ライダーは多少の雨でもツーリングへ行くから…ブリヂストン二輪タイヤ開発者談

モーターサイクル テクノロジー
BATTLAX タイヤ試乗会
BATTLAX タイヤ試乗会 全 12 枚 拡大写真

ブリヂストンの最新タイヤ『BATTLAX SPORT TOURING T31』(以下、T31)と『BATTLAX ADVENTURE A41』(以下、A41)に共通して言えることは、ウェット性能が高いということ。

それはクローズドコースでの試乗会にて、実際に小雨が降るなか乗ってみても確かめることができた。これならツーリング先での急な天候変化にも対応できる。結局のところ、昨今の高性能タイヤのドライでのグリップ力はもうかなり高いレベルにあるし、そもそも公道ではそれほどに高い速度域で走るようなことはない。T31はスポーツツーリングモデル、A41はアドベンチャー用。一般ユーザーが求めるのは、雨に降られたときの安心感なのだ。


開発者もそこにこだわった。株式会社ブリヂストン MCタイヤ開発部 設計第2ユニットリーダー 高橋淳一さんが教えてくれた。

「いろいろと用事のあるなか、休日にツーリングの予定を組んだものの天気予報の降水確率が高い。でも、その日を逃したら、またいつツーリングに行けるかわからない。ほとんどの人がツーリングに行くと決めたら、多少の雨の確率があっても決行することが多いことが調査してわかったのです」(高橋さん)

たしかにそうかもしれない。仕事や家庭の事情などがあって、延期は容易くないのが現実だろう。まして仲間たちとのツーリングなら、それぞれがまた都合をつけなければならない。悲しいかな、休日も思い通りにいかない。それが昨今のライダー事情だ。

「つまり多少の雨に降られてしまうことを想定しつつ、レインウェアを着たり準備して出掛けているのです。そこでタイヤに求められる性能が、より高いウェット性能だってことがわかりました。雨が降ってきても安全に、快適にツーリングを続けられることが重要なのですから」(高橋さん)


もちろんドライでの直進安定性やグリップ性能、快適性を向上しつつの課題であったという。そして、高橋さんら開発陣が着目したのは“溝”、トレッドパターンの改良だった。

タイヤは溝が多いほどに排水性に優れる。タイヤの表面と路面との間に入り込んだ水を溝が掻き出してくれるからで、逆にサーキット専用のドライタイヤは「スリックタイヤ」と呼ばれ溝は一切ない。高橋さんは言う。

「溝の割合をセンター部では下げ、ショルダー部では上げました。結果的にブロック剛性がアップし、ウェット路面での制動距離が短くなりました。コーナリング時の排水性もアップしたのです」(高橋さん)


溝が増えたらタイヤの接地面積は減ってしまうのではだろうかと懸念されるが、ブリヂストンの独自技術「ULTIMAT EYE(アルティメット アイ)」を用いてタイヤ踏面挙動を計測・予測・可視化すると、接地面積は確実に増えており、ドライでの応答性がより良くなった。

ウェットでの摩擦係数もT31では従来比3%、A41では9%向上。T31やA41に見られる複雑なトレッドパターンは、最新テクノロジーが結集した賜物というわけだ。


「コンパウンドも見直しました。配合するシリカを分子レベルで改良し、ゴムの柔軟性を向上アップ。路面への食い込みが良くなり、低温時(ウェット時)のグリップ力も上がりました」(高橋さん)

ブリヂストンのバイク用タイヤには、以前からコンパウンドをトレッドセンター部とショルダーと分割して適材適所にする技術が使われてきたが、T31やA41ではリヤタイヤでのみ『3LC+CAP+BASE(スリー・レイヤーコンパウンド+キャップ&ベース)』というより複雑な構造が用いられた。

これはショルダー部上層部にはグリップに優れたコンパウンドを、下層部およびセンター部には安定性と耐摩耗性に優れたコンパウンドを配置するというもので、スポーツ性能と耐摩耗の両立を実現している。

そう、もうひとつ気になるのは耐摩耗性、ロングライフであるかどうかだが、T31とA41いずれも従来と同等とのこと。充分な摩耗ライフを引き継ぎながら、特にウェット性能を上げたというわけだ。

《青木タカオ》

モーターサイクルジャーナリスト 青木タカオ

バイク専門誌編集部員を経て、二輪ジャーナリストに転身。多くの専門誌への試乗インプレッション寄稿で得た経験をもとにした独自の視点とともに、ビギナーの目線に絶えず立ち返ってわかりやすく解説。休日にバイクを楽しむ等身大のライダーそのものの感覚が幅広く支持され、現在多数のバイク専門誌、一般総合誌、WEBメディアで執筆中。バイク関連著書もある。

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