【ホンダ N-BOX 試乗】カスタムターボ以外にも15インチが欲しい…井元康一郎

試乗記 国産車
ホンダ N-BOX カスタム
ホンダ N-BOX カスタム 全 16 枚 拡大写真

ホンダが9月1日に発売した軽トールワゴン『N-BOX/N-BOXカスタム』を短距離テストドライブする機会があったので、ファーストインプレッションをお届けする。

試乗したのはN-BOXがホイール径14インチの自然吸気版、カスタムが15インチ径のターボ版。試乗エリアは横浜界隈で、首都高速と市街地の両方を走った。路面コンディションはドライおよびセミウェット。2名乗車。エアコンON。

初代デビューから6年足らずでエンジン、車体、シャシー等のプラットフォームを再び全面刷新したことが売りの新型N-BOX。実際にドライブしてみたところ、改設計の効果は誰でも体感可能なレベルで、乗り心地のよさ、静粛性の高さ、視界の良さは旧型から長足の進歩を遂げたと言って良さそうだった。ただし、カスタムターボのとノーマルの自然吸気では足回りの仕様に大きな違いがあり、断然良かったのは15インチを履くカスタムターボ。14インチのほうは街乗りにおける当たりの柔らかさにリソースを割いたからか、船の揺動に似たゆらつきが感じられた。

秀逸な動きを見せた15インチホイール仕様のシャシーは、中実バーのスタビライザーを持つ本格派。走りをしっかり仕上げるためにロール剛性も高めにセッティングされているのだが、それにもかかわらず乗り心地はフラットで、路面の凹凸をとても柔らかくいなす素晴らしい味に仕上がっていた。

初代は乗り心地のゴツゴツ感、突き上げ感が強めなのが弱点であったが、そのなかで唯一、軽自動車離れした素晴らしい乗り心地と高い安定性を両立させたグレードがあった。ホンダアクセスという子会社のテスターたちがテストにテストを重ねて作り上げた「モデューロX」で、タイトターンが連続し、道も悪い芦ノ湖スカイラインのような場所でも路面に吸い付くような走りが印象的だった。

今回の試乗ではそういう道を走ったわけではないが、少なくともアンジュレーション(路面のうねり)のきつい場所や段差、舗装の補修跡を通過するときのしなやかさについては、新型カスタムターボは標準状態で旧型のモデューロXの域に達しているように感じられた。とくに首都高速のクルーズ感は秀逸で、上位モデルの『フリード』や『ステップワゴン』も食うのではないかと思われるくらいだった。

これに対し、中空スタビライザー装備の14インチ仕様のほうは、サスペンションが柔らかすぎるきらいがあり、15インチ仕様に比べてバランスが悪いように感じられた。不正路面通過時のあたり感は至極柔らかなのだが、一方で左右方向の揺れも大きめ。また、その動きがクルマに乗っている人の「クルマがこう揺れるだろう」という体感的な予測にもとづく身構えと一致しておらず、船が揺れるようなフィールがあった。もっとも、もっぱら近場を走るだけのカスタマーにとっては、とくに問題ではないだろう。

動力性能は市街地においてはとくに不都合は感じられない。ただ、高速は車体が重く、前面投影面積も大きなトールワゴンの宿命で、どうしても鈍重に感じられてしまう。ただ、チューニングは自然吸気、ターボともに非常に丁寧。CVTのレスポンスが非常に良く仕上げられているため、スロットル操作によるパワーの調節が実にやりやすいのが印象的だった。試乗距離が短かったため燃費はチェックしていないが、平均燃費計値をみると自然吸気は混雑した市街地、高速を合わせて20km/リットル台。ターボはかなり優速に走ってみて16km/リットル台だった。

車内で旧型から大きく進化したと感じられたのは静粛性と視界。静粛性はロードノイズの処理、エンジンルームからの騒音侵入ともかなりハイレベル。自然吸気はベイブリッジの登りで加速する時は7000rpmまで回ってしまうが、それでも気に障るようなやかましさではなかった。視界については外観を一見したときは旧型と似たようなものではないかと思われたのだが、実際に乗るとピラーの形状や配置が大きく改善されており、前方から即方にかけてのパノラマ感は実に気持ちよいものがあった。

総じて新型N-BOX/N-BOXカスタムは、スタイリングこそ旧型に比べてキャラクターが薄まってしまったものの、パフォーマンスはスペース系の軽自動車としては申し分なく、顧客満足は大いに得られそうなクルマに仕上がっていた。

線形溶接や接着剤による接合など、欧州の自動車メーカーがよくやるような工法を多用してボディを強固に作り、さらに路面からの入力をうまく処理するためにショックアブゾーバーをなるべく立てるように配置したという。また、ショックアブゾーバーそのものもホンダがメガサプライヤー志向を強めたのに伴って一時冷たくされていたショーワが設計を大変に頑張ったようで、減衰力を出しながらフリクションはものすごく少ないという作動感。これらをはじめとする熱心な作り込みが動的質感の高さを実現させたのであろう。

可能ならば、乗り心地とスタビリティに優れた15インチのシャシーをカスタムターボ以外のグレードにも展開するか、14インチのシャシーを再セッティングするといった改良を期待したい。基本はいいのですぐにできるだろう。

■5つ星評価
パッケージング:★★★
インテリア居住性:★★★★
パワーソース:★★★
フットワーク:★★★★★(15インチ) ★★★(14インチ)
おすすめ度:★★★★

《井元康一郎》

井元康一郎

井元康一郎 鹿児島出身。大学卒業後、パイプオルガン奏者、高校教員、娯楽誌記者、経済誌記者などを経て独立。自動車、宇宙航空、電機、化学、映画、音楽、楽器などをフィールドに、取材・執筆活動を行っている。 著書に『プリウスvsインサイト』(小学館)、『レクサス─トヨタは世界的ブランドを打ち出せるのか』(プレジデント社)がある。

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