ホンダのAWDは何がスゴいのか? 新型「レジェンド」の変化と進化

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ホンダ レジェンド 新型(マイナーチェンジモデル)で豪雪の鷹栖試験場を走った
ホンダ レジェンド 新型(マイナーチェンジモデル)で豪雪の鷹栖試験場を走った 全 24 枚 拡大写真

ホンダでは、軽自動車やコンパクトカー向けのビスカスカプリング式4WD、中型車やSUV、ミニバン向けの「リアルタイムAWD」、スーパースポーツの『NSX』と高級セダンの『レジェンド』のために特化した「スポーツハイブリッドSH-AWD」という3種類の4WDシステムを用意している。中でもホンダの独創的な4WDとして真っ先に目を向けないわけにはいかない、スポーツハイブリッドSH-AWDを搭載したレジェンドについて、まずお伝えしたい。

2014年に登場した現行レジェンドは、雪上での優れた走行性能や、それがもたらす安心感により、こと北海道において高く支持されているという。実際にも開発時に雪上での実地検証を綿密に行なったらしく、その努力の賜物といえる。おりしもマイナーチェンジにより内外装デザインだけでなく走りにも大きな変更があったばかりの新型レジェンドを、スポーツハイブリッドSH-AWDが本領を発揮する冬の北海道で、いち早く試すことができた。

◆マイチェン前後で大きく変わった走り

スポーツハイブリッドSH-AWDの仕組みをおさらいすると、フロントのエンジンとモーターとは独立して、リアに左右輪それぞれを駆動する2つのモーターを搭載しているのはご存知のとおり。むろんプロペラシャフトは存在しない。

これによりエンジンの動きに制約を受けることなく後輪の左右の駆動力を個別に制御できるので、モーターの回生で内輪の減速力を強めたり、内輪と外輪の駆動力に差をつけるなどしてクルマ自身に旋回力を発生させ、コーナリング性能を高めるという画期的なシステムである。

2018年モデルでは、ハードウェアを踏襲しながらも、より自然な旋回フィールを追求するとともに、クルマを曲げながら強く前に押し出すように制御が変更された。

ドライブすると、オン・ザ・レール感覚の、まさしく意のままの走りが心地よい。あたかもドライバーの意思をクルマが読み取ってくれたかのように忠実に動き、とてもコントロールしやすい。それなりに大柄クルマながら、そうとは思えないほど走りに一体感があり、常にクルマが自分の手の内にあるような安心感もある。
旧型(2015年モデル)のレジェンドにも試乗。思想の違いは明確だ
2018年モデルがどれほど進化したか、2015年モデルと乗り比べることもできたのだが、こうしたクローズドコースでVSA OFFにして走ると、走りの性格の違いがよくわかった。

2015年モデルのほうが、ヨーが急激に立ち上がってオーバーステアになりやすいので、挙動が乱れやすいのに対し、2018年モデルはスタビリティとライントレース性を重視していて、しっかり曲げて、しっかり前へと進ませることを念頭に制御しているように感じられた。また、システムの動作を示す車内のディスプレイの表示では、2015年モデルのほうが動きの絶対値は大きいように見えたが、緻密さでははるかに2018年モデルが上回っていた。

さらには、同じタイヤを履くとは思えないほど2018年モデルのほうが接地感も高く、2015年モデルでは微妙に感じられた操舵に対する応答遅れや、中立付近の微少舵域でシステムが効いてくれるかどうかわからないような曖昧な印象もない。これにはスポーツハイブリッドSH-AWDの進化はもちろん、ボディ剛性の向上や、足まわりのチューニングの変更も効いている。2018年モデルのほうがドライブフィールはずっと上質だ。また、VSA ONの状態で、低速走行時に大きく転舵すると、2018年モデルのほうが積極的に曲げようと制御するなど、いろいろ2018年モデルの味付けのほうが理にかなっているように思えた。

◆真の意味での「操る歓び」

総合的に見れば、乗りやすさや上質さでは2018年モデルがずっと上回る。一方で、開発関係者が「こういうコースでは2015年モデルのほうが面白いかも」と話していた意味もよくわかった。確かにその通りで、スポーツドライビング的な見方では、2015年モデルのほうがエキサイティングだ。当時としてはスポーツハイブリッドSH-AWDも、やればここまでできるんだということをアピールする意味合いもあっただろう。これがホンダらしさだと考えて、あえてこのように味付けしたことも理解できなくはない。

ところがホンダの開発サイドも、この車格のドライバーズセダンとしてどうあるべきかを考え、方向性を見直したという。そして、ホンダのフラッグシップセダンたるレジェンドとしてどちらが相応しいかというと、いわずもがな、ではないだろうか。

ハードウェアは同じでもアプローチの違いによって、このように走りは大きく変わるもの。むろん2015年モデルもドライブしていて楽しかったが、真の意味での「操る歓び」というのは、より意のままに走れる2018年モデルのほうが上だったように筆者は思う。

岡本幸一郎|モータージャーナリスト
1968年、富山県生まれ。学習院大学を卒業後、自動車情報映像の制作や自動車専門誌の編集に携わったのち、フリーランスのモータージャーナリストとして活動。幅広く市販車の最新事情を網羅するとともに、これまでプライベートでもスポーツカーと高級セダンを中心に25台の愛車を乗り継いできた経験を活かし、ユーザー目線に立った視点をモットーに多方面に鋭意執筆中。日本自動車ジャーナリスト協会会員。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

取材協力 ホンダ

《岡本幸一郎》

岡本幸一郎

1968年、富山県生まれ。学習院大学を卒業後、自動車情報映像の制作や自動車専門誌の編集に携わったのち、フリーランスのモータージャーナリストとして活動。幅広く市販車の最新事情を網羅するとともに、これまでプライベートでもスポーツカーと高級セダンを中心に25台の愛車を乗り継いできた経験を活かし、ユーザー目線に立った視点をモットーに多方面に鋭意執筆中。日本自動車ジャーナリスト協会会員。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

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