【MaaSベンチャー】一括査定に代わる買い取りモデル…カープライス 代表取締役 林耕平氏[インタビュー]

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【MaaSベンチャー】一括査定に代わる買い取りモデル…カープライス 代表取締役 林耕平氏[インタビュー]
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従来のいわゆる“一括査定”は限界にきている、とカープライスの林耕平氏は言う。オークション形式のクルマ買い取りで、最大900社からの入札で高値買い取りを実現すると謳う「カープライス」は、一括査定の限界をどう乗り越えるのか。話を聞いた。

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在庫リスクを排してマージンを圧縮


---:カープライスはオークション形式のクルマ買い取りサービスとのことですが、他の買い取りサービスと比べてどのような特徴があるのでしょうか。

林氏:中古車の買い取りと言えば、買い替えと同時に下取りする形や、いわゆる買い取り専門店による買い取りですが、いずれにしても、買い取った車はその後、業者間オークションで手数料を払って売却するという流れになります。

その点カープライスは、買い取ってから売却するまでを私たち一社で引き受けるので、中間マージンがなく、消費者にとっては、オークションの落札価格に近い価格で車を売却できるチャンスがあります。

---:御社で売却しても手数料は必要なんですよね。

林氏:はい、それはそうなんですが、今までの流通で二社(買い取り業者、オークション業者)が取っていたマージンほどではありませんし、もうひとつ、私たちは無在庫モデルという特徴があります。

従来の流通だと、自分たちが在庫リスク込みで買い取って、オークションでなんとか売却したい、というリスクを抱えているので、それに見合ったマージンを取るために、安く買い取らないと破綻してしまうんですね。

その点カープライスというサービスは、インターネットオークションで、誰が、いくらで買うのかが決まってから買い取るので、基本的に在庫リスクがありません。よりマージンを圧縮することができるので、高く買い取ることができると考えています。

売買の手間を代行


---:高値をつけた業者を御社が紹介するという形ですか。

林氏:紹介というか、オークションというプラットフォームを使って(売り手と買い手を)マッチングして、売買の手間を代行するサービスです。車の輸送も、弊社の提携している輸送会社が売り手のご自宅にお伺いして、バイヤーに直送させていただきますよという流れです。

---:車の輸送も御社が手配するんですね。

林氏:そうですね。紹介というと、売り手と買い手が直接やり取りするというイメージですが、決してそうではなくて、売り手の方は、売る前も売った後も含めてカープライスとやり取りします。

---:では売り手からすると、対面するのは御社だけになりますか。

林氏:そうですね。それがメリットです。業者さんもいろんな方がいらっしゃるので、例えば輸出業者のパキスタン人の方が、いきなりユーザーさんに電話をかけてきても困るでしょうし、売買に関するビジネス交渉やクレーム等の処理も含めて、弊社がすべて引き受けます。

インターネットオークションとは


---:インターネットオークションとは、いわゆる業者間オークションの会場のような所でなく、オンラインのシステムを御社が持っていて、ウェブを通じてオークションをウォッチしているバイヤーがたくさんいて、オンラインで入札していくということでしょうか。

林氏:そうです。週5回オークションを開催しています。ウェブや、スマートフォンのアプリでも入札できます。オークションが始まる時間になると、入札用のウィジェットが出てきて、価格を入れていくようになっています。写真の枚数も、普通のオークションに比べて多くして、オンラインでも細かく確認できるようにしています。

---:写真は御社が手配して撮っているのですか。

林氏:弊社が契約している検査員の方々が全国にいて、例えば売り手が大阪の方でしたら、大阪にいる検査員をユーザーのご自宅に派遣して、撮影や検査をさせていただきます。

---:検査については御社の独自基準なんですか。

林氏:そうですね。オークション業者でもそれぞれ独自の検査基準があると思いますが、弊社もカープライスの検査基準を持っています。ただ業界でスタンダードなものがありますので、それに沿った検査方法を取っています。


