【ヤマハ NMAX 試乗】余裕の“+30cc”と剛性感ある乗り味が気持ちいい…佐川健太郎

モーターサイクル 新型車
ヤマハ NMAX155
ヤマハ NMAX155 全 16 枚 拡大写真

近年、その人気とともに存在感を増している原付2種スクーターの中で、並み居るライバルを超えるべくヤマハが投入してきた渾身の一打が『NMAX』(125)だった。アッパーモデルの『TMAX』を思わせるスポーティなフォルムやLEDヘッド&テールランプ、フル液晶多機能メーターなどで先進性を強調するなどラグジュアリー感を高めた作りが特徴だ。

また、エンジンも国内モデル初となる「BLUE CORE(ブルーコア)」の採用により、燃費と環境性能を高めたほか、アルミ鍛造ピストンや回転数で切り替わる可変バルブ機構(VVA)を採用するなど、上級スポーツモデル並みの最新スペックとクラス最強レベルのパフォーマンスを備えていた。

その優れたパッケージに155ccまで排気量を拡大した新型エンジンを搭載して登場したのが『NMAX155』である。125と共通の車体は150ccクラスではさらにコンパクトさが際立つ。あらためて前後から見ると、カウルやハンドル幅もしぼられていてスリムだ。前後を切り詰めて車体センターにマスを集中させたデザインは、同様のコンセプトを持ったMTシリーズにも共通するものを感じる。

エンジンは125よりひときわ鼓動感があって出足も俊敏だ。どちらかというとトルク型のエンジンで中間加速のノリも良く、それでいて125よりさらに高回転まで伸びていく。排気量にして30cc、パワー差にして3ps。そう大差ないように見えるが、やはりそこは明らかな違いがあって、特に上り坂など高負荷がかかったときの力強さに差が出る。155は高速道路に乗れるのも大きなメリットだが、それを躊躇せずにできるのもパワーに余裕があるためだ。

ハンドリングはフルサイズ250ccの『XMAX』などに比べるとさらに軽快でシャープ。これも125ベースであることの強みだろう。コンパクトな車体に強力なエンジンを積んでいるのだ。それでいて車体も負けていない。フレームを見たことがあるが、がっちり補強が入ったバックボーン構造で、ワダチの通過やハードなブレーキングでのヨレ感も一切なし。スクーターらしからぬ剛性感たっぷりのカチッとしたな乗り味が気持ちいい。

ホイールも最近のスクーターとしては小径な前後13インチということで、左右にロールしたときの向き変えが早くタイトターンも得意。混雑した都会の路地なども原1並みにキビキビと走り回る。それでいて頑丈なフレームとフロント110、リヤ130という同クラスしては極太のタイヤを採用しているため、コーナーへの倒し込みでも一定の手応えがあり、実際より大きなバイクに乗っているような安心感がある。ブレーキもダブルディスクにABS標準装備と安全面にも抜かりはない。

若干のマイナス要素となり得るのはサスペンションの硬さか。ダンパーが効いていてスポーティではあるのだが、その裏返しで長時間走ると疲れやすいかも。また、シート下の収納スペースが小さめでフロントポケットも開放式で電源ソケットも付かないなど、走りに寄った分、快適性や実用性をやや犠牲にしている点も見受けられる。まあ、これは割り切りと考えれば悪いことではない。収納スペースや跨りやすさなどを優先するのであれば、ヤマハの同クラスでは『マジェスティS』を選ぶという選択肢もある。

どんな使い方をしたいか、何を優先したいか…。最終的には好みで選べば間違いはないはずだ。


■5つ星評価
パワーソース:★★★★★
ハンドリング:★★★★★
扱いやすさ:★★★★
快適性:★★★★
オススメ度:★★★★★

佐川健太郎|モーターサイクルジャーナリスト
早稲田大学教育学部卒業後、出版・販促コンサルタント会社を経て独立。編集者を経て現在はジャーナリストとして2輪専門誌やWEBメディアで活躍する傍ら、「ライディングアカデミー東京」校長を務めるなど、セーフティライディングの普及にも注力。(株)モト・マニアックス代表。バイク動画ジャーナル『MOTOCOM』編集長。日本交通心理学会員。MFJ公認インストラクター。

《佐川健太郎》

佐川健太郎

早稲田大学教育学部卒業後、出版・販促コンサルタント会社を経て独立。編集者を経て現在はジャーナリストとして2輪専門誌やWEBメディアで活躍する傍ら、「ライディングアカデミー東京」校長を務めるなど、セーフティライディングの普及にも注力。メーカーやディーラーのアドバイザーも務める。(株)モト・マニアックス代表。「Yahoo!ニュース個人」オーサー。日本交通心理学会員。MFJ公認インストラクター。

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