【MaaSベンチャー】ドライバーをマッチングするニーズとは…ジャスタビ 三戸格 代表取締役社長[インタビュー]

自動車 ビジネス
株式会社ジャスタビの代表取締役社長、三戸格(さんど いたる)氏
株式会社ジャスタビの代表取締役社長、三戸格(さんど いたる)氏 全 3 枚 拡大写真

日本国内でも続々と誕生しているMaaSベンチャーのなかでも、クルマではなくドライバーをマッチングするという、他のベンチャーとはひと味違う発想で利用者を獲得しているサービスがある。

ローカルドライバーをマッチングするサービス「Justavi(ジャスタビ)」は、どのように利用者を獲得し、どのような成長をイメージしているのか。株式会社ジャスタビの代表取締役社長、三戸格(さんど いたる)氏に聞いた。

モビリティビジネスをスマートサービス化し、業界を変えようとするMaaSベンチャーの4人の経営者がその目論見を語ります。詳しくはこちら。

ローカルドライバーと旅行者をつなぐ


---:ジャスタビは、クルマではなくドライバーをマッチングするサービスということですね。

三戸氏:はい。ジャスタビは、ローカルドライバーを旅行者にマッチングするサービスです。利用者側で車両を用意いただき、そこにドライバーが同乗する形で運転を代わるという形になっています。

Justaviは、「Just+旅+navi」という造語になっており、旅行者の方に現地をナビしてあげ、最高の旅行を楽しんでほしいという意味を込めています。

---:サービスの使い方ですが、例えばこれから沖縄に行くという時に、ジャスタビのサイトでスケジュールを入れて検索すると、該当するドライバーが出てきて、その中から選んで予約、ということでしょうか。

三戸氏:はい、その通りです。地元の道をよく知っている方、地元のスポットをよく知っている方がたくさん登録されており、利用者は自分の好みのドライバーを探し、オファーをするという流れです。

---:具体的にどのような方が利用しているのでしょうか。

三戸氏:おもに運転が不安な方、それから運転免許証を持っていない方が多いです。そういった方々とドライバーをマッチングすることにより、自由なドライブ旅行が楽しめるということなんですね。

具体的には、例えば女性の方では女子大生やOLさんなど、普段あまりクルマを運転しない方や、それから訪日外国人観光客の方がいま非常に増えており、慣れない日本の交通ルールの中で運転が不安だという方、日本で有効な運転免許証を持っていない方が、自由に観光を楽しみたいということで利用するケースが多いです。

女性の一人旅も


---:女性や訪日外国人が多いとのことですが、実際の割合はどうなっているのでしょうか。

三戸氏:海外のお客様が6割から7割を占めており、残りの3~4割の国内客はほとんどが女性ユーザーになっています。

---:女性のグループが利用するのでしょうか。

三戸氏:グループもあれば、女性の一人旅もあります。あとファミリーでも、お父さんがお酒を楽しみたい、運転から解放されたいということで利用される方もいらっしゃいます。

---:女性の一人旅で使われるというのが意外なのですが、実際によくあるケースなのですか?

三戸氏:そうですね。割合で言うと1割程度だと思うのですが、利用する目的の半分は運転をお願いすること、もう半分は旅仲間という感覚で使っていただいているようです。

---:話し相手だったり、地元のことを聞いたり、食事に付き合ってもらったり、ということでしょうかね。

三戸氏:そうですね。現地の友人のような感覚でマッチングをしているケースですね。

---:そうすると、女性の利用者は女性ドライバーを選ぶことが多いのですか?

三戸氏:はい、女性は女性ドライバーを選ぶケースがほとんどです。男性も女性ドライバーを選ぶケースが多いんですけど、トラブルが起きないように、男性グループから女性ドライバーにオファーが来た時には、ドライバー側が断るケースもあります。

白タクではない法的根拠


---:クルマは利用者が手配するということですね。

三戸氏:はい。レンタカーを利用者側で手配していただくというスキームになっています。

---:ということは、御社は車両の手配にはノータッチで、利用者が自分でレンタカーを手配し、ドライバーをジャスタビのサービスで探す、ということになるのですね。

三戸氏:はい、そうです。車両の用意は、道路運送法との兼ね合いで、ジャスタビあるいはドライバー側で用意すると、いわゆる白タクと見なされてしまうんですね。ですので、あくまでお客様の車に同乗するという形を取っています。

---:つまりジャスタビが提供しているのはドライバーのマッチングだけなので、いわゆる白タク行為とは無関係であるという理解でよろしいでしょうか?

三戸氏:はい、その通りです。運転の委託契約という形になっており、運送事業には該当しないという行政解釈をいただいています。

H.I.S.の海外ネットワークで集客


---:訪日外国人の利用者が6割以上ということですが、どうやって外国人の顧客を獲得しているのですか?

三戸氏:当社はH.I.S.からの出資を受けている関係で、300拠点以上あるH.I.S.海外支店でプロモーションをかけていただき、誘客を図っています。

---:ドライバーも外国語に対応している方がいらっしゃるということですね。

三戸氏:はい。

---:具体的にはどのような方がドライバーとして登録されているのですか?

