【川崎大輔の流通大陸】タイの自動車部品企業を支える梱包カンパニー

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自動車生産にかかわるのは部品メーカーだけではない。今回はタイで自動車部品を流通する際の包装設計と梱包(こんぽう)材を手がけるカネパッケージ(タイランド)の責任者、荒幡(あらはた)氏にインタビューをした。

◆日本の自動車産業の重要拠点、タイ

タイの首都バンコクを初めて訪れた日本人は、朝晩の市内の交通渋滞に驚く。更に、注意深くバンコクで街行く車の車種についてみてみると、街中を走っているのはほとんど日系ブランドの自動車だというのに気がつくだろう。タクシーに関してはほぼ100%日系ブランド。タイの自動車市場における日系メーカーのシェアは約9割と圧倒的だ。

今年のタイ国内の新車販売は好調。各社自動車メーカーによる新モデルの投入や、ファーストカーバイヤープログラム(初めての自動車購入者に対する税金還付制度)の買い替え期間終了に伴う買い替え需要、更にタイ経済の景気回復などの影響で、去年と比較して増加は間違いない。タイ国トヨタ自動車の菅野社長は、7月にバンコクで記者会見を行い、2017年のタイの新車販売台数は83万台で、2016年の76万8788台から8%増加する見通しだと発表した。実際に2017年1月から11月までで76万7000台を超えており昨年同期比12.5%の増加となっている。

タイは内需だけではない。日本の自動車産業にとって最も重要な生産拠点の1つに数えられている。現地化や研究開発強化といった取り組みが着実に進んでいる。大規模な完成車の生産能力に加えて、外資系企業の誘致や地場サプライヤーの育成を通じて強固なサプライチェーンを構築している。「東洋のデトロイト」と言われ、世界各国から完成車メーカーが15社、ティア1(1次下請け企業)が約700社、ティア2とティア3(2・3次下請け企業)では約1700社が進出している。その中で日系企業数は約750社だ。

◆カネパッケージ(タイランド)について

日系メーカーの自動車を生産するために多くの日系の自動車部品企業がタイに進出してきている。しかし、自動車生産にかかわるのは部品メーカーだけではない。カネパッケージ(タイランド)は2006年にタイに進出した包装設計と梱包材を手がける企業だ。現在タイの工場で29名のスタッフが働く。

親会社は埼玉県にある(株)カネパッケージ。製品などを流通させる際の梱包には意外とコストがかかるが、納品の小ロット化による積載効率改善、衝撃吸収性の向上、省資源化、などによって物流コストや二酸化炭素の削減を提案。現在7か国でビジネス展開している。

カネパッケージ(タイランド)では、デザイン、ストック(ウェアハウスサービス)、アッセンブリーの3つの核となるビジネスを行っている。自動車部品企業ではティア1、2などの顧客が多い。部品メーカーが海外出荷する際ダンボールの梱包材を利用する。完成車メーカーと部品メーカーがやり取りする時は繰り返し使用可能なプラスチックの梱包材を使う。梱包材のダウンサイジング化、省資源化、積載効率の改善など踏み込んだ物流のコストダウン提案などを行う。自動車部品関連ではいかに容量を増やして入れることができるかを提案している。

「日系の梱包会社での製品が高いということはありません。原料は一緒ですから」(荒幡氏)。更に「自動車部品の梱包市場は昨年よりも良くなってきています。またタイからの海外出荷が増えていっています」と指摘する。梱包ビジネスの視点からみるとタイの自動車部品市場の状況は昨年よりも良くなっているようだ。

◆現在の課題、他社との差別化

課題としては、紙の原料コストがアップしてきていること。世界的にコスト高になっており、紙の値段が前年比で20%くらい高くなっている。他社との差別化でカバーしていく必要がある。「強みは、なんでもスピーディーに行えることです。おおよそ1週間ほどで見積もりと図面が出せます」(荒幡氏)。その後、サンプルを作りテストを行っていく形になる。

更に、タイは他国と異なるビジネス環境のようだ。「他国は立ち上げのお手伝いですが、タイの場合は改善に尽きます」と荒幡氏は語る。750社近くの自動車部品関連会社が進出済みであるためだ。既に物流含めたモデルが出来上がってしまっている。そのため踏み込んだ提案で次につなげる方法を探る必要があり、提案力、スピード力が要求される。

◆今後の展開について

今後のカネパッケージ(タイランド)の展開としては東部経済回廊(EEC)への進出を検討している。 EEC とは、タイ政府がバンコク東部に位置するチャチュンサオ、チョンブリー、ラヨーンの3県を投資優遇地とした経済特区だ。タイ政府による中長期的な経済成長戦略である「タイランド 4.0」の中核をなすものだ。現在では自動車や電機の工場が集積するタイ随一の工業地帯となっており、今後の発展が期待されている。私も昨年、日本政府が経済界と連携して主催したEEC視察ツアーに参加して訪問をした。タイ政府は、「EEC が成功するには日本企業の協力が欠かせない」と期待を寄せており、タイ政府の力の入れようを感じた。

タイにおける自動車生産関連の変化としては、大きく2つの変化が起きるだろう。1つに環境対応及び低燃費の小型自動車生産奨励策だ。2012年のエコカー政策がそれに当たる。徐々に環境車、電気自動車(EV)へとシフトしていく。自動車部品の業界構造が変化をしていくことで新しいセグメントが創出されるだろう。

2つ目には、CLM(カンボジア、ラオス、ミャンマーなど)新興市場の成長による新しいサプライチェーンの創出がなされる。部品製造拠点の変化、CLM市場の拡大、販売先拠点としての魅力向上による流通の変化などが出てくる。

カネパッケージ(タイランド)などのように自動車生産にかかわる企業はメーカーだけではない。多くの周辺企業がタイでの自動車生産をサポートしている。これにかかわるすべての企業はこのような変化に柔軟に対応していくことが今まで以上に重要になってくるだろう。

<川崎大輔 プロフィール>
大手中古車販売会社の海外事業部でインド、タイの自動車事業立ち上げを担当。2015年半ばより「日本とアジアの架け橋代行人」として、Asean Plus Consulting LLCにてアセアン諸国に進出をしたい日系自動車企業様の海外進出サポートを行う。アジア各国の市場に精通している。経済学修士、MBA、京都大学大学院経済研究科東アジア経済研究センター外部研究員。

《川崎 大輔》

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