【Can-Am ライカー 試乗】オンオフ問わず爆走!新感覚マシンは“四輪免許”でOK…青木タカオ

Can-Am Ryker Rally Edition
Can-Am Ryker Rally Edition全 27 枚

四輪バギーのような安定感とダイナミックさ、オフロードバイクのようなライディングする楽しさが共存している。ぬおぉ~、こんな遊び感覚があったのか! 興奮せずにはいられない。

フロント2輪、リア1輪の『Can-Am Ryker(カンナム ライカー)』だ。10月下旬に発表されたばかりのニューモデルで、日本には2019年春に上陸予定だが、アメリカ・ロサンゼルスで開かれたメディア向け試乗会にて、いち早く乗ってきた。

搭載するエンジンはロータックス製の900cc直列3気筒と600cc2気筒の設定で、900ccモデルには「Rally Edition(ラリーエディション)」もラインナップされ、なんとトライクでオフロードライディングが楽しめてしまうから度肝を抜かされた。

それも恐る恐る走れるといった程度ではなく、汗をかくほどアグレシッブにスポーティなライディングが楽しめてしまう。日本にはあまり馴染みがないものの北米や欧州、豪州などでカンナムのATV(四輪バギー)は高いシェア率を誇り、レーシングシーンでも大活躍する。そのテクノロジーがライカーにもフィードバックされ、高いオフロード性能を実現しているのだ。

Can-Am Ryker Rally EditionCan-Am Ryker Rally Edition

オートマだから簡単に乗れる

取り乱したことをお詫びしよう、冷静になって順を追って説明していく。まずライカーは、カナダBRP社のCan-Amがリリースする公道向けモデルの第2弾。第1弾は2007年に発表した『Can-Am Spyder(カンナム スパイダー)』で、前2輪のトライクでのスポーツライディングを提案し、世界中のクルマ好き&バイクファンを驚かせた。日本では14年から販売をスタート。来春、ライカーが上陸すれば、カンナムはスパイダーと2本立てになり、ラインナップが充実する。

BRP社は「ボンバルディア」の名を出せばピンと来る人も少なくないだろう、鉄道や民間航空機の世界的大企業だが、そのレジャー用製品部門が独立したカンパニー。スノーモビルや水上バイク、ATVなどを手がけ、世界的に高いシェアを誇る。

新登場のライカーは、1330ccエンジンを積むスパイダーより手軽で扱いやすいモデルとして新開発された。スパイダーのトランスミッションは6速セミオートマかマニュアル式だったが、ライカーではオートマ化。乾燥重量は280kg(ラリーエディション285kg)で、ロードスポーツの『スパイダーF3』では408kg、ツアラーの『スパイダーRTリミテッド』が459kgなので、大幅な軽量化を果たしたスポーツモデルであることがわかる。

Can-Am Ryker Rally EditionCan-Am Ryker Rally Edition

ストリートで熱い視線、間違いなし

そのスタイリングは、まるでSFアニメに登場する近未来の乗り物だ。開放感あふれるカリフォルニアによく似合うが、日本で乗ればストリートで視線を独り占めすること間違いなしだろう。一歩先行くデザインで、シートに跨れば非日常の世界へすぐに導いてくれる。ロサンジェルス近郊を2日間たっぷり乗り込んだが、クルマや歩行者の視線を感じ、絶えず程良い緊張感を伴ってのライディングであったことも報告しておく。

ライディングポジションを自在に調整できるのは画期的だ。ハンドルもフットペグも、工具を使うことなく即座に前後へ移動させることができ、乗り手の体格を問わない。両足を前方へ投げ出してリラックスできるクルージング姿勢、ステップを手前に引いてスポーティなポジション、気分や好みによってコロコロ変えて楽しんでもいい。

純正アクセサリーが多彩に用意され、色の違う外装パネルに交換したり、パッセンジャーシートやバックレスト、ウインドスクリーンを追加装備するといったカスタムも楽しめ、自分だけの1台をつくりあげる歓びもライカーの魅力となっている。自分の個性を演出する相棒として選び、ストリートに駆け出す。来春には、そんな若者が日本の都会でも見られるかもしれない。

Can-Am Ryker Rally EditionCan-Am Ryker Rally Edition

グイグイ曲がってワインディングもエキサイティング

「パシフィック・コースト・ハイウェイ」は、美しい海岸沿いを走る有名なドライブルート。時速55マイル(約88km/h)の制限速度でゆったり流していると、カリフォルニアならではの強い日射しと潮風が心地良く、いつまでもシーサイドを走っていたくなるが、右折して山側へぐんぐん駆け上がっていく。テストライドに案内されたのは、ロサンジェルスの走り屋たちが集まる「マルホランド・ハイウェイ」。50マイルもの長い区間、つづら折れが続くワインディングだ。

