【インタビュー】ロールス・ロイスTopに聞く…日本市場、そしてカリナンについて

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ロールス・ロイス・モーター・カーズのトルステン・ミュラー・エトベシュCEO
ロールス・ロイス・モーター・カーズのトルステン・ミュラー・エトベシュCEO 全 8 枚 拡大写真

日本はロールス・ロイス・モーター・カーズにとって4番目に大きな市場だ。このたび日本の現状を把握するとともに、2017年広島に日本で6番目となるショールームをオープンするのを機にトルステン・ミュラー・エトベシュCEOが来日。氏の目から見た日本市場の特徴、そして、近々デビューするSUVなどについて話を聞いた。

■日本市場は2つの特性がある

--- 日本市場は、アメリカ、中国、イギリスに次いで4番目に大きく、また重要な市場だとのことですが、それでは、トップ3と比較した日本市場の特徴はどのようなものでしょうか。

エトベシュCEO(以下敬称略):もしかしたら意外と思うかもしれませんが、日本独特の特徴はあまりありません。国に関わらず、お客さま全員に共通するのは、まず何においても要求度が高いということ。皆様裕福なのでベストなものを要求します。もちろんクルマもそうですが、カスタマーサービスについてもかなり厳しい目を持っています。つまり、最高級のものを要求するお客さまに共通している点が多くあるということで、これはどの国でも共通なのです。

--- では、中国との比較ではどうでしょうか。日本では1960年代からロールスロイスを輸入していますが、一方で中国は近年輸入が開始されています。この点では大きく市場の差に特徴があると思うのですが。

エトベシュ:その通りです。長い間お付き合いのある日本と、新しい中国とではブランド戦略と、その傾向にも非常に大きな差があります。1960年代から輸入している日本の場合には、1000台以上のロールスロイスが走っています。その80%がショーファードリブン(運転手付き)で、後席にゆったりと乗っているユーザーが多いです。その一方で中国は、比較的若い方が自分で運転をするために購入されています。このように、日本と中国のユーザー層そのものが違います。

ただし、日本もここ2~3年変化が出てきて、自分で運転する方が増えています。これは『ドーン』や『レイス』などの導入によると思われますが、フェラーリなどがガレージにある方が、その次のクルマとして購入しているようです。高性能のブラックバッチも含めて、自分で運転をするというトレンドが日本でも増えつつあります。つまり、日本市場は、古くからールスロイスに長く乗っているユーザーと、新しく若い年齢層向けの2つの戦略で販売を進めていくことになります。

■BMWの血が混ざるのは悪夢!?

--- 若いユーザーがドライバーズカーとして購入し始めたというのは、BMW傘下になったことで、クルマづくりやデザインが大幅に変わったからということはありますか。

エトベシュ:そんなことは全くありません!! BMWは我々のオーナーではありますが、開発やデザイン、生産もすべてイギリスで行っています。我々はロールス・ロイス・モーター・カーズ・リミテッドという会社で、BMWの影響は全く受けていません。もし少しでも BMWの血が混ざったとすれば、これはナイトメア、悪夢でしかないのです。

もちろん、BMWにも優秀な人はたくさんいますが、その人たちが片手間にロールスロイスを開発するというのは全く不可能です。自分の脳も含め体全体、100%“ロールスロイス漬け”にしないとこのブランドは成り立たないのです。役員も含め 24時間365日ロールスロイスのことしか考えていない人たちがこのブランドをつくりあげており、だからこそ、我々は140年の歴史を刻んできているのです。

■いよいよSUV市場に参入

--- 現在高級SUV市場は非常に活発に成長しており、多くの高級ブランドが参入しています。そこに、近い将来ロールスロイスも『カリナン』を投入しようとしていますが、その理由を教えてください。

エトベシュ: SUV市場は、過去10年から20年で右肩上がりどころか、“上がって、上がって、上がって”という感じです(笑)。現在では全世界のクルマのマーケットの50%をSUVが占めており、売り上げも劇的に上がっています。その一方で所謂リムジン系の大きなクルマは需要が下がってきており、それに伴い売り上げも下がってきています。

また、ユーザーからも、もう少し使い勝手の良いクルマも欲しい。ただしロールスロイスのようなブランドで、という声が上がっているのです。つまり、家族全員が気軽に乗れて、犬も一緒に乗せられるクルマを探していたのです。そういったクルマの場合、これまでとはライフスタイルも変わって来ますので、その点を踏まえながら高級志向も追求しようと、デザイナーたちと検討して来ました。

デザインをどうするかという問題や、お客さまからもなぜこんなことをするんだという声もまだまだ上がっています。ただその中で、ロールスロイスのSUVとしての相応しいデザインが完成しましたので、我々は(近い将来の発表に)踏み切ったのです。我々は、カリナンが成功を収めると確信しています。

ところでカリナンとはどういう意味かご存知ですか? これは世界最大のダイヤモンド原石の名前で、その所有は英国王室です。そこからカットした世界最大級の「カリナン1」はロンドン塔に保管されています。つまり、ダイヤモンドの頂点の名称を名付けたのです。ロールスロイスのSUVに相応しい名前でしょう。

《内田俊一》

内田俊一

内田俊一(うちだしゅんいち) 日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員 1966年生まれ。自動車関連のマーケティングリサーチ会社に18年間在籍し、先行開発、ユーザー調査に携わる。その後独立し、これまでの経験を活かしデザイン、マーケティング等の視点を中心に執筆。また、クラシックカーの分野も得意としている。保有車は車検切れのルノー25バカラとルノー10。

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