懇切丁寧、入門にも再確認にも---『自動車とプロダクトデザインの基本と応用』

モータースポーツ/エンタメ 出版物
「自動車とプロダクトデザインの基本と応用」表紙
「自動車とプロダクトデザインの基本と応用」表紙 全 5 枚 拡大写真

『自動車とプロダクトデザインの基本と応用』
プロダクトデザイナーになるためにスケッチから始める実践的方法
著:平野幸夫
発行:三樹書房
価格:3000円+税

カーデザイナーやプロダクトデザイナーを目指す人に向けた、スケッチの技法書が三樹書房から発売された。著者は元いすゞ自動車デザイナー。単に美麗なスケッチを描くテクニックを並べるだけではなく、これからデザインを学ぼうとする人に「なぜスケッチのテクニックが必要なのか」を説き、プロダクトデザインそのものの入門書としての要素も盛り込まれている。

本書は3章で構成される。特徴的なのは「基礎編」と「応用編」の前に配された「デザインを志す人に向けた11のメッセージ」という章。わずか12ページではあるが「デザインと美術はなにが違うのか」という説明からはじまり、コンセプトメイキングの重要性、企業の社会的責任にデザインが貢献できること、デザイン思考の意味や目的といったことなどが述べられる。デザイナーとして働くための心構えを記した部分だ。

基礎編と応用編ではスケッチのテクニック解説となるが、ここでも「なぜその技術が必要なのか」ということが詳細に語られる。基礎編ではパースの使い方を説き、立方体や円柱、円錐と角錐、球体などを描くトレーニングに費やされる。後半では木材や金属などの素材の違いを、画材や技法を使い分けて表現することが説明される。

こうした解説は、ある程度の絵心を持っている人ならば無意識のうちにマスターできている部分も多く、そうした人にとっては「いまさら」と思う記述ばかりに思えるかもしれない。ただし自分のスキルが本当に技術を習得できた結果なのか、それとも手癖だけでなんとかなってしまっているだけなのかを見つめ直すには、絶好の教材といえそうだ。

応用編では実際のカーデザイン、プロダクトデザインのプロセスを例に、ラフスケッチからアイデアを展開して背景付きのプレゼンテーションスケッチ、そしてレンダリングに至るそれぞれの段階でのテクニックが記される。ここでもあらゆる部分において「なぜそうしなければならないのか」「そのテクニックを使うことで、なにを表現できるのか」といったことが細かく語られ、自身のアイデアに厚みや説得力を持たせることのできる要素が満載。

ただし、どの項目でも解説が微に入り細を穿つものであり、丁寧ではあるがゆえに情報量が非常に多い。これが本書の個性だが、本書だけでは「デザインって、やっぱり難しい」と、初心者を萎縮させてしまうことにも繋がりかねないと感じる。大学や専門学校などのデザインコース、あるいはオンライン教育などで学ぶ人が、カリキュラムの段階に応じて本書の各項目を参考にするという使い方がよさそうだ。また企業が若手デザイナーをトレーニングする教材としても有効だろう。
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《古庄 速人》

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