タイで開催されたMoto GPの決勝日(7日)、タイ国政府観光庁のユッタサック・スパソーン総裁にインタビューした。もしかしたら近い将来、タイの寺院をバックにフォーミュラカーが走り抜ける姿を見ることができるかも知れない。……
モータースポーツとサッカーで貧困から脱する
---:このチャーン・インターナショナルサーキットのあるブリーラムはどのような地域なのでしょうか?
スパソーン総裁:タイの東北部は降雨量も少ないために農作物もあまりできず、貧しい地域のひとつだったのですが、近年はスポーツなどの振興によって少しずつ貧困から脱しようとしています。とくに力を入れているのが、モータースポーツとサッカーです。
サッカーはブリーラム・ユナイテッドFCというクラブチームが世界的にも知られています。東北部はこうしたスポーツが観光の起爆剤となって、観光客を呼び込むとともに、さまざまな体験などを通してタイの良さを知っていただければと思います。
今回も政府観光庁としてブースを出展し、キャンドルクラフトや藍染め体験、織物のモンストレーションなどを行い、東北部のよさを感じていただけるようにしています。
タイ国政府観光庁「モータースポーツで地域振興」…バンコク市内でF1?[インタビュー]
---:今回はどのようなことに力を注がれましたか? また今後の課題は?
スパソーン総裁:SUPER GTでもさまざまなブースを出していたのですが、今回はムエタイの試合や、アイドルのコンサートなども行います。来年はさまざまなタイフードを体験できるようなコーナーも展開して、外国人旅行者の方にもっともっと楽しんでいただけるようにしていきたいと思っています。
また、まだまだ宿泊施設なども足りないので、ホテルの建設やB&Bの充実なども考えていきたいと思っています。
F1レースをバンコク市内で開催したい
---:チャーン・インターナショナルサーキットはグレード1Tのサーキットで、F1のテストも可能ですが、さらにグレードを向上してF1公式戦開催も視野にあるのでしょうか?
スパソーン総裁:F1についてはバンコク市内でのレース開催が望ましいと思っています。フォーミュラEも公道レースが基本ということなので、やはりバンコク市内でレースができたらいいですね。
……東南アジアのデトロイトとまで呼ばれるほど自動車産業が盛んなタイでは、スパソーン総裁の話は完全に夢物語とは思えない。
タイで初開催のMotoGPは大成功
タイのブリーラム県にあるチャーン・インターナショナルサーキットで10月5~7日、オートバイの世界選手権となるMoto GPが開催された。
タイ初の国際格式を有するレーシングコースであるチャーン・インターナショナルサーキットは、日本のSUPER GTが開催されていることでも知られるが、今までグランプリクラスの世界選手権が開催されたことはなかった。今回のMoto GPがグランプリ初開催ということになる。
MotoGP(チャーン・インターナショナルサーキット)
私がサーキットに到着したのは予選日となる土曜日であった。サーキット周辺には警察をはじめ、軍とおぼしき制服を着た人員が警備にあたり車両検問なども行っていたが、大した混乱は起きていない。初めての大レースという感じは受けない。混雑はしているが、クラクションが鳴り響くわけでもなければ、日本のサーキットのように完全に停止してしまうような渋滞もない。この様子は日曜の決勝日になっても変わらなかった。みんなが折り合いを付けて混乱しないようにしているのである。
チャーン・インターナショナルサーキットは比較的短いコース長で、4.6kmと富士スピードウェイと同等の長さだ。SUPER GTのラップタイムを見てもほぼ同じだが、見た目は富士よりはまとまった感じを受ける。高低差があまりないコースだからかも知れない。
MotoGP(チャーン・インターナショナルサーキット)
Moto GPクラスの決勝レースは26周で行われた。スタートから上位陣のバトルは激しく、何度もトップが入れ替わるレース展開。白熱したデッドヒートが特徴のMotoGP、観客はおそらく初めて見るであろう生のGPレースに大興奮であった。レースを制したのは、ポールポジションからスタートしたホンダのマイク・マルケス。マルケスはポイントリーダーの座を守ったまま、10月19日から日本のツインリンクもてぎで開催されるレースに臨む。
3日間のレースで集まった観客は22万人強。タイでの初開催となったMoto GPは成功裏に終わった。