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コストは成約手数料だけ


---:出品料や手数料はどれくらいかかるんですか。

林氏:通常のオークションですと出品料、成約手数料がかかりますし、陸送料もかかります。成約しなかったら、行きだけじゃなくて帰りの陸送も払わなければいけません。

その点弊社ですと、成約してから弊社の提携会社が陸送しますので、基本的に車は動かさなくて大丈夫ですし、出品手数料も無料です。成約したときだけ手数料1万円をいただきます。

バイヤーさんの方も、通常のオークションですと入会金や月間会員料を払わなければいけなくて、ハードルが高いと思いますが、弊社ですとバーチャルな仕組みで、会場のメンテナンスの費用もありませんので、基本的には無料で、成約したときだけ車両価格に応じた料金テーブルの手数料をお支払いただく形です。

---:具体的にはどのようなテーブルなのですか。

林氏:基本的には1万円から5万円の間で固定料があって、それに車両価格の2.5パーセントをかけた金額を手数料としていただいております。

売り切り価格を越えたら成約


---:売り手が落札額に不満があった場合はどうなりますか。

林氏:オークションに出品する前に、業界で言う“売り切り”という価格を設定して、その価格も越えたら売るという規約になっています。売り切り価格が相場とかけ離れた額だと売れないので、相場価格やお客様の車のコンディションに応じて価格レンジをご案内して、売り切り設定の参考にしていただいています。ただ、あくまでも決めるのは売り手さんご自身ですね。

もし残念ながら売り切りまで届かなかった場合は、どうするかは自由に決めていただける仕組みになっています。売り切りまで行かなかったけれど、「他の業者と比べてもいちばんいい値段だから売ります」というお客さんはいっぱいいますし、「だったら乗り続けるよ」という方もいます。

---:売り手は個人が多いんですか。

林氏:はい、個人です。サービスを立ち上げて2年くらいですので、全国でもっと認知を広めて出品台数を増やしていきたいと考えています。

手間をかけずに買い付け


---:売り手のメリットは理解できましたが、買い手はいかがでしょうか。

林氏:手数料のみで買い付けできることですね。最高値を入札し、かつ売り切りの価格を越えて成約したときに初めて課金されるという仕組みです。

---:入札には課金されないんですね。

林氏:されません。落札したときのみに課金されます。会員費などもかかりません。

---:そうすると買い取った場合のみ手数料を払えばいいので、買い手としてもリーズナブルですね。

林氏:そうですね。非常にハードルが低く参加できます。昨今、町の車屋さんも人手不足なので、そういう意味でも(インターネットで)欲しい車両に入札していただいて、成約した時だけ支払えばいいので、手間を掛けずに買い付けができるのではと思います。

一括査定の限界


---:買い取り業界は、いまはいわゆる一括査定の業者が主流になっていて、大手の競合もありますね。どのように対抗していこうと考えていますか。

林氏:そうですね。ここ数年は一括査定がメインだったんですけど、ただ、その弊害を感じ始めてる方が業界の中にも出てきています。

もちろんユーザーの方でも、(一括査定を)一度は試してみたけれど、ウェブページで情報を登録した途端に、自分の個人情報がいろんな業者に渡ってしまうのは、この個人情報保護の時代に即していないですし、電話が何本もかかってきて、査定をしてもらった後も、複数の担当者と個別に営業交渉しなくてはなりません。これはベストなユーザー体験とは言えません。

逆に業者サイドとしても、一括査定業者に登録したからといって、確実にお客様のアポイントにつながるわけではありませんし、(お客様に)電話をしても、他の業者がずっと電話していて、なかなか繋がらないという状況で、業者側としても非常に労力とコストがかかる方法なんですね。だから、一括査定はやりませんと言っている企業も出てきています。

そういうなかで、一括査定のデメリットを補えるようなモデルというものが必要とされているんじゃないかなと思います。

モビリティビジネスをスマートサービス化し、業界を変えようとするMaaSベンチャーの4人の経営者がその目論見を語ります。詳しくはこちら。

《Koichi Sato / Kazuya Miura》

日本自動車ジャーナリスト協会会員 佐藤耕一

自動車メディアの副編集長として活動したのち、IT企業にて自動車メーカー・サプライヤー向けのビジネス開発を経験し、のち独立。EV・電動車やCASE領域を中心に活動中。日本自動車ジャーナリスト協会会員

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