JR東海は3月30日、武蔵野貨物線の梶ヶ谷貨物ターミナル駅(川崎市宮前区)で中央新幹線の安全祈願・起工式を行った。神奈川県内で中央新幹線の安全祈願・起工式が行われるのは、これが初めて。JR東海の山田佳臣会長や柘植康英社長、神奈川県の黒岩祐治知事らが出席した。
今回行われたのは、中央新幹線第一首都圏トンネル(全長約36.9km)の梶ヶ谷非常口・資材搬入口新設工事の安全祈願・起工式。山田会長と西松建設の近藤晴貞社長がくわ入れを行い、工事の安全を祈った。
起工式では、柘植社長が「工事は長きにわたる。安全と地域の生活、環境に十分心しながら、地域の皆様と連携して着実に工事を進めていきたい」とあいさつ。フジテレビの記者だった黒岩知事は「30年前に宮崎リニア実験線を取材した。そのときはもっと早く実現すると思っていたが、意外と時間がかかった。(開業まで)あと10年、本当に未来が近づいてきたなと実感している」などと述べ、中央新幹線への期待をにじませた。
中央新幹線は東京都と大阪市を結ぶ、超電導磁気浮上式リニアモーターカーの新幹線。このうち品川(東京都港区)~名古屋(名古屋市中村区)間285.6kmは2014年10月に工事実施計画の認可を受け、2027年の開業が予定されている。起工式は2015年12月から2016年12月にかけ東京・山梨・長野・岐阜・愛知の1都4県で行われ、各地で工事が本格化。今回の起工式を機に神奈川県内の工事も始まる。
中央新幹線のトンネルは、異常発生時の脱出ルートとなる非常口が一定の間隔で設けられる計画。梶ヶ谷非常口は梶ヶ谷貨物ターミナル駅の北側に設置される。梶ヶ谷非常口の南東地下には保守車両の留置施設が設けられることから、留置施設と地上を結ぶ資材搬入口の整備も計画された。
梶ヶ谷非常口・資材搬入口は立坑で、直径は非常口が約50m、資材搬入口が約30m。第一首都圏トンネルの工事ではシールド掘削機の搬入ルートになるほか、掘削により発生した土を地上に搬出するためのルートにもなる。
近くに貨物駅があることから、地上に搬出した発生土は貨物列車で臨海部などに運ぶことも考えられている。柘植社長は「環境への影響も小さくなるから、できるだけ貨物鉄道で運びたい。(貨物列車を運行する)JR貨物と(武蔵野貨物線の線路施設を保有する)JR東日本には、引き続き協力をお願いしたい」などと述べた。