三菱ふそう電動トラックはグローバルで150台売る…eキャンター試乗会

エコカー EV
eキャンター・テストコース試乗
eキャンター・テストコース試乗 全 17 枚 拡大写真

28日、三菱ふそうトラック・バス 喜連川研究所において電気小型トラック『eキャンター』のプレス向け試乗会が開催された。

2017年に、ヤマト運輸、セブン-イレブンが採用し、実際に業務での利用が始まっているeキャンターは、同社が2010年から研究開発を続けてきた100%電気モーターで走行する電動小型トラックの市販モデルだ。

名前が示す通り、三菱ふそうの小型トラック「キャンター」をベースにしたもので、外観などもEVアピールはほとんどない。見た目の違いは、エンブレムについて「e」の文字と、ヘッドライトを点灯すると青く光るフロントヘッドグリルくらいだ。

よく見ると、マフラーがない。通常、燃料タンクが設置されるフレーム側面がバッテリーセルになっている。給油口がなく充電口がある。といった違いで電動車ということがわかる。あとはエンジン音ではなくインバーターの高周波回路が発する音がまったく違う。

開発でこだわったのは「ディーゼル車との違いを極力意識させない」(喜連川研究所所長 安藤寛信氏)ことだそうだ。乗用車の場合、トヨタ『プリウス』や日産『リーフ』がそうであったように、新しいパワートレインを強調するため、車両は新規開発となり新モデルが追加される形で市場に投入されるが、eキャンターの見た目、コックピットなどは現行のディーゼルモデルから大きな変更はない。

たとえば、スピードメーターは従来型の針式である。バッテリーの残量系も燃料計と同じアナログメーターで、よくある電池アイコンのLED/LCD表示ではない。ひねるキーシリンダーはないが、欧州車では一般的な四角いインテリジェントキーをスロットに差し込んでスタートボタンを押す。排気ブレーキや補助ブレーキに相当するレバーが回生装置のスイッチになっている。

あえてEVアピールをしないのは、やはり運送業や中小企業ユーザーを考えて、特殊な性能や機能よりも使い慣れた操作性にこだわったためだ。安藤氏や担当者との話の中では、コスト的な戦略もあったようだ。今回三菱ふそうはグローバルな小型トラックの市場で、量産市販車両を最初に投入するメーカーになることにもこだわっている。それは、電動化の波は商用車にも確実にくるという読みの元、先行者メリットとポジションを確保するため(プリウスもリーフも量産世界初で成功している)だ。そして、確実に普及させるために、商用車こそ豪華な付加価値より価格メリットや競争力が重要と考えた。

eキャンターの主なスペックを見てみよう。積載量は最大3.5トン。車両総重量は7.5トンだ。ヤマト運輸やセブン-イレブンの配送用として、都市部の近距離輸送に特化させたため、最高速度は80km/h。航続距離は100km。モーターの最大出力は135kW。この数値はディーゼルエンジンの129kWより高出力ということになる。バッテリーは、ダイムラーグループとしてメルセデスベンツのPHEVに搭載されるセルを6個、フレーム内に収納する。容量は合計で82.8kWh。

eキャンターはすでに、日本、北米、イギリス、EU(ドイツ、ポルトガル、スペインなど)で業務で走行しており、電費は2km/kWh前後。うまく使えば3km/kWh台も達成できるようだ。ちなみに航続距離100kmは、冷凍カーゴに架装した車両で普通に走行で十分達成できる距離だという。セブンイレブンの配送車は、基本的に冷凍車で納品されており、運行管理の車両実データで1km/kWh台の後半を達成しているので、80kWhのバッテリーなら100km以上の走行は問題なさそうだ。

充電は、普通充電と急速充電に対応しており、急速充電なら1時間でバッテリー容量の80%まで回復可能だ。普通充電では8時間。よくEVのレビューで急速充電器が100%にならないと文句をいっている人がいるが、リチウムイオンバッテリーの場合、常にフル充電する必要はなく、とくに急速充電での100%充電はバッテリーの劣化を早めてしまう。そのため急速充電器はあえてフル充電しない設定になっている。

三菱ふそうは、eキャンターを日本、欧州、北米の3か所でそれぞれ50台ずつ、合計で150台を2018年度中に販売する予定だ。これは達成可能な目標(日本はヤマト運輸、セブンイレブンへの納車予定でほぼクリア可能)で、さらに引き合いがあった場合、追加生産するか、現在開発中で2020年市場投入予定の「eキャンター 2.0」のどちらかで対応するとしている。
eキャンターを運転してみると、実用域での問題はあまりないのではないかと感じ…

《中尾真二》

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