純正とトレードインで装着する。また、ブラケット自体に強度を持たせるために、当て板を追加した。高い加工精度が要求されるロッドも国内の自社工場で生産を行っている。フロントのストラット式サスペンションに採用するのは、剛性の高い倒立式だ。スプリングも高品質を目指すため専用設計とした。ちなみに30mm程度のローダウンとなっている。

新シリーズとして送り出したハイパーマックス G の開発を担当した自動車開発部6課の今井達也課長は、「30系アルファード/ヴェルファイアのサスペンションキットは、今までと異なるユーザー層をターゲットにしたこともあり、開発は苦労の連続でした。ミニバンは、チューニングカーのよさや味を知っている人だけでなく、ビギナーや女性も運転します。だからスイートスポットをどこに置くか迷いました。初めてサスペンションを組み替えるエントリーユーザーには車高調整式のサスペンションはハードルが高いので純正品と同じタイプを選んでいます。純正サスペンションのよさを損なうことなく、トータルで走りのポテンシャルを引き上げることに力を注ぎました。最上級ミニバンですから、日常の走行シーンで気持ちよく、快適な走りを実現することはいうまでもありません。この課題をクリアしたうえで、ワインディングロードでは意のままに操れるようにしました」と、開発の狙いを述べる。

が、これまでのサスペンションキットとはコンセプトが違うから、戸惑うことも多かった。セッティングを担当した矢部健司主任は、「スポーツモデルなら方向が決まっているのでセッティングしやすいのです。が、ミニバンはユーザー層が広いので、落としどころが難しかった。しかもクルマ自体のポテンシャルが大きくアップしていたので、純正サスペンションと差をつけるのが大変でした。アウターならではの高品質、高性能にこだわりましたが、最上級ミニバンですから乗り心地が悪くては受け入れてくれません。インチアップしても、車高調整式より上質な乗り心地を目指しました。また、HKSの走りの味わいを出すこと、これも苦労したことのひとつですね」と、開発時の苦労を語った。

◆振動や無駄な動きを抑えた走り

30系アルファードとヴェルファイアは、ノーマルでもかなりの実力派だ。だから試乗する前は「サスペンションを引き締めて走りの違いを出したのだろう」と思っていた。試乗車が履いていたのは、ファットな245/40ZR20サイズのヨコハマ「ADVAN Sport」だ。しかし、撮影で移動したとき、早くも予想は覆された。2列目に座ったのだが、驚くほど乗り心地がよかったのだ。ノーマルのアルファード/ヴェルファイアは、低速ではサスペンションの動きが渋く、突起や段差の乗り越えでは大きめのショックを感じたものである。が、ハイパーマックス G を装着したアルファードは、微低速域の減衰が滑らかに立ち上がり、フリクションを感じさせない上質な乗り心地だった。

その後、ステアリングを握ってみたが、ワインディングロードでも気持ちいい走りを存分に楽しむことができる。速いスピードでコーナリングしても絶大な安心感があり、コントロールできる領域も広かった。背が高いから速い速度でコーナーに入るとロールを許す。が、ノーマルのようにグラッとくる感覚ではない。4輪のスタビリティ能力は高く、接地フィールもいいから安心感がある。上屋と下半身のバランス感覚は絶妙だ。足がスムースに動き、舵の利きもよくなったように感じる。だから狙ったラインに無理なく乗せることができるのだ。ブレーキング時の挙動の乱れやノーズダイブもうまく抑えられている。ブレーキ性能が上がったように感じられるのも魅力のひとつだろう。

高速道路では優れた直進安定性と上質な乗り心地を披露した。うねりのある路面を駆け抜けても、ノーマル車以上の落ち着きが感じられ、神経質なところがない。サスペンションが軽やかに動き、路面からのショックを上手に受け流す。風が強く吹いて流されても修正はラクだった。乗り心地がいいし、安定しているからロングドライブも苦にならないはずだ。

無駄な動きが巧みに抑え込まれているから身体や頭を揺すられる回数は大幅に減っている。ドライバーだけでなく、パッセンジャーも快適にロングドライブを楽しめるだろう。クルマ酔いする人も減るはずだ。ハイパーマックス G はアスリート派だけでなく、ファミリー派にも満足度の高いサスペンションキットである。

《片岡英明》

片岡英明

片岡英明│モータージャーナリスト 自動車専門誌の編集者を経てフリーのモータージャーナリストに。新車からクラシックカーまで、年代、ジャンルを問わず幅広く執筆を手掛け、EVや燃料電池自動車など、次世代の乗り物に関する造詣も深い。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。

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