ホンダのスーパースポーツカー『NSX』は5月から米国オハイオ州の専用工場で生産が始まり、現在月に5台のペースで生産されている。その生産を担当しているのは110人の熟練工だが、その人選に相当苦労したそうだ。
「オハイオ工場は生産開始から32年の歴史があり、約1万人が働いている。そのみんながNSXをつくりたいということだったので、どうやって絞っていくのが大変な作業だった」と生産責任者のクレメント・ズソーザ氏は振り返る。
その選考では、まず生産希望者の従業員にそれぞれ自分が過去にどういうことをやり、どういう能力を持っているか申請書に書いてもらい、それを審査。その後、ペーパーテストと実地テストを行い、最後に面接をして110人を選んだ。
その110人は平均勤続年数22年のベテランばかりで、最高齢は59歳、勤続年数32年だ。「すべてホンダからNSXを製造を認定されている人たちで、日々持続的な教育を受けている。その110人は小さな家族みたいなもので、みんな非常に親しく、同じ情熱を持ってNSXをつくっている」とズソーザ氏は説明する。
そのズソーザ氏はインド生まれで、航空機のエンジニアになりたくて米国に渡った。しかし、移民はその仕事に就くことは難しいと知り、1989年に米国ホンダに入社。ホンダのバイクが好きで、それを修理しながら乗り回していたのが入社動機だという。入社後は溶接を担当し、98年からは2年間栃木のR&Dセンターに籍を置いた。
「NSXの生産を担当するようになったのは神様の恵み」と話し、NSXの生産では1台1台一切妥協せずにつくっていく方針だ。