【ハーレー アイアン1200 試乗】ネオレトロじゃない、これは70sレトロそのものだ…青木タカオ

モーターサイクル 新型車
ハーレーダビッドソン アイアン1200
ハーレーダビッドソン アイアン1200 全 18 枚 拡大写真

昨年、生誕60周年という節目を迎えたハーレーダビッドソンの超ロングセラーモデル「スポーツスター」。

1957年生まれの同い年にはあのホンダ・スーパーカブもいて、アメリカと日本、大排気量と小排気量、それぞれに違いはあるものの、昔ながらのフォルムを守りつつ少しずつ進化し、根強くファンに愛されていることは互いに共通している。

61年目となる今年、スーパーカブがフルモデルチェンジし、ますます元気ならスポーツスターも負けてはいない。最新2018年モデルとしてバリエーションモデルをまた増やした。『アイアン1200』と『フォーティーエイトスペシャル』だ。

ハーレーダビッドソンは東欧クロアチアにてジャーナリスト向け試乗会を開催。日本のディーラーにはまだデリバリーが始まっていない両モデルをいち早く乗ってきた。

じつはスポーツスター、これで全7モデルという大所帯となり、ハーレーダビッドソンのラインナップには欠かせぬシリーズ。空冷45度Vツイン、しかもOHV2バルブというトラディショナルなエンジンを頑なに守り、ライバル勢が、トラクションコントロールやエンジンマネージメントといった電子制御を搭載するなか、近代的な装備といえば世界基準で定められたABS、そして吸気系をフューエルインジェクション化したくらいなのだ。

なにもローテクと言って見下しているわけではないし、生きるシーラカンスと担ぎ上げようとしているわけでもない。実際、スポーツスターに乗ると「このままでいい。いや、このままがいい!」とハッキリ思うから、不思議な魅力で包まれている。クロアチアではそのあたりをじっくり考えつつ、走り込んでみた。

◆感じる風は70年代=レトロそのもの

まず最初にレポートをお届けしたいのは『アイアン1200』。実車を見て、目を惹くのは70年代風のタンクグラフィックスと高く迫り上がったアップハンドル。このスタイルは俗に言う“チョッパー”。映画『イージーライダー』(1970年日本公開)の影響で日本でも流行し、そしてカスタムシーンに定着したスタイルだ。

最近もカスタムスタイルが多様化し、他メーカーでも新車時からこうしたアップライトなハンドルを装着することもあるが、ハーレーでこれをやると本家ならではのカッコ良さがある。

スポーツスターはもともと英国車に対抗するために生まれた、その名のとおりスポーティ路線だからもっと大排気量のハーレーこそ本筋という意見もあるかもしれないが、チョッパーは細身であまり大きくない方が似合うから、現代のラインナップでやるならスポーツスターでこそピッタリはまるのだ。

クロアチアでの試乗ルートの序盤は、絵葉書のように美しいアドリア海に沿って走る海岸沿いの道。急斜面の眼下からはるか遠くまで真っ青な海が広がり、キラキラした水面を眺めつつ『アイアン1200』でノンビリ流すと、まるで夢心地。見た目では高すぎると感じたハンドルは、両腕を伸ばした自然な位置にグリップがあり、肩に力の入らないリラックスしたライディングポジションをつくって、ちょうどいい。

1200ccもの排気量のあるVツインエンジンは低速から扱いやすいトルクを発揮し、駆動輪がしっかり路面を捉えて蹴飛ばす感覚が心地良い。無意識なうちにアクセルの開閉を繰り返して、加速感を楽しみつつ走る。

◆夢中になってアクセルをグイグイ開けてしまう

複雑なリアス式海岸もクネクネの続く退屈しない道だったが、地中海にすぐ迫る山岳部へ登っていけば、あっという間にタイトコーナーが続くワインディングとなった。それまではチョッパースタイルを堪能しようと、エンジンを引っ張らずトコトコ走っていたが、コーナーの続くところでは『アイアン1200』は意外なほど身のこなしが軽く、ペースがどんどん上がっていく。

というのもフロント19、リア16インチに細身のタイヤを履く車体構成は、昔ながらのスポーツスターそのもので、ハンドリングはヒラヒラとクセがなく軽快。右に左へステップ裏のバンクセンサーが地面を擦っても、心に余裕を持ってまだまだ車体を深く寝かせていける。

これは前輪から滑るのではないかという不安感がないからで、リア荷重という昔ながらのオートバイだからこそのもの。もちろんコーナーの進入でブレーキングを終わらせるという基本は守らなければならず、フロントブレーキを引きずりながら車体を寝かし込むなんてことはしない方がいい。

スポーツスター、いやハーレーすべてに言えることだが、現代のスポーツバイクのようにフロント荷重で乗るなどやりたくてもできないし、設計段階からしてそれは違う。Vツインの不等間隔爆発が駆動輪の確実なトラクション性能を生み、だからこそトラコンなど電子制御は要らないし、ライダーは臆せずアクセルを開けることができ、エキサイティング、面白いと思えるのだ。

旧車然とした乗り味だが、それがスポーツスターの魅力であり、ハーレーダビッドソンが考えるスポーツライディングの在り方なんだと思う。3ケタのパワーがあるわけでもなく、レバー操作だけで後輪が浮く制動力もないが、その走りは現代でも充分すぎるほどに熱く、そしてスポーツライディングの楽しさに満ちあふれている。

冒頭で述べたとおり、スポーツスターはこのままがいい。新型なのに、熟成しきっている。そしてチョッパースタイルになっても、スポーツスターは熱い走りを忘れていなかった。


■5つ星評価
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★
コンフォート:★★★
足着き:★★★★★
オススメ度:★★★★★

青木タカオ|モーターサイクルジャーナリスト
バイク専門誌編集部員を経て、二輪ジャーナリストに転身。自らのモトクロスレース活動や、多くの専門誌への試乗インプレッション寄稿で得た経験をもとにした独自の視点とともに、ビギナーの目線に絶えず立ち返ってわかりやすく解説。休日にバイクを楽しむ等身大のライダーそのものの感覚が幅広く支持され、現在多数のバイク専門誌、一般総合誌、WEBメディアで執筆中。バイク関連著書もある。

《青木タカオ》

モーターサイクルジャーナリスト 青木タカオ

バイク専門誌編集部員を経て、二輪ジャーナリストに転身。多くの専門誌への試乗インプレッション寄稿で得た経験をもとにした独自の視点とともに、ビギナーの目線に絶えず立ち返ってわかりやすく解説。休日にバイクを楽しむ等身大のライダーそのものの感覚が幅広く支持され、現在多数のバイク専門誌、一般総合誌、WEBメディアで執筆中。バイク関連著書もある。

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