【スズキ アドレス125 試乗】大きくなってもやっぱり「通勤快速」だった…青木タカオ

モーターサイクル 新型車
スズキ アドレス125 フラットシート仕様
スズキ アドレス125 フラットシート仕様 全 24 枚 拡大写真

“通勤快速”と呼び声高い原2クラスの雄“スズキ・アドレス”だが、最新型『アドレス125』は車体が大柄となって、その名声に疑問符が付くようなことはないのだろうか。『アドレス125フラットシート仕様』に乗って、確かめてみた。

◆アドレスの歴史

そもそも「アドレス」は、50ccの小柄な車体(前後10インチ)をほぼそのままに、2ストローク100ccエンジンを積んだ『アドレスV100』からその歴史が始まっている。1991年に登場すると、その俊敏さとリーズナブルな価格から大ヒットし、2005年の生産終了まで14年間で累計21万台を販売した。

98年からは前後12インチ化した『アドレス110』も併売され、盤石の布陣に。しかし2000年代に入ると、排ガス規制によって小排気量クラスでも2ストモデルが姿を消していき、その波は原2スクーターにも。

03年にライバルのヤマハ“シグナス”が、4スト125ccエンジンを積んだ『シグナスX/SR』にバトンを渡すと、スズキも2年後の05年に4スト125cc化した『アドレスV125/G』をデビューさせる。

クラス初のインジェクション車という気合いの入れようで、これもまた小回りの利く小径10インチホイールと強力なエンジンの組み合わせでロングセラーに。09年にマイナーチェンジがあったものの「コンパクトで速い、しかも安い」というセールスポイントに陰りは見えなかった。

10年にはホンダ『PCX』が登場し、いよいよ原2クラスが激戦区に。スズキは外装を一新した『アドレスV125S』を発売して対抗。15年は『アドレス110』が12年ぶりに復活し、カタログ値50km/リットル超という低燃費を誇る「SEP(スズキ・エコ・パフォーマンス)」エンジンを搭載する。

そして、2017年9月に現行の『アドレス125』がデビュー。当然、エンジンはSEPで、ホイールはフロントのみ12インチ化され、前後ともにアルミ化。さらに18年3月30日には、ラゲッジスペースを容量アップした『アドレス125フラットシート仕様』が新発売されたのである。前後14インチの『アドレス110』もラインナップに残り、いま再びアドレスは125と110を2本立てとなっているのだ。

◆先代を凌ぐ加速性能

駆け足でアドレスの系譜を追ったが、現行の『アドレス125』は車体が大きく、見た目からすると、かつての切れ味鋭い通勤快速の走りを失っているのではないかと疑いたくなってしまう。

しかし、どうだ。こうして実際に街乗りしてもダッシュが鋭く、信号待ちで並んだ原2たちをリードしていくではないか!

効果的な混合気の渦(タンブル流)をつくるM型スキッシュの燃焼室を採用した新設計SEPエンジンの高性能と、実用速度域で力強くなるよう駆動系が設定されているからで、速度の伸びも申し分ない。車名から“V”がなくなった現行型も、やっぱりアドレスは通勤快速なのだ。

昨年9月にスズキが開いた報道関係者向け製品説明会では、テストコースで先代の『アドレスV125S』と並んで発進し、加速時の両車の差を比較した動画を見せてもらったが、アクセルを開けてからの出だしの良さが新型『アドレス125』の方が勝り、スロットルレスポンスの良さにより優れることを目の当たりにした。

動画では、発進すると数メートルで1車身ほど『アドレス125』がリードし、開発陣も「先代を凌ぐ加速性能」を強くアピールしていたことを思い出す。

そして、広々とした足もとのスペースに、ロング&ワイドなゆったりとしたシートで乗り心地がいい。振動も少なく、加減速時の車体も落ち着いている。小型スクーターで急ブレーキをかけると、フレームダウンチューブの剛性不足からハンドルが振られることもあるが、メインフレームが重量増を抑えつつ強化されているから、よれることがないのだ。

フロントフォークもこのクラスにしては大径と言える30mmのインナーチューブを採用することで、しっかりと踏ん張りが効き、速い速度のまま大きな段差を乗り上げても底付きすることがない。リアサスペンションも吸収性に優れ、しっとりとした乗り心地をもたらしている。

フラットシート仕様ではシート高が745→760mmに上がるが、足着き性は良好で、身長175cmの筆者にはその差はあまり関係ない。それよりシート下のトランク容量を、座面を上げた分だけ稼いでくれたことの方がありがたい。

◆飽きの来ない普遍的なデザイン、そして価格が魅力!

デザインについては、開発に携わったスズキ二輪事業本部カーライン長の福留武志さんによると、「長くつきあえる普遍的なものにしたかった」とし、「デザインとは目新しさを追求するだけでなく、心地良く調和がとれていることが重要」と話していた。たしかに驚くような斬新さはないが、これでいいと思えるスタイルだ。縦長に大きいフロントウインカーはクリアレンズが採用され、現代風と言えよう。

価格的にも高級化していくライバルたちを尻目に、灯火類をLED化せず電球のままにするなどしてコストを抑え、税抜き20万5000円、フラットシート仕様でも税抜き21万円という低価格を実現しているのも大きな魅力。最新型もまた広く支持され、ロングセラーになること間違いなしだろう。

■5つ星評価
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★
コンフォート:★★★★
足着き:★★★
オススメ度:★★★★★

青木タカオ|モーターサイクルジャーナリスト バイク専門誌編集部員を経て、二輪ジャーナリストに転身。自らのモトクロスレース活動や、多くの専門誌への試乗インプレッション寄稿で得た経験をもとにした独自の視点とともに、ビギナーの目線に絶えず立ち返ってわかりやすく解説。休日にバイクを楽しむ等身大のライダーそのものの感覚が幅広く支持され、現在多数のバイク専門誌、一般総合誌、WEBメディアで執筆中。バイク関連著書もある。

《青木タカオ》

モーターサイクルジャーナリスト 青木タカオ

バイク専門誌編集部員を経て、二輪ジャーナリストに転身。多くの専門誌への試乗インプレッション寄稿で得た経験をもとにした独自の視点とともに、ビギナーの目線に絶えず立ち返ってわかりやすく解説。休日にバイクを楽しむ等身大のライダーそのものの感覚が幅広く支持され、現在多数のバイク専門誌、一般総合誌、WEBメディアで執筆中。バイク関連著書もある。

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