昨秋のミラノショーでアンベイルされ、いよいよ発売となったドゥカティ・スーパースポーツの最高峰モデル『パニガーレーV4』。ドゥカティジャパンは5月28日、日本での発売のタイミングに合わせて「Ducati Panigale V4 Media Workshop」を都内で開催した。
ドゥカティジャパンPR&マーケティング ダイレクター五条秀巳氏が、『パニガーレーV4』のデザインについて説明した。
◆デザイナーの狙い、想いは?
まず、デザインを担当したのは若干29歳、ドゥカティに入社してまだ6年目のシニア・デザイナー、ジュリアン・クレメン氏です。ドゥカティの場合、すべてのモデルにおいて社内コンペをおこなうのですが、最終的に勝ち残ったのが彼でした。
“Design Evolution”というコンセプトを掲げ、まったく新しいモノをつくるというよりかは、いままで連綿と続いてきたスーパーバイクのデザインをより“進化”させるという狙いがあります。
それからもうひとつ、MotoGPのテクノロジーを採用しているといえども、決してモトGPのレプリカバイクをつくるのではなくて、あくまでもドゥカティのレーシングバイクがどういうものなのかということを彼は考えました。
彼の最初のコンセプトスケッチを見ても、最初からひと目見てパニガーレー、ドゥカティのスーパーバイクだとわかるようなエッセンスが随所に盛り込まれています。
低く身構えたアグレシッブなフロントビューにこだわりを持っていまして、レーシングバイクをつくるということで、ライトをいかに見せないかというところに苦労しました。
具体的にはヘッドライトの位置をノーズの先端からかなり奥に入れることで、正面から見たときにライトがほとんど見えない構造としています。ただ、ヨーロッパ仕様はデイタイム・ランニングライトだけが薄く見えることによって、エアインテークがより強調されるのですが、日本仕様では法規上、右側のヘッドライトが常時点くこととなります。
◆レイヤー構造のフェアリングでよりコンパクトに
もうひとつ重要だったのは、コンパクトなフェアリングをつくるということです。V4エンジンになったことでエンジン幅が拡がっていますが、それをいかにコンパクトに見せるかが重要でした。まずフロントのYのラインは『916』からインスピレーションを受けています。
29歳の彼(ジュリアン氏)ですから、『916』がデビューしたとき(1994年)はまだまだ子どもで、『916』を初めて間近で見たときにはショッキングだったそうです。
このコンパクトなフェアリングをつくるために「デュアルレイヤー・フェアリング・コンセプト」とし、フェアリングを1枚で成型するのではなく、2枚に分かれたレイヤーで構成させることによって幅の拡がりを抑えています。
そして力強いショルダーラインも、コンパクトなフェアリングに貢献しました。タンクの前に電子関係のモノがすべて入っているのですが、そこまでを一体化させているのです。
フレームは『1199』や『1299』では隠されていましたが、あえて今回は見せるデザインとし、フレームそのものもフェアリングの一部としてしまうことがされています。
◆モトGP譲りのシート下タンクも赤く塗って美しく
また、「レーシング・フューエルタンク・レイアウト」によって、燃料タンクの前の部分に電装関係、バッテリーなどを収納し、16リットルの容量を稼ぎつつもモトGPレーサーのようにシート下にタンクを潜り込ませることでマスの集中化を図ることができました。
ドゥカティは美しいバイクをつくるということで、タンクの後ろを赤く塗装しています。結果として、横から見たときにシート下から赤いものがわずかに露出し、一連の流れを演出していているのです。
それから現車を見たらわかるとおり、非常に薄いテールカウルです。コンパクトでシャープなリヤまわりをつくるのにあたって、ウイングを使うことによって強度を増しています。
彼(ジュリアン氏)は日本の雑誌で、80~90年代のクルマが大きなウイングを付けている姿を見て、アイデアを思いついたそうです。強度も充分にあるコンパクトなテールまわりをつくり、空気が抜けていく空力にも貢献します。
◆『916』やTVゲームで感じた指針式回転計の利点
タコメーターは針が回るカタチになっていますが、これはサーキットを走るときに、バー状のモノよりエンジン回転数がどのくらいなのか直感的に感じやすいからです。これも彼(ジュリアン氏)が『916』を見てヒントを得たもので、好きなテレビゲームをするときもバー状のタコメーターよりも回転計の方が目にパッと入ってきてわかりやすいと彼は言っています。
また、伏せて走っているときに回転計を直視していなくてもいいように、針がレッドゾーン領域に近づくと、白い色がオレンジ、さらに赤へと変わり、感覚的にわかるようにしたのです。
■タッチしてもセクシー、それがパニガーレーV4
五条氏はさらに「ドゥカティは感触も大切していて、見た目だけでなく触ってみてセクシーであるかどうかも必ず議論しています」と教えてくれ、筆者に『パニガーレーV4』を触るよう進めてくれた。艶やかな外装は滑らかで、たしかに色っぽい。高性能であることはもちろん、こういった艶めかしく美しいバイクをつくれるのが、イタリアンメーカーの強みであると強く実感した。