中日本高速と東京大学大学院が共同開発した100km/hで走りながら、トンネル壁面の0.2mmのひび割れを探し出す技術は、今後の道路メンテナンスを根本から変える可能性がある。
19日、会見を行った宮池克人社長は、この技術の紹介で、将来ビジョンをこう語った。「技術を高めて、将来は近接目視点検の代替としたい」と、期待を込めた。
トンネル内点検技術に、高速画像処理を用いると、何が起きるのか。ひび割れは、コンクリートの盛り上がりや漏水と同じ構造物老朽化の顕著な兆候の一つだ。現在、ほとんど場合、その発見を担っているのは点検員の人力だ。
同大学院情報理工学系研究所・石川正俊教授と同社の共同研究は、点検員が目視で確認しているメンテナンスを省力化することを目的に13年から始まった。
その技術のポイントは、トンネル壁面をカメラで直接撮影するのではなく、高速で回転するミラーに壁面を写し、それを連続してカメラに記録することだ。この工夫でカメラのレンズ方向を変えなくても回転ミラーの角度を変えることで、高さや幅など仕様の違うトンネルにも、対応することができる。
1回の撮影で記録できる範囲は約50cm×50cm。これを100km/hで走行しながら連続して撮影する。さらに、トンネル内の往復を何度も繰り返して、壁面すべての撮影を完了するのだ。
両者の研究は15年に装置を完成。16年に100km/hで0.5mmのひび割れの検出、そして今回、0.2mmの検出に成功した。この精度は、実用に充分耐えうるレベルにある。さらにこの装置は、小型軽量で同社が巡回車として使用するトヨタ『ランドクルーザー』クラスの車両の屋根に搭載することも可能だ。
中日本高速は「今後、この研究を点検員がメンテナンスを行う前の通常巡回に活用、異状か所のスクリーニングに役立てる運用を考えたい」(同社広報室)と語る。
さらに、この技術は100km/hで一般車と同じように走行しながら点検できるため、通行規制をかける必要がなく、事故などのリスク低減にもつなげられる。
「まずは、規制がかけにくい対面通行のトンネルで優先的に活用を図っていきたい」(前同)と、18年度からの本格導入を目指す。