文化審議会は3月10日、JR東日本の鉄道博物館(さいたま市大宮区)で保存されている「ナデ6141号電車」と、東京地下鉄(東京メトロ)の地下鉄博物館(東京都江戸川区)で保存されている「東京地下鉄道1001号電車」を重要文化財に指定するよう、文科相に答申した。
ナデ6141号は、大正時代の1914年度までに35両が製造されたナデ6110形電車のうちの1両。当時の国鉄線を運営していた鉄道院の車両としては初の3ドア車で、総括制御装置を導入して複数の車両を連結した運転に対応した。保存車も含め現存する2軸ボギー台車の電車としては最も古く、現在の山手線や中央線で使われた。
1001号は1927年、東京地下鉄道(現在の東京メトロ銀座線)上野~浅草間の開業にあわせて同線に導入された1000形電車(旧1000形)10両のうちの1両。上野~浅草間は日本初の地下鉄として開業しており、旧1000形も日本初の地下鉄車両になる。
文化審議会はナデ6141号について「我が国における電車の近代化、標準化の歩みを知る上で、鉄道史、交通史上に重要」とし、1001号についても「全鋼製、自動扉、自動列車停止装置の採用などの防災・安全対策や、内装、照明、吊り手等の乗客向けの設備に地下鉄ゆえの特徴が見られる。我が国の地下鉄電車の嚆矢(こうし)であるとともに、後の地下鉄車輌の規範となった車輌であり、鉄道史、交通史上に重要」とした。
鉄道博物館と東京メトロによると、鉄道用電気車両(電車)が重要文化財に指定されるのは、これが初めて。このうち1001号は東京メトログループの所有物としても初の指定になる。
かつて旧1000形が運行されていた銀座線では、1983年から同線を走り続けてきた01系電車が3月10日限りで完全に引退。旧1000形のデザインを採り入れた新型の1000系電車に統一される。