ミシュランTPMSクラウドサービス、2018年は300台を目標に…誰でも安心してトラック・バスを運行出来るように

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TPMSクラウドサービス
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日本ミシュランタイヤとソフトバンクは協業しIoTを活用したタイヤ管理システム、ミシュランTPMSクラウドサービスを6月より提供を開始する。2018年度は300台を目標に展開するという。

◇背景その1:人手不足感は輸送効率の悪化が原因

「現在運送業界は人手不足“感”が問題となっている」と冒頭切り出したのは日本ミシュランタイヤB2Bタイヤ事業部執行役員の高橋敬明氏だ。具体的には、「雇用人員判断指数を見ると宿泊飲食サービスについで運輸郵便は-43.3%と非常にシリアスな状況だ」という。

そこで、現状を検証すべくデータを収集したところ、輸送トン数は横ばい、ドライバー数もほぼ変わらなかった。ただし「年齢構成では若い人が減っているということがわかった」と述べる。そうした結果から、「輸送効率の悪化が、ドライバーが足りないという感覚を加速させているのではないか」という。「様々なネットショッピングで宅配の需要が大きくなり、即日配達など過剰なサービスが人手不足感を生み出す大きな背景になっているようだ」。また、「ドライバーの拘束時間をより少なくしよう、管理しようという流れが大きくあり、さらに過積載の取り締まりも強化されていることから、運送会社が置かれている状況は非常に厳しい」と現状を分析する。

では、この運送業界をリードする先進的な運送会社はどのような取り組みをしているのか。高橋氏は、「ドライバーが働き続けやすい環境を考えている」という。具体的には、明確な労働時間把握と安定した給与体系で、「全て荷主のいうことを聞いていると、なかなかドライバーの管理が出来ない。そこで優秀な運送会社は荷主と交渉をして過剰なサービスを避ける努力や、システムを導入して拘束時間の適正化を図っている」という。

またハード面では、「ドライバー負担を減らす車両の導入を進めている」。具体的には運転サポート機能の充実、ベテランや女性にも優しい運転サポート機能の充実、荷役作業軽減負担装置の充実(ウイングボディのパワーゲート、自動フロア等)がキーワードで、「なるべく作業をする人が楽なように運送会社は考えている」と話す。

しかし、結果として、「車両重量が重くなり、最大積載量が減り輸送効率が悪化するということが起きている」と高橋氏。そこでミシュランでは10年以上前から『X ONE』というダブルタイヤではなくシングルタイヤを提案している。

ミシュランX One
◇背景その2:ミシュランX ONEタイヤ訴求による不安感払拭

このX ONE提案に際し不安の声もあると高橋氏。その内容は、「シングルタイヤはダブルタイヤと違い一本しかないからパンクしたら動けない、スペアタイヤを積めないのはダメだというもの。この背景には、運送会社が最も重要視するのはパンクして動けなくなり荷物が遅れることだ。そこで、タイヤがトラブルフリーであり、またトラブルがあっても素早い対応が出来て正常運行に戻れ、延着なく荷物を運べるようになればいい」と要因を追求。

その対応として、まず、TPMS(タイヤプレッシャーモニタリングシステム)で、「これはドライバーがモニター上でタイヤの空気圧等を視覚的に管理出来るものだ。また、ミシュランレスキューネットワークとして、日本で1000か所以上のレスキュー拠点があるのでそこに加盟してもらっていた」という。

そして、今回のサービスは、「TPMSでドライバーが見るのはもちろん、空気圧の異常値をリアルタイムで検知してミシュランレスキューネットワークと運行管理者、あるいはタイヤ販売店がタイヤの状況と位置情報を即把握出来るというサービス」とし、これまでのいくつかのサービスを統合しながら、そこで補えなかった部分を、クラウドサービスを利用することで、より安心・安全なシステムを構築したことを語った。

◇ドライバー、運行管理者等の情報共有がポイント

ミシュランTPMSクラウドサービスのコンセプトは、「シンプルな情報で手頃な通信費用、高い信頼性を備えることで車両に不慣れな女性ドライバーや、新人ドライバーでも安心して運行が出来、万が一トラブルが発生したときでも運行管理者も情報を共有出来るというもの」とは、日本ミシュランタイヤB2B大谷事業部マーケティング部B2Bエンドユーザーマーケティングマネージャーの尾根山純一氏の弁。

