サマータイム導入時に交通事故が起きたらどうなるのか?【岩貞るみこの人道車医】

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サマータイム導入で問題視すべきは導入した当日の混乱ではないか(写真はイメージ)
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◆サマータイムと交通事故

2020東京オリンピックの暑さ対策で、いきなり盛り上がっているサマータイム問題である。そんなに暑さ対策をしたければ、7時スタートを5時スタートにすればいいだけじゃん。と、私などは思ってしまう。もうプログラムで時間が決まっているんだよ、というのなら、頭下げて、5時スタートにさせてくださいと交渉するのが、オリンピック委員会の仕事だろう。と、強気で書いてみる。

いまやなんでもかんでもコンピュータが管理する社会であり、サマータイム導入はIT業界を中心に、猛反対の嵐である。日本で稼働しているシステムをぜんぶ対応させようとしたら、いったいいくらかかるのか。いくらIT音痴でばかな私でもなんとなく想像はつく。いや、そのまえにシステムエンジニアがあちこちで倒れるんじゃないかと、そのほうが心配である。

サマータイムを導入したほうが、電力消費量が少ないとか、健康的な生活を送れるとか、いや、逆に健康に悪いとかいわれているけれど、問題視すべきは、どちらかというと、導入した当日の混乱ではないかと思うのだ。

人間はともかく、動物は感覚で生きているので、2時間も餌やり時間がずれたら、どうなるのだろう。特に秋になってもどすときは、昼食時間が2時間も遅れるわけで、水族館のイルカが「腹がへった。飯はまだか」と、反乱を起こさないか、乳牛のお乳の量に影響しないか心配である。いま、半分、勢いで書いているけれど、でも、あながち違うとも言えないような気がする。

サマータイムを開始するときは、どのようにするのか。イタリアでは、3月の最後の日曜日に始まって、10月最後の日曜日に、もとにもどる。3月最終日曜日の深夜2時になった瞬間、時計を3時にし、10月は、3時になる瞬間に2時にもどすわけである。イギリスは1時に行うようで、ただでさえイタリアとイギリスのあいだには1時間の時差があるというのに、この時間帯に起きていて、両国でやりとりをするような場合は、ほんとうにわけがわからなくなることだろう。

そう、「この時間帯に活動しているとき」が、一番、混乱するのだ。

◆何かを大きく変えるときに、最も考慮すべきは「弱者」

クルマは夜中だって走っている。そして、走行中にわざわざ止まって、クルマの時計や自分の腕時計やスマホの時計をサマータイムに合わせる人などいないだろう。高速道路のETCは、どうやって管理するのだろう。コンビニだってそうだ。2時間もいきなりなくなったり、2時間も突然、進んだりしたら、サンドイッチやおでんの賞味期限は、どうコントロールすればいいのだろう。

そして交通事故。今回の【サマータイムと交通事故】という小見出しを見て「2時間早く起きることになるので、居眠り運転に注意しましょう」的な記事を想像した人も多いかもしれないけれど、そうじゃない。

夜中のこの時間帯に交通事故に遭う。現場の警察官は、時間を管理しながら、事故対応ができるのだろうか。救急隊もそうだ。さらに、医療はどうなるだろう。救命救急センターに運ばれたあと、治療開始時刻は、重要なポイントである。初療室に運ばれた患者の状態がどう変化したのか、何時に輸血し、何時に昇圧剤を入れ、何時になにをしたのか、すべて看護師が記録をしていくけれど、それっていったいどうなるの? 医師たちは、自分の腕時計を直している時間なんてないはずだ。初期治療を終えてICUに運んだあとの、術後管理は間違えないでできるのだろうか。

救急患者だけではない。ICUにしろ一般病棟にしろ、薬を入れるタイミングは、どうするのか。サマータイムで2時間ずれたことを、日本にいる全員の医師、看護師が徹底できるのだろうか。ミスを引き起こすようなサマータイムを、北海道や沖縄もふくめて、すべての都道府県で導入させようとする意味がわからん。

「サマータイムになると飲みにいくときに、明るくていいですよね~」という健康な人は、どうでもいい。なにかを大きく変えるときに、一番、考慮しなければいけないのは、弱者だ。乳幼児。障がいや既往症のある人。そして、事故や病気で急性期、超急性期で命の危険にさらされている人。

私、サマータイム導入には絶対反対です。

岩貞るみこ|モータージャーナリスト/作家
イタリア在住経験があり、グローバルなユーザー視点から行政に対し積極的に発言を行っている。主にコンパクトカーを中心に取材するほか、最近は ノンフィクション作家として子供たちに命の尊さを伝える活動を行っている。レスポンスでは、アラフィー女性ユーザー視点でのインプレを執筆。コラム『岩貞るみこの人道車医』を連載中。

《岩貞るみこ》

岩貞るみこ

岩貞るみこ|モータージャーナリスト/作家 イタリア在住経験があり、グローバルなユーザー視点から行政に対し積極的に発言を行っている。レスポンスでは、女性ユーザーの本音で語るインプレを執筆するほか、コラム『岩貞るみこの人道車医』を連載中。著書に「ハチ公物語」「しっぽをなくしたイルカ」「命をつなげ!ドクターヘリ」ほか多数。最新刊は「法律がわかる!桃太郎こども裁判」(すべて講談社)。

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