BASFカラートレンド予測説明会…ブルーを中心に新しいイメージのグレーが心を動かす

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BASFカラートレンド予測説明会(2018)
BASFカラートレンド予測説明会(2018) 全 9 枚 拡大写真

BASFは毎年3~5年先の自動車のカラートレンドの予測を行っており、今回発表されたカラートレンドのテーマは「Keep it Real 現実にしよう!」であった。

BASFでは同社のカラーデザイナーたちが、毎年ファッションの変化や政治・経済の動向など世の中の動きがカラーにどのような影響を及ぼすかを分析。その結果に基づき、同社のクライアントである自動車メーカー各社に3年から5年先のカラートレンドというテーマで同社の塗料を紹介している。

◇最新のカラートレンドのキーワードはデジタルを取り入れた現実に

今年のテーマ、Keep it Realを意訳すると「現実にしよう、あるがままのぶれない自分でいようというイメージで、“現実”がキーワードだ」とは、BASFジャパンコーティングス事業部カラーデザインセンターアジア・パシフィックチーフデザイナーの松原千春さんの弁。昨年は“トランスルーシッド : Translucid(半透明)”というテーマで、「デジタルがどんどん進出し、バーチャルの世界と現実社会との狭間で揺れ動く、中間的なイメージがコンセプトだった」と振り返る。

そこから今年は、よりリアル、現実に近づいたイメージだ。具体的にはバーチャルな、デジタルな世界が我々の実生活の中にすでに浸透して来ており、例えばAIスピーカーなども実生活で使われ始め、スマートフォンもその先駆けといえるだろう。松原さんは、「我々がデジタルなどといちいち意識せず、生活の一部になり、融合して来ている。そこで、よりリアルな世界、現実世界に着目し、意識が変わっていくことをメインのテーマにした」と説明。

ひとつの傾向として、デジタル社会で新しく生まれたSNSによるダイレクトなコミュニケーションといったものも、「これまでのコミュニケーションの方法を変えただけではなく、我々の頭の中の考え方も変化させてきた」と松原さん。つまり、「バーチャルな世界で新しい概念や考え方、新しいコミュニケーションの仕方として生まれたものが、実生活にも影響を及ぼし、また生活に持ち込まれ、サービスなどにも融合して、バーチャルの中であったことが実生活に反映されて来ているのだ」という。

具体例を2つ挙げると、ひとつは近年アメリカでMe To活動が起きていることだ。これは、セクハラなどいままで我慢して来たものを、我慢せずに声を上げていこうというもので、過去、デジタルツールがなかった時代には、一人が声を上げても他の人たちは我慢しているなどで、同調することが起きにくかった。しかし、デジタル社会では、自分も共感を得て一緒に活動しようなど、人とのコミュニケーションの距離が近くなり、それがバーチャルの中だけではなく実際のデモに発展したりしていることがある。

またAmazonはインターネットショッピングで始まったが、現在はリアル店舗をアメリカにオープンさせ始めた。ネットで本を買うようになり書店の意義がなくなったといわれ、実際に低迷しているのだが、Amazonは、バーチャルショップでの良い面を、実店舗ならではのところと融合させるなどで、現実社会に進出してきている。

このように、「新しいデジタル社会で生まれた概念が、実生活の中にも投入され、それぞれの良いとこ取りをしたものも出てくるかもしれない。それが新しい傾向だ」という。

もうひとつの傾向として、「感情豊かな人間らしさを取り戻すことがある」と松原さん。これは、バーチャルな世界はスピードが速く、なるべく便利で簡単にクリックひとつで買い物が出来、何でも宅配ですぐに届くなど時間短縮や便利なものに価値を見出してきた。しかし、「どんどん簡単で、楽する方向に行くのが良しとするベクトルの反動で、より時間をかけて手間暇かけることの素晴らしさ、その過程すら楽しむといった方向に重きを置き始めた」という。それは宅配のお弁当から、手間暇かけて材料から選んで自分でいちから料理を作るという、「その経験に対する心の満足だ」と述べる。

今年は大きくこの2つの傾向が重要で、「楽しみながら、感情豊かに人間らしさを大切に生きていくとことへの共感が高まっている。つまりデジタルの世界を否定せず、上手く融合させながら現実の世界で満足出来るように、地に足をつけて生活していくということがテーマなのだ」と述べた。

◇ブルーは基本で、これまでにないグレーを提案

このテーマをもとに、キーカラーをグレーとブルーとされた。ここ3年くらいBASFとしてブルーグリーンやブルーをアピールしてきている。これは、「近未来の技術、明日の技術といったイメージと、明日の生活、近未来の生活といったところでクリーンでありながら身近に感じるテクノロジー、未来感のあるカラーといったところが継続しているからだ」と説明。

