【メルセデスベンツ Gクラス 試乗】快適さだけがクルマの面白さじゃない…齋藤聡

試乗記 輸入車
メルセデスベンツ Gクラス(G350d ヘリテイジエディション)
メルセデスベンツ Gクラス(G350d ヘリテイジエディション) 全 22 枚 拡大写真

ゲレンデヴァーゲン(というのがこのクルマの本名なのだ)は、いまや古き良きクルマの味わいを残す数少ないクルマの1台だ。なにしろ『Gクラス』がデビューしたのは1979年。1989年に1度大きめのマイナーチェンジを行ったものの、39年間基本レイアウトを変えることなく作り続けられてきたのだ。

これで古臭さがないほうが不思議なくらい。なぜここまで変わらなかったかといえば、それはこのクルマの出自がNATO軍に正式採用されている軍用車両であるということが大きな理由になっている。乗用車としての快適性操縦性はよりもラフロード、オフロードでの走破性の高さが求められるからだ。

フレームは、ラダーフレームにモノコックボディを組み合わせた独特なもので、ラダーフレームに前後リジッドアクスルサスペンションが取り付けられている。
いわゆる車軸式と呼ばれる非独立式サスペンションなので(悪路走破性抜群に良いが)直進性、操縦性のポテンシャルはそれほど高くない。

変わらぬ姿、昔懐かしいクロカン4×4

今回試乗したのは、現行モデルの「G350d ヘリテイジエディション」。3リットルディーゼルターボエンジンを搭載モデルに、39年の歴史の中で特に人気のあった外装色を採用した限定車。ちなみに試乗車の色はチャイナブルー。組み合わされるトランスミッションは7速ATで、駆動方式はセンターデフ式の4WD。駆動トルク配分は50対50だ。

見た目どおりのクロカン4×4で、最低地上高は235mm、最大傾斜角28度(横方向への傾き角)、アプローチアングル30度、ディパーチャーアングル29度、ブレークオーバーアアングル25度、登坂能力100%(45度)。高いシートによじ登るようにして乗り込んだ室内は、昔懐かしいクロカン4×4の面影を残している。特にダッシュボード回りの造形は昔さながらで、立ったAピラーに組み込まれた平面ガラスのフロントウィンドウが近く、奥行きが極端に短い。

センターコンソールこそ取って付けたようにモダンなスイッチパネルが配置されているが、パネル上方中央にはセンター、フロント、リヤデフの各デフロックスイッチがレイアウトされており、このクルマがヘビーデューティなクロカン4×4であることを主張している。オンロードよりもオフロード、快適性よりも走破性が求められる機能優先のクルマのはず…なのだが、実際に試乗してみるとびっくりするくらい運転し易く快適だ。

じつはラダーフレーム+モノコックボディの組み合わせは、フレームとボディの取り付け部にラバーブッシュを組み合わせるので、モノコックフレームより振動が伝達しにくく乗り心地がいいのだ。さすがに265/60R18サイズのタイヤ&ホイールの重さは、クルマの走りだしや段差を乗り越えたときに意識させられるが、それも不快というわけではない。

完成度の高さと底力を感じながら走る

走りやすいと感じる理由の一つはダンパーのフリクションが少なくバルブ精度の高いものが使われているからではないかと思う。直進時のハンドルのアソビが少なく、ハンドル操作に対して素直にクルマが応答してくれる。例えば高速でレーンチェンジした時も微妙なハンドル操作が効き、スムーズにクルマが車線を変えてくれる。横風の強いところでは、微小なハンドル操作でクルマが横に流されるのを抑え込むことができる。

一般的にはクロカン4×4は、微舵領域の操縦性が大雑把でアソビも大きめなのだが、それがじつに巧みに引き締められ、ドライバーの思いどおりに動く感覚が上手に作られている。39年間ただ作り続けてきたわけではなく、ちゃんと細部をバージョンアップしながら進化させてきたということなのだろう。先にポテンシャルは高くないと書いたが、完成度は高い。

エンジンの3リットルディーゼルは245ps/600Nmを発揮する。これだけのパワーとトルクがあると車両重量が2550kgあっても、十分に力強くかつ速い。重心が高く、足元がそれほどビシッと引き締まっているわけではないので、無暗にアクセルを踏んでスピードを出そうという気にはならないが、その気になれば…という速さは持っている。実際にはそんな底力を感じながら、1500回転くらいでユルユルと、力強さを感じながら走るのが楽しい。

最近はオンロード寄りで乗り心地や操縦性のいいSUVが主流になっているが、G350dに乗ると、快適さだけがクルマの面白さじゃない、というのを強く感じさせてくれる。もちろんこのGクラス、クロカン4×4の中にあっては、ものすごく上等で快適ではあるけれど。

■5つ星評価
パッケージング:★★★
インテリア居住性:★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★
楽しさ:★★★★★
おすすめ度:★★★★★

齋藤聡|モータージャーナリスト
特に自動車の運転に関する技術、操縦性に関する分析を得意とする。平たくいうと、クルマを運転することの面白さ、楽しさを多くの人に伝え、共有したいと考えている。そうした視点に立った試乗インプレッション等を雑誌及びWEB媒体に寄稿。クルマと路面との接点であるタイヤにも興味をもっており、タイヤに関する試乗レポートも得意。また、安全運転の啓蒙や普及の重要性を痛感し、各種セーフティドライビングスクールのインストラクターも行っている。

《斎藤聡》

斎藤聡

特に自動車の運転に関する技術、操縦性に関する分析を得意とする。平たくいうと、クルマを運転することの面白さ、楽しさを多くの人に伝え、共有したいと考えている。そうした視点に立った試乗インプレッション等を雑誌及びWEB媒体に寄稿。クルマと路面との接点であるタイヤにも興味をもっており、タイヤに関する試乗レポートも得意。また、安全運転の啓蒙や普及の重要性を痛感し、各種セーフティドライビングスクールのインストラクターも行っている。

+ 続きを読む

【注目の記事】[PR]

ピックアップ

アクセスランキング

  1. 「ホンモノのGT」が日常を小冒険に変える…マセラティの新型『グラントゥーリズモ』が誘う世界とはPR
  2. 『N-BOXカスタム』用パーツが一挙発売、ブリッツからエアクリーナーシリーズ4種類・5製品が発売
  3. 【トヨタ GRカローラ 新型試乗】「GRヤリス」とはスタンスが明確に違う理由…河村康彦
  4. ランボルギーニ、新型車を間もなく発表へ…電動『ウルス』の可能性も
  5. SHOEIが新型フルフェイスヘルメット『GT-エアーIII』にグラフィックモデル「DISCIPLINE」を設定
  6. アルピナ『B3』が2度目のフェイスリフトへ! リムジン&ツーリングをWスクープ
  7. [音響機材・チョイスの勘どころ]サブウーファー「小型・薄型モデル」の選択のキモは、“サイズ”と“音”と“価格”!
  8. ホンダの新型SUV『WR-V』、発売1か月で1万3000台を受注…月販計画の4倍超
  9. テスラ モデル 3、新グレード「パフォーマンス」を追加…最高速度262km/h
  10. レンジローバー最初のEV、プロトタイプの写真を公開
ランキングをもっと見る