ここでライカーが真価を発揮する。コーナーを軽快に駆け抜けていけるのだ。コーナーの出口へ視線を向け、下半身でマシンホールドするなど、旋回時の操作はモーターサイクルに近いが、車体は傾かないから2輪車特有のセルフステアはない。車体の向きを変えるには、バーハンドルを切ってフロント2輪を曲がりたい方向に向かせるしかなく、段差などで衝撃を受けたときは腕力で堪える必要がある。

コーナリング中はイン寄りのグリップを引くか、アウト側を押し出すようハンドルに力を加えるが、アクセルを開けるタイミングやハンドルの切れ角、シートへの荷重がバランス良く決まると腕力は少なく済みスムーズな旋回ができる。マシンコントロールは奥深く、病みつきになる面白さがあり、とてもエキサイティングだ。

マルホランド・ハイウェイの途中には、ライダーたちが集まるカフェ「Rock Store」があり、そこでしばし休憩。『RYKER(ライカー)』という車名はライダーとバイカーを合わせた造語で、マインドはやはりバイク乗り。それが通じたのか、パーキングスペースに停めると、ライダーたちが集まって写真を撮ったり質問攻め。アメリカ西海岸を代表するバイク乗りたちの聖地でも、ライカーは大注目というわけだ。

Can-Am Ryker Rally EditionCan-Am Ryker Rally Edition

まさかのオフロードも病みつきの楽しさ

ラリーエディションはハンドガードやスキッドプレートを追加装備し、よりストローク量の長いKYB製サスペンションや強化ホイールを採用。エンジンモードもスタンダードでは「エコ」と「スポーツ」を選べたが、トラクションコントロールの介入が少ない「ラリーモード」も設定可能としている。

ダートエリアに入っていくと、サスペンションが衝撃をしっかり吸収し、底付きする気配を見せない。もっと激しく走ってみようとアクセルを大きく開けると、カーブではリアを流し、簡単にカウンターステアを当ててコーナリングできるから思わず顔がにやけてしまう。

ハンドルを操り、アクセルワークでダートライディングを楽しむフィーリングはモーターサイクルそのものだが、フロントからスリップして転倒という不安はまったくないから、オフロードライディングがイージーで、リスクが少なくて済む。これは新感覚の遊びだ。

Rock Store前を走るRock Store前を走る

免許は「四輪AT限定」でOK

免許は2輪用ではなく、クルマのAT限定免許でOKだから、より多くの人にとって身近な存在となるだろう。車庫証明は不要で、税金や保険、高速道路の通行料金は2輪車扱いだから、経済性に優れるのも利点と言える。

また、2輪では足着き性や押し引きが不安という人にもオススメしたい。停止時も自立するから足はステップに置いたままでいいし、リバースギヤを搭載するから後進も楽々。バイク未経験者はもちろん、ベテランライダーの次なる愛車としても最適だろう。

そしてモーターサイクルのように五感を刺激し、オンロードもオフロードもシーンを問わずスポーティなライディングが味わえ、存在感も強烈そのもの。ライカーはかなり欲張りな1台だ。今回、カリフォルニアでは900ccモデルにのみ乗ったが、よりリーズナブルな価格で発売される600ccモデル(価格未定)にも期待したい。日本でまたライカーに乗れる日を楽しみにしている。

■5つ星評価
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★
コンフォート:★★★
スタイル:★★★★
オススメ度:★★★★

青木タカオ|モーターサイクルジャーナリスト
バイク専門誌編集部員を経て、二輪ジャーナリストに転身。自らのモトクロスレース活動や、多くの専門誌への試乗インプレッション寄稿で得た経験をもとにした独自の視点とともに、ビギナーの目線に絶えず立ち返ってわかりやすく解説。休日にバイクを楽しむ等身大のライダーそのものの感覚が幅広く支持され、現在多数のバイク専門誌、一般総合誌、WEBメディアで執筆中。バイク関連著書もある。

《青木タカオ》

モーターサイクルジャーナリスト 青木タカオ

バイク専門誌編集部員を経て、二輪ジャーナリストに転身。多くの専門誌への試乗インプレッション寄稿で得た経験をもとにした独自の視点とともに、ビギナーの目線に絶えず立ち返ってわかりやすく解説。休日にバイクを楽しむ等身大のライダーそのものの感覚が幅広く支持され、現在多数のバイク専門誌、一般総合誌、WEBメディアで執筆中。バイク関連著書もある。

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