また、リージョン各地域から出ている色もブルーの範囲が広がっており、「グリーン味の入っているところからネイビーのベーシックなところ、それから強いイメージのあるブルー、未来感がより強く表現されるようなブルーなど様々なポジションのブルーが重要になってきている」と話す。

グレーに関して松原さんは、「グレーといったら昔からガンメタなど自動車では定番カラー。今更なぜグレーなのかと思うかもしれない」と笑う。しかし、今回提案するグレーは昔のガンメタのイメージだけではなく、「グレーをモダンで最先端なカラーとして表現し、生まれ変わったグレー、個性的なグレーといったものだ」と強調。

時代が大きく変わっていくいま、「グレーは大きな特徴や傾向を持っていない、すごく自由な色であることや、色そのもののキャラクター性も赤や青よりは少ない。現在質感や高いクオリティをエンドユーザーも求めているので、グレーだからこそ質感がすごく生きてくる」と述べる。鮮やかな赤であればそれだけでインパクトがあると感じてしまうが、グレーは色そのものとしては地味だ。そこで、「質感で味付けをしていくとすごく高級な表現も出来、あるいは個性的な表現も出来る。成熟してきた世界市場が様々な表現を求めることに対して、グレーが単なる灰色ではなく、多くの表現を実現出来るカラーとして注目を浴びるのだ」と語った。

◇グローバルの3つのてーはま各リージョンも共通

この大きなテーマをもとに、3つの方向性が示された。ひとつは“パブリック~皆で創っていく場~”で、デジタルツールの活用により、バーチャル上で生まれるコミュニケーションの活発化によって、デジタルとリアルの境界や、社会と個人の境界が薄らぎつつある。この傾向は街や駅、ホテルといった公共の場にも影響を与え、シェアオフィスなども出現。

そういった新しい概念の公共の場に合わせて、「新しいルールが生まれたり、生き生きとした新しい発想や活動も生まれたりするだろう。そういったところをイメージした」と松原さん。そして、「そこでは個人がどんどん参加して、みんなで作り上げていく場ではあるのだが、あくまでも公共の場でもあるので、冷静にルールを守っていくということでブルー系が多くなっている。また、自発的にどんどん活動出来ることから、赤いイメージのカラーや、公共の場としての快適さ、いかようにもにも使えるイメージをホワイトなどでも表現している」と説明。

次は“インナーランドスケープ~人間らしさを慈しむ~”というもので、「デジタル化によるスピードの速さを良しとする風潮に対して、人間らしさは大切だと、もとの自分に戻ってきたようなトレンドだ」という。

ここでのカラーは、「手間暇かけて作り込まれたようなクオリティが特徴。もうひとつ、心の共感や心の豊かさを表現するようなとてもデリケートなエフェクトや、中間の色域によるかなりデリケートで柔らかいイメージのカラーが中心になっている」と説明する。

最後は、“サイエンスラボ~新しいビジョンを描く~”というもの。一番テクノロジーが強いイメージで、「実生活にAIスピーカーや様々なサービスもデジタル技術が入ってきて、生活の一部となっている。実際に現金を使わなくても携帯や生体認証で払うなど実験的なショップが増え、また、自動車社会でも自動運転車がそのままショップになり、人はいないのだが買い物が出来るようになるのではないかなど、多くの期待とともに大丈夫なのかという不安が混ざり合っている。その辺りをカラーに落とし込んでいる」という。

ここでも各地域から、「グレー系とブルー系が多く、少し近未来を表現する自由な発想の色ということでキーカラーになっている」とした。

なお、過去BASFではこれまで述べたグローバルのトレンドとともに、各リージョン(アジア太平洋・中国、北米、欧州・中東・アフリカ)ごとのトレンドを発表していたが、今回は、「グローバルとローカルのトレンドがこれまで以上に近くなったことから設けていない」とし、上記3つのテーマごとでのリージョン別の傾向に留められた。その理由について松原さんは、「デジタル化という世界的な大きな潮流が、あまりに我々の生活や人間の気分に影響することが大きく、この大きな流れは世界のどこででも同じように始まっている。その全てのことが同じ原因に影響され。地域は違えど人間の気分としては同じ方向に向かいがちであるのだ」と分析し、ここでもデジタル化の影響が垣間見える結果となった。

《内田俊一》

内田俊一

内田俊一(うちだしゅんいち) 日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員 1966年生まれ。自動車関連のマーケティングリサーチ会社に18年間在籍し、先行開発、ユーザー調査に携わる。その後独立し、これまでの経験を活かしデザイン、マーケティング等の視点を中心に執筆。また、クラシックカーの分野も得意としている。保有車は車検切れのルノー25バカラとルノー10。

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