製造業からの脱却なのか?...トヨタがプラットフォーマ―になるという意味

自動車 ビジネス 企業動向
車はサービスになってしまうのか
車はサービスになってしまうのか 全 4 枚 拡大写真

トヨタ自動車のコネクティッドカンパニー プレジデント 友山茂樹氏が、1日、MEGAWEBにて同社が進める「Connected戦略」のプレゼンテーションを行った。

同社のコネクテッドカーや自動運転に関する戦略は、コネクティッドカンパニー設立、人工知能研究のTRI設立、マイクロソフトとのアライアンスの発表などで語られてきている。今回の発表でもそうだが、そこで共通して語られるのは「プラットフォーマ―」という言葉だ。

この言葉を改めて考えてみたい。プラットフォームというと、自動車用語では共通化されたシャシーを指すことが多い。コネクテッドカーやITの文脈で語られるプラットフォームは、サービスを提供するための土台である。具体的にはインターネットやモバイル通信を含むネットワーク、ネット上でサービスを提供するソフトウェア、サービスに必要なデータだ。

どちらも「土台」という意味で共通するため、プラットフォームという同じ用語になるが、車の場合は、自動車という製品の物理的な土台であり、コネクテッドカーの場合は、サービス提供のための論理的な土台である。つまり、コネクティッドカンパニーのプレジデントである友山氏がいう「プラットフォーマ―になる」というのは、ネットワーク、サーバー、データベースのインフラを持ち、サービスプロバイダーに提供するビジネス(あるいは自社で開発したサービスによるビジネス)を展開するということになる。

ここで、ただネットワークやデータベースの器だけ提供してもビジネスにはらない。プラットフォームに載せる「コンテンツ」が必要である。車ならエンジンやタイヤ、トランスミッションとなり、グーグルならネット上のあらゆるコンテンツ(情報)である。コネクテッドカーの場合は、自動車が生み出すさまざまなデータとモビリティ(移動)が生み出す付加価値ということになる。

このような話になると「では、トヨタは車の製造・販売からグーグルのようなコンテンツやサービスのビジネスにシフトするのか?」という議論が出てくる。これからは「モノ」ではなく「コト」の時代などともいわれている。

しかし、この考え方はおそらく正しくない。コネクテッドカーの一次的なコンテンツは、プローブカーのビッグデータであったり、車に関連するサービスのためのAPI(アプリとプラットフォームの接続口)だが、プラットフォームの背後につながった車が存在する。そして、それを所有したり利用したりする人間がいなければ、価値のあるコンテンツにはならない。

トヨタにしろBMWにしろ、コネクテッドカーやプラットフォームビジネスへの注力を表明しているメーカーはいくつかあるが、その戦略の意図は、事業コアのシフトではなくコア事業を持続・拡大させていく戦略なのだ。グーグルがYouTubeを買収したのは、動画コンテンツの可能性を認識したからであり、マネタイズのしくみを導入しYouTuberを育てているのも動画コンテンツを継続的に生み出させるためである。

したがって、友山氏のいう「(モビリティサービスの)プラットフォーマ―になる」というのは、製造業がダメだからサービスにシフトしていくといった単純な話ではなく、車の価値を「モノ」という物理的な尺度だけでなく、「コト」という尺度で可視化するための土台を作るということに他ならない。

《中尾真二》

【注目の記事】[PR]

ピックアップ

アクセスランキング

  1. なぜ? アルファロメオ『ミラノ』の車名を禁じられる…なら『ジュニア』だ!
  2. レクサス最小の『LBX』は、「サイズ的ヒエラルキー」から脱却できたのか?
  3. 女性向けキャンピングカー「Nomad Lux」デビュー 5月3日初公開
  4. サスペンションの新常識! 1G締めがもたらす驚きの効果とは?~カスタムHOW TO~
  5. 三菱ふそうが苦肉の策、工場の従業員を“出稼ぎ”でバスの運転手に[新聞ウォッチ]
  6. マツダの新型セダン、ティザー…間もなく中国で実車発表へ
  7. トヨタ『4ランナー』新型にオフロード向け「TRDプロ」仕様を設定…ハイブリッド i-FORCE MAX 搭載
  8. VW ゴルフ が表情チェンジ…改良新型の生産開始
  9. トヨタ、堤工場の停止期間を再び延長、ダイハツは5月から全工場で生産再開[新聞ウォッチ]
  10. ホンダが新型EV「イエ・シリーズ」を中国で発表…2027年までに6車種を投入へ
ランキングをもっと見る