この取り組みは「2016年から始め、ミシュランとTPMSで信頼性の高いオレンジジャパン、通信事業者のソフトバンクの三社の協業だ」という。

ポイントは、「運送会社がどの情報があればタイヤの空気圧を管理して安全に運行が出来るかということだ」と尾根山氏。まずタイヤの空気圧、温度がわかるTPMSで、「これが異常を感知したときに運転席の運転手だけではなく運行管理者にメールを配信することで、万が一ドライバーがTPMSのアラームが鳴っていることに気づかなくても、運行管理者にメールが行くことによって双方で情報共有が出来る」と安全面を強調。

もうひとつは、ミシュランレスキューネットワークとの連携で、これはトラックバスユーザー向けのタイヤトラブル時のレスキューを行うサービスだ。そして、簡易なシステムを採用。「複雑な情報をドライバーや運行管理者に与えるのではなく、温度、空気圧、位置情報を提供すれば万が一とタイヤトラブルがあっても簡単にわかるので、非常に簡単なシステムを目指した」という。

ADLINKジャパン製通信端末(GW) MXE 110i
◇シンプルな構成

構成パーツは、ミシュランタイヤを装着したトラックやバスなどの車両。ゲートウェイと呼ばれる携帯電話のような端末。それとオレンジ社製のTPMS装置の3つがあればミシュランTPMSクラウドサービスの提供が可能だ。

サービスの構成は、最長で10分に1回TPMSの情報(空気圧・温度・位置情報)をゲートウェイを通して常にIoTクラウドサービスのセンターと通信し、データを蓄積。万が一TPMS内で異常を感知したときには登録されている運行管理者等にメールを送信することが可能だ。その内容は何号車の空気圧、あるいはタイヤ内温度が既定値を超えるものに達したというもの。同時にこの情報がミシュランレスキューネットワークのコールセンターにも届く。またオプションとして、取引先のミシュランタイヤの販売店にも送られるという。

使用環境はiPadを推奨しているが、普通のパソコンでも見ることは可能。位置情報はグーグルマップによって把握出来る。

尾根山氏は、このシステム導入によってコスト削減にもつながるという。「たまにあるのだが1輪がパンクしパンク修理やミシュランレスキューネットワークに依頼をする。その後数キロ走ってまた別のタイヤがパンクしてしまうのだ。そうするとレスキュー費用が追加発生し高いお金を払わなければならない」。

これらの多くはスローパンクチャーによるものなので、「このサービスを導入すればタイヤの中の温度、空気圧が常に把握出来、もしかしたら自走でタイヤショップまで行ってタイヤ交換が出来るかもしれない。そうするとレスキュー費用は発生せずコスト削減につながる」と述べた。

TPMSクラウドサービスの画面イメージ
◇7つのターゲット

ターゲットユーザーは、「ミシュランX ONEユーザー、そして働きやすい環境を提供するドライバー負担軽減に積極的な事業者、デジタコ通信など通信費用をなるべく軽減したい事業者、装着タイヤが多いトレーラーなどを保有しているユーザー。既存のオレンジ社製のTPMSを使っているユーザー。レスキューを使う回数が多いユーザー。最後はレンタカー及びカーシェアリング事業者」の7つを挙げる。トレーラーに関して尾根山氏は、「ドライバー不足から多くの事業者がフルトレーラー化を進めているが、トレーラーで多いのはタイヤのパンクに気づかないまま走ってしまうことがあるからだ」と説明。また、レンタカー、カーシェアリングは、「クルマそのものはチェックしてもタイヤまで管理を行き届かないケースもある」と述べた。

価格は、X ONE装着大型車で、ゲートウェイとTPMSはセットとして通信費、消費税別で9200円/月を参考費用として算出。あくまでもクルマの種類によって値段は変わるとしている。

最後に尾根山氏は、「確実に荷物を時間通りに届けるというのは大命題だが、同時に従業員の環境を考えていくというのはこれからの時流だ。そこで我々が提案出来るのは、安全で経済的なタイヤを提供。しかし、タイヤは空気圧が適正に入っていなければ100%の性能を発揮出来ないので、ミシュランTPMSクラウドサービスを使うことによってタイヤも長持ちし、運送会社も安全に運行することが出来る」と語った。

《内田俊一》

内田俊一

内田俊一(うちだしゅんいち) 日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員 1966年生まれ。自動車関連のマーケティングリサーチ会社に18年間在籍し、先行開発、ユーザー調査に携わる。その後独立し、これまでの経験を活かしデザイン、マーケティング等の視点を中心に執筆。また、クラシックカーの分野も得意としている。保有車は車検切れのルノー25バカラとルノー10。

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