三戸氏:現在のところ、利用の8割方が沖縄なのですが、沖縄で観光ガイドをしている方が一番多いかと思います。あるいは、平日はほかの仕事があり、週末だけドライバーとして働きたいという方や、主婦の方でもドライバーとして働くケースがあります。

---:ドライバーさんの動機としては、収入を得るというところが一つあるということですよね。どれほどの収入が得られるのですか?

三戸氏:ドライバーの収入は、料金設定はドライバーの自己設定になっており、安い方だと最低賃金から、高い方だと1時間3000~4000円で、非常に幅が多いです。
プラットホームとしては、ユーザーの利用料金の20%が手数料になっており、残りの80%をドライバー報酬として収入源にしていただいています。

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自治体からの依頼も


---:利用エリアについては、いま沖縄での利用が8割とのことですが、ほかにはどのようなエリアで使えるのですか?

三戸氏:もともと沖縄で実証実験をスタートしたこともあって、沖縄が8割になっているのですが、その後、東京と北海道、そして福島でも試験的にスタートしています。

---:福島でもサービスを展開しているのですか。

三戸氏:はい、福島のケースは自治体からの受託でサービスを提供しています。福島県においては、主要な駅や空港から観光地までの交通導線がなかなか作れないことや、観光施設で言語対応が追いついていないという課題がありました。

そこで、ジャスタビの仕組みを使って、英語や中国語が話せるドライバーさんを手配し、観光のインフラの整備の一環としてやってほしいということで受託し、運営をしています。

---:ドライバーさんは運転をして観光地に行き、ガイド役もこなすことということですね。

三戸氏:そうですね。ジャスタビでは「ドライバーガイド」という呼び方をしており、移動だけでなくそこに人の付加価値を載せて、ガイドであったり、付き添いであったり、友人であったり、時に通訳であったり、外国人の方にマナーや作法などをレクチャーする役割であったり、そういったものを担っています。

自動運転時代のジャスタビ


---:MaaSという視点で見ると、ジャスタビの場合は、自動運転の時代が来ても、むしろ人がサービスを提供するという価値が高まりそうですね。

三戸氏:そうですね。ジャスタビとしては、移動の不便さを解決すると同時に、人の魅力をいかに付加価値に変えていくかという部分を考えています。

自動運転になり、人と話をしなくても観光できてしまうという時代がもしかしたら来るかもしれないのですが、そのような時代になった時こそ、人と話したい、現地の人と交流したいというニーズが高まるのではないかなとイメージしています。

手数料無料のビジネスモデルを目指す


---:ドライバーはどれほどの収入が得られるのですか?

三戸氏:はい。料金設定はドライバーの自己設定になっており、最低賃金レベルから、1時間3000~4000円と非常に幅が広いです。

そのうち利用料金の20%がマッチング手数料で、残りの80%をドライバー報酬として収入源にしていただいています。

---:御社のビジネスモデルとしては、利用料金の20%ということですね。今後は利用者を増やしていくというフェーズでしょうか。

三戸氏:そうですね。まずは手数料モデルで利用数を増やしつつ、将来的には手数料の無料化も見据えてやっていきたいなと思っています。

---:手数料を無料にすると、御社の収益はどこから得ることになるのでしょうか。

三戸氏:例えば広告モデルなど、利用者から直接収益を得る形ではないところに展開の余地があると思っています。

---:広告というのは例えば何でしょうか。案内している時に、とある土産物店に必ず寄る、といった話ですか?

三戸氏:はい、それに近いのですが、例えばワインセラーや日本酒の酒蔵のような所は、運転する人はアルコールを飲めないので、そういった方々をジャスタビのドライバーを使って誘客を図ることによって、お互いにメリットがある関係を作れると思うんですね。

あるいは地域の飲食店であったり、観光施設であったり、居酒屋などでも同じことが言えると思います。

---:そういう広告主がいくつか得られれば、そこから少しずつ御社側への送客手数料を得られるのではないかということですね。

三戸氏:そうですね。観光ではなく日常の利用シーンに置き換えても、スーパーやショッピングセンターに買い物に行ったり、病院や薬局に行ったり、いろいろなお店に行く利用シーンがあるので、関係する地域のお店や施設と連携し、より良いビジネスモデルを作っていきたいと思っています。

それが発展していけば、手数料の無料化だけではなく、理想的には利用料の無料化というところまでできれば、究極的なのかなと思っています。

モビリティビジネスをスマートサービス化し、業界を変えようとするMaaSベンチャーの4人の経営者がその目論見を語ります。詳しくはこちら。

《佐藤耕一》

日本自動車ジャーナリスト協会会員 佐藤耕一

自動車メディアの副編集長として活動したのち、IT企業にて自動車メーカー・サプライヤー向けのビジネス開発を経験し、のち独立。EV・電動車やCASE領域を中心に活動中。日本自動車ジャーナリスト協会会員

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