産業技術総合研究所(産総研)は6月5日、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)のプロジェクトにおいて、エンルート、日立製作所、八千代エンジニヤリングと共同で、土砂災害時に埋没した車両を空中から探査するシステムを開発したと発表した。
2016年の熊本地震による南阿蘇村立野地区での土砂災害や、2004年の新潟県中越地震に伴って発生した長岡市での土砂災害では、人命救助のために土砂埋没車両の迅速な探査が必要だった。しかし二次災害の懸念もあり、人の立ち入りが難しい状況での車両探査作業は困難だった。
今回、産総研などは、ドローン部とセンサー部からなるドローンつり下げ型電磁探査による埋没車両位置特定システムを開発した。システムのセンサー部は、地盤内の比抵抗分布を地表から計測でき、地下に埋没した金属物体の探査が可能。システムは長さ1.6mの地下電磁探査センサー、位置情報収集用のGPS信号受信器、センサーの制御と計測データのモニタリングのための無線通信装置、地下電磁探査センサーの対地高度をモニタリングする超音波距離センサーで構成される。
実証実験は、軽自動車2台を地下1.5mと3mに埋設させた実験サイトで実施。ドローンにセンサー部をつり下げて、航行速度約2m/s、センサー部の対地高度を約1mで航行させて計測を行った。
まず、比較的粗い飛行間隔で網羅的に探査する広域ドローン航行計測で約70m×35mの実験サイト全域を測定したところ、浅部の埋没車両が僅かに把握できる程度だった。そこで、精密ドローン航行計測を行い、埋没車両によると思われるデータを検知したエリアを細かく航行。その結果、今度は浅部の埋没車両を明瞭に検出でき、深部の埋没車両も僅かながら検出できた。
産総研などでは今後、より実際の状況に近い、起伏の大きな地形での実証試験を行い、システムの改良を継続。また、開発技術を民間企業などに橋渡しし、災害時に役立つ技術となるよう実用化を促進する。