父と娘と剃った眉毛…『カーズ/クロスロード』のフィー監督の思い入れ【インタビュー】

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#20 ストーム(向かって左、黒/青)を追う#95マックィーン(赤)。『カーズ/クロスロード』は7月15日公開、配給はウォルト・ディズニー・ジャパン。 (C) 2017 Disney/Pixar. All Rights Reserved.
#20 ストーム(向かって左、黒/青)を追う#95マックィーン(赤)。『カーズ/クロスロード』は7月15日公開、配給はウォルト・ディズニー・ジャパン。 (C) 2017 Disney/Pixar. All Rights Reserved. 全 4 枚 拡大写真

クルマのキャラクターが活躍するディズニー/ピクサーのアニメーション映画「カーズ」シリーズ。第3作の『カーズ/クロスロード』が7月15日に日本封切り予定だ。監督のブライアン・フィーはこれが監督デビュー作。思い入れを聞いた。

<STORY> 天才レーサーのライトニング・マックィーンは、ずっと第一線で走り続けるものと自分を信じていた。だが新人で次世代レーサーのジャクソン・ストームに敗北する。新シーズンに再起をかけての挑戦がトレーナーのクルーズ・ラミレスとともに始まる。亡き師、ドック・ハドソンの“人生の真実”と厳しいトレーニング……。マックィーンは運命のレースに勝利できるのか?

フィー監督は子供の頃に『ジャングル・ブック』(1976年)と『スター・ウォーズ4 / 新たなる希望』(1977年)を見て、映画を好きになった。コロンバス・カレッジ・オブ・アート&デザインを卒業、手描きアニメーションやキャラクターデザインの仕事に携わる。2003年にピクサーに加入し、ストーリーボード・アーティストとして「カーズ」シリーズ、『レミーのおいしいレストラン』(2007年)、『ウォーリー』(2008年)を手がけ、『モンスターズ・ユニバーシティ』(2013年)ではストーリー・アーティストを務めた。

カーズ・シリーズの第1作『カーズ』(2006年)、『カーズ2』(2011年)ではジョン・ラセターが監督だった。ラセターはピクサーの創立メンバーの一人で、現在はウォルト・ディズニー・アニメーション・スタジオおよびピクサー・アニメーション・スタジオのチーフ・クリエイティブ・オフィサー。第3作の『カーズ/クロスロード』では製作総指揮となり、フィーが監督を務めた。

マックィーン、大クラッシュ!! (C) 2017 Disney/Pixar. All Rights Reserved.
Q:『カーズ/クロスロード』は、マックィーンが大クラッシュするところから物語が始まります。世代交代を表現をするのには様々な方法があると思うのですが、主人公が負けるというショッキングな場面を用意したのはどういう発想からですか? 予告編を見たとき、本当に驚きました。

フィー:勝ち負けより、新しい世代が現れて、マックィーンと彼の世代がそれまでの地位にとどまることはもう難しいということを、伝えたかったのです。映画の早い時間に目を覚ましてもらいたかった。

Q:さて、カーズ・シリーズの監督が変わったわけですが、フィーさんは、ストーリー・アーティストからどのような経緯で監督になったのですか? ラセターはなぜあなたを監督に指名したのでしょう?

フィー:それがわからないんです(笑)。思いもしませんでした。すでにこの作品の企画とストーリー作りに関わっていたのですが、ある日、ジョンのオフィスに呼ばれて監督をやるように言われたのです。大変驚きました。キャラクターに愛着と個人的な思い入れがあったから、ジョンが私を信頼して監督を任せてくれたことは、たいへん嬉しいです。

Q:その個人的な思い入れというのを聞いてよろしいですか?

フィー:はい。マックィーン、ハドソン、クルーズの関係は、私自身の親子関係がインスピレーションです。親は子供にとって安心のよりどころですよね。私の母はすでに亡くなり、父も歳をとってきて、私の心のセイフティネットが弱くなってきました。いっぽう自身が2人の娘の父親になり、今度は私が娘たちのセイフティネットにならなければならない。自分が頑張るぞ、と力を得ました。ハドソンとマックィーンとの関係は父と子、マックィーンとクルーズの関係は父と娘といっていいでしょう。このように『カーズ/クロスロード』は、マックィーンが新たな人生の目的を見つける物語ですね。

復帰のトレーニングに励むマックィーン(向かって左)とトレーナーのクルーズ。 (C) 2017 Disney/Pixar. All Rights Reserved.
Q:アーティストから監督になったことで、利点はありましたか? 例えば黒澤明監督は自分でストーリーボードを描きます。映画作りの手法で影響はありましたか?

フィー:ええ、私のバックグラウンドは、映画を監督する上でたいへん有効でした。アーティストグループとのコミュニケーションで役に立ちましたよ。技法をよく知っているので意思の疎通に困りませんでした。

カメラワークや構図も美術ですから、私の経験は役に立ちました。こうしなきゃと指示を出すのではなく、彼らの才能を理解できたので自由にまかせました。ピクサーには優秀な才能が集まっていますからね。アニメーションもルーツは手描きです。ボージングや動きについて、アニメーターと同じ言語を話せます。ライティングなんかはまさに絵と同じですよね。

Q:ラセター監督からフィー監督への交代は、マックィーンからストームへの世代交代ですか?

フィー:いや、それは偶然ですよ(笑)。意図的にストーリーに反映させたわけではありません。

Q:カーズの世界で、なぜ車にドアがついているのですか? 人は乗りませんよね。

フィー:たしかに(笑)。お聞きしますが、眉毛を剃った人に会ったことがありますか? パッと見てどこが違うのかわからないんだけれども、違和感は確かに感じるんですよ。カーズのドアハンドルはそれです。

カーズのキャラクターは人間世界のメタファーです。私たちが車になります。劇中の車は楽しい形にデフォルメされてはいますが、そのとき車が車としてちゃんとした形でないと、現実の世界を反映できません。ドアがないと車ではないのです。つまり実世界にあるものをちゃんと描いているのです。ドアハンドルのない車は眉毛のない顔ですね。
ブライアン・フィー監督

《高木啓》

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