ロボットみたいなフロントマスクで、“戦隊モノ”特撮テレビドラマやSF映画に出てきそうな近未来的なデザイン、ヤマハ『MT-10』だ。
見た目からして凶暴そうだが、ポテンシャルもまたスゴイとしか言いようがない。エンジンとシャシーは、サーキットでのパフォーマンスを追求した同社スーパースポーツモデルの雄『YZF-R1』譲り。ヤマハのレーシングテクノロジーが惜しみなく注ぎ込まれている。
それなりに覚悟して走り出してみると、予想に反して乗りやすい。前後サスペンションはカチカチに硬く、スピードを出して負荷をかけないと動かないっていうレーシングバイク然としたものではなく、ゆっくり走っても滑らかにストロークする味付け。
160PSを発揮する1000ccエンジンもアクセルを大きく開ければ、超絶ダッシュでたちまちすべてのものを置き去りにしてしまうが、クルマの流れに乗って街乗りしていても楽しいと乗り手に感じさせる低中回転重視のセッティング。サーキットではなく、公道で楽しめるオートバイに出来上がっている。
それもそのはずで、『MT-10』は新しいスポーツバイクの流れを作ったヤマハ「MTシリーズ」のフラッグシップモデルであり、そのコンセプトは「トルク&アジャル(軽快)=誰もが操れる」というもの。
『MT-10』もまた意のままに操れる軽快なハンドリングを持ち、その超絶パワーをストリート性能を優先して“使える”ようにしてくれてあるのだ。
扱いやすさを後押ししてくれるのが、エンジン特性を3つのモードから選べる「D-MODE」であったり、スリップを未然に防ぐ「TCS(トラクション・コントロール・システム)」など先進的な電子制御システムたち。
“素”のままでは恐ろしいモンスターマシンも、こうした最先端技術の力を借りて手懐けちゃうのが今どきなのかもしれない。なんて思いつつ、安心してライディングを楽しむことができた。
■5つ星評価
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★
コンフォート:★★★★
足着き:★★★★
オススメ度:★★★★
青木タカオ|モーターサイクルジャーナリスト
バイク専門誌編集部員を経て、二輪ジャーナリストに転身。自らのモトクロスレース活動や、多くの専門誌への試乗インプレッション寄稿で得た経験をもとにした独自の視点とともに、ビギナーの目線に絶えず立ち返ってわかりやすく解説。休日にバイクを楽しむ等身大のライダーそのものの感覚が幅広く支持され、現在多数のバイク専門誌、一般総合誌、WEBメディアで執筆中。バイク関連著書もある。