【トヨタ カムリ 試乗】見た目も、中身も艶やかに…木下隆之

試乗記 国産車
トヨタ カムリ新型
トヨタ カムリ新型 全 8 枚 拡大写真

『カムリ』が日本国民の心の中に強く浸透しつつある。というのも、新型カムリは華やかでスタイリッシュなフォルムを纏うことで人目を惹く存在になったし、内に秘めたその走りは、ドライバーカーとしても優れたものになったからなのだ。

それが証拠に、僕ら業界の人たちの間でも、カムリの話題が頻繁に上がる。

誤解を恐れずに言えば、これまでのカムリは、地味な存在だった。FF最大の武器であるスペース効率を生かした広い室内は評判だったけれど、どこかに華やかな個性が光るわけではない代わりに、どこにも非がないという、質実剛健の言葉が似合う存在であり、それ以上ではなかったのだ。

グローバルで展開され、特にアメリカでは、群雄割拠するこのジャンルで販売トップを継続している。アメリカの国民車といってもいい。だが、日本ではその存在は地味だった。

だが新型は、華やかな印象が強い。これまでのカムリとは、雰囲気が全く異なるのである。

低く広く、そして低いフォルムは、新しい開発されたTNGAプラットフォームの恩恵が強い。タイヤを四隅に配することが可能で、エンジン搭載位置も低く後退させることができる。それによって、大地に根をはるような、安定感あるスタイルを得たのだ。

デザインの詳細は写真から判断してほしいけれど、とにかく実物は、堂々とした体躯なのである。

その艶やかなフォルムを裏切ることなく、走りも上質になったのも印象的だった。ドライブトレーンは全グレード、ハイブリッドとなった。海外にはガソリン仕様も存在するが、ハイブリッド一本に集約したのは、少なくとも日本市場を考えれば正解だと言えるだろう。

2.5リットル直列4気筒ガソリンエンジンは211psを発揮する。さらに120psのモーターを合体させるから、動力性能に不足はない。

ゆったりとクルーシングしている時のサウンドは、驚くほど静かだ。ひとクラス上の高級感を感じる。それでいて、強く加速すれば心地よいサウンドを意識させる。無味乾燥としたエンジンフィールではなく、ドライバーズカーとしての存在感が引き立てられている。

ハンドリングも上質なのだ。実は僕がもっとも高く評価しているのはこのハンドリングである。先代では、操縦フィールに強く魅力を感じたことはなかった。正しく曲がり正しく加速するだけで、それ以上ではなかった。だが新型は、例えば交差点をスッと曲がるときでさえ、素直なヨーゲインが感じさられるのだ。気持ちいい。

もちろんサスペンションをハードに仕立てているわけではない。乗り心地はすこぶるいい。さらに付け加えれば、しっとりと路面に吸い付くような湿度感が心地いい。17インチ仕様はもちろんのこと、18インチ仕様でも、バネ下がバタバタすることもなく、不快な突き上げを意識することもない。しっとりした印象は、どの仕様でも共通なのである。それでいてハンドリングが素直なことに驚かされた。

これこそ、TNGAの恩恵だと思う。小手先の細工で誤魔化すわけではなく、理想的なプラットフォームが滲み出るようなハンドリングを与えてくれているのだ。 

艶やかな印象が増した新型カムリは、その中身も艶やかだった。

■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク★★★★★
オススメ度:★★★★★

木下隆之| モータージャーナリスト
プロレーシングドライバーにして、大のクルマ好き。全日本GT選手権を始め、海外のレースでも大活躍。一方でカー・オブ・ザ・イヤー選考委員歴は長い。『ジェイズな奴ら』を上梓するなど、作家の肩書きも。

《木下隆之》

木下隆之

学生時代からモータースポーツをはじめ、出版社・編集部勤務を経て独立。クルマ好きの感動、思いを読者に伝えようとする。短編小説『ジェイズな奴ら』も上梓。日本・カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。「心躍るモデルに高得点を与えるつもり」。海外レース経験も豊富で、ライフワークとしているニュルブルクリンク24時間レースにおいては、日本人最高位(総合5位)と最多出場記録を更新中。

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