“エヴァ世代”も新型ゴールドウイングに乗るべき理由…「バガーカスタム」とは?

モーターサイクル 新型車
ホンダ ゴールドウイング 新型(北米試乗会)
ホンダ ゴールドウイング 新型(北米試乗会) 全 26 枚 拡大写真

“バガーカスタム”というスタイルをご存知だろうか。

アメリカ西海岸のカスタム好きが、2輪グランドツアラーのトップケースや装飾を外し、ウインドスクリーンも短くカットしてしまったのが発端で、ゴージャスさを誇るクロームパーツもあえて抑えて全身をブラックアウトするストリートカスタム、それがバガーカスタムだ。

ベースモデルが大排気量グランドツアラーだから迫力満点。エンジンをさらに強化したり、アンプを積むなどしてオーディオを強化するのもポイントのひとつとなっている。

そんなトレンドに敏感に反応して、4月に新登場するのがホンダ『ゴールドウイング』だ。足まわりやエンジン、マフラーなどを精悍なブラックで仕上げ、若々しいスタイルと排気量1833ccのフラット6エンジンの大迫力が魅力。一足先に、本場アメリカで乗ってきた。

しかしチョット待って、ゴールドウイングといえば、ホンダの超豪華ツアラーではなかったのか…!? というアナタはバイクに詳しい人。大陸横断ツアラーとも言われ、エアバッグを積む設定もあるし、これまではベテラン向け超豪華バイクの代名詞だった。

新型では「ゴールドウイング・ツアー」に純粋なグランドツアラーの役目を渡し、「ゴールドウイング」はバガーカスタムへと生まれ変わったのだ。

◆大胆なイメージチェンジ

とはいえゴールドウイングは1975年の初代発売以来、ホンダの最上級ツアラーとして人気を誇り、特にアメリカでは他のオートバイには置き換えることのできないカルチャーとして根づく。これほどの大胆なイメージチェンジ、いいのだろうか?

アメリカホンダのマーケティングコミュニケーションズ・マネージャーのリー・エドモンドさんは言う。

「新しい人たちに乗ってもらいたいのです。それにはもっとコンパクトでスタイリッシュ、そしてエキサイティングでなければならないと考えました」

「これまでは“ゴージャス”であることが重要でしたが、それが扱いやすさを邪魔しました。そして“快適さ”が退屈に感じられたのかもしれません。こちらのライダーたちも、新しいゴールドウイングを待っていたのです」

「たとえば電動ウインドシールドを低い位置に下げれば、モーターサイクルらしい心地良い風がカラダに当たるでしょ? 動きやすいシートだから、コーナーもスポーティでしょ?」

リーさんが言うとおりだ。ゴールドウイング新型の車体は軽く、従来型より52kg、従来型にも存在したサイドケースのみの「F6B」と比べても27kgの軽量化を果たしている。

従来型のシートはゴージャスなソファのようだったが、新型ではスポーツバイクのように体重移動もしやすい。快適性は犠牲になっていないのに。

ボア74.0mm×ストローク71.0mmでショートストローク気味だった水平対向6気筒エンジンはボア×ストロークともに73.0mmのスクエアとし、排気量を1832ccから1833ccにわずか拡大。2バルブを4バルブ化したことも手伝って低中回転域の力強さが増し、全域で低い回転でのクルージングが楽しめるように。5速だったミッションは6速化され、「スポーツ」「ツアー」「エコノ」「レイン」のライダーモードも搭載した。

この4種の味付けが巧妙で、「スポーツ」ではスロットルレスポンスが鋭く、強力なエンジンを存分に楽しめる。これはもうスポーツバイクのパワーフィールだ。

◆もう「オヤジくさい」なんて言わせない

そしてバガーカスタムに欠かせないオーディオだが、Apple CarPlayにバイク初対応したことで、iPhoneをケーブルで接続すれば、ミュージック、マップ、メッセージ、電話など対応アプリを車載ディスプレイで操作できる。

フルカラー7インチTFT液晶画面はタッチパネル式ではないが、ハンドルやコンソールのスイッチで操作でき、運転中はグリップから手が離せないバイクの場合はむしろこの方が便利。ブルートゥースでヘッドセットを接続すれば音声入力もでき、電話も取れてしまう。

この電脳すぎる先進性とスタイリッシュさ。もう「オヤジくさい」なんて言わせないというゴールドウイング開発陣の意気込みを感じる。

LPL代行の中井さん(Honda R&D)も「大型バイクビギナーや若い人、女性にだって乗ってもらいたい」と力を込めた。そしてさらにこう言う。

「こちらで試乗会を開催したら、これまでのユーザーにも評判が良かったんですよ」

取材時、すぐ目の前にも、歴代のゴールドウイングを乗り継いできたというベテランライダーがいた。70歳を超えるトムさん、メディア向け試乗会の宿泊先を聞きつけ、新型をひと目見ようと駆けつけたのだ。

その熱意に応え、アメリカホンダのスタッフらが特別に試乗をしてもらうという粋な計らいをするものだから、一部始終を見守った。「新しいのは若者向けでダメだ」などと言うのではないだろうか。若干の緊張が伴う。

ひとまわりしてきたトムさんが「こういうのを待っていたんだ!」と満面の笑みを見せたから、リーさんや中井さんも頬を緩めサムズアップ。

「さぁ、娘に会いに行こう」と、その筋金入りのゴールドウイング乗りは、トリップメーターが間もなく10万マイルをカウントしようという従来型でまた走り出した。

◆エヴァンゲリオン世代も乗るべき

きっと、ここアメリカにはこういうゴールドウイング乗りがたくさんいる。横断すれば4000kmにもなる広大な土地を、3日や4日かで走りきってしまうようなタフガイたち。そういう彼らに生半可なものは通用しない。

そしてスタイルも走りも、そして装備面もまさに最先端のバガーカスタムとなったゴールドウイング。トムさんのようなツーリングユースのライダーならゴールドウイング ツアーを選べばいいが、日本で街乗りもするならやっぱりバガーがいいかもしれない。

これはもうオジサンたちだけのものにしておいてはならないだろう。先進的でアグレシッブでスタイリッシュ。アニメから飛び出してきたかのようなSF感覚があり、ガンダム世代、いやエヴァンゲリオン世代も乗るべきだ。

《青木タカオ》

モーターサイクルジャーナリスト 青木タカオ

バイク専門誌編集部員を経て、二輪ジャーナリストに転身。多くの専門誌への試乗インプレッション寄稿で得た経験をもとにした独自の視点とともに、ビギナーの目線に絶えず立ち返ってわかりやすく解説。休日にバイクを楽しむ等身大のライダーそのものの感覚が幅広く支持され、現在多数のバイク専門誌、一般総合誌、WEBメディアで執筆中。バイク関連著書もある。

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