【ボルボ XC40 試乗】ロングドライブを試してみたくなるSUV…井元康一郎

ボルボ XC40 T4 AWD MOMENTUM
ボルボ XC40 T4 AWD MOMENTUM全 25 枚

ボルボのプレミアムCセグメント相当SUV『XC40』の出荷がようやく軌道に乗ってきたとのこと。スポーティグレード「T5 R-DESIGN」以外のグレードを2つ、短時間テストドライブする機会があった。合計2時間ほど、高速道路を主体にドライブするという限定的な試乗であったが、その範囲でファーストインプレッションをお届けする。

テストドライブしたのはカジュアルプレミアム風味の「T4 AWD MOMENTUM(モメンタム)」、および本革シート、プレミアムオーディオなどが標準で備わる高級志向の「T4 AWD INSCRIPTION(インスクリプション)」の2台。

先だってファーストインプレッションをお届けしたR-DESIGNのT5エンジンが185kW(252ps)/350Nm(35.7kgm)であったのに対し、今回のT4エンジンは140kW(190ps)/300Nm(30.6kgm)というスペック。駆動方式はすべてAWD(4×4)で、FWDはいまだ未試乗である。試乗エリアは神奈川の臨海地区で、高速道路が主体。1名乗車、天候は快晴。気温は30度前後。

フラット感が高い走行フィール

タイヤはピレリ「P-ZERO」タイヤはピレリ「P-ZERO」
まずは走行フィール。テストドライブルートの大半が路面の良い高速道路であったため、あれこれと試せたわけではないが、少なくともハイウェイクルーズに関してはプレミアムセグメントの顧客を十分に満足させる水準にあるように思われた。

足回りはソフトなのだが、車体にローリング、ピッチング、バンピングなどが発生したときの揺り戻しを少ないバウンド回数で止めるセッティングは秀逸で、フラット感はとても高い。試乗車は両グレードともブロンドという白色系のインテリアとグラストップを持っていたが、その明るく、光の差し込みも豊かな室内とあいまって、リラクゼーション感の高さがいかにもボルボという感じであった。

一方、路面の細かい不整を油圧感たっぷりのショックアブゾーバーやラバーでなめすように吸収する精緻なフィールという点では、以前にテストドライブした20インチホイール装着の「T5 R-DESIGN ファーストエディション」に劣る。もっともこれは、上位の『XC60』を完全に食うほどであったR-DESIGNのほうが良すぎたとも言える。

カタログモデルの19インチ版R-DESIGNは未試乗だが、セッティングがファーストエディションと同じだとすると、固い、柔らかいではなく本質的に高級な足を求めるカスタマーはR-DESIGNをチョイスするのがいいと思われた。

モメンタムとインスクリプションの違いは

XC40 T4 AWD INSCRIPTION。レザーインテリアは高級感があった。XC40 T4 AWD INSCRIPTION。レザーインテリアは高級感があった。
ちなみに走行感、快適性、静粛性については、モメンタムとインスクリプションは同一であるように感じられた。プレミアム、ノンプレミアムを問わず、クルマという商品は上位グレードのほうが遮音が徹底されていたり乗り心地が良かったりと差別化しているケースが多いが、XC40の場合は純粋に内外装の意匠や装備の違いのみでグレード分けがなされているようだった。

インスクリプションのほうにはハーマンカードンオーディオが標準装備。試聴してみたところ、とくに低域方向に伸びやかな周波数特性を持っているようで、ジャズ、ニューエイジなどとの相性がとくに良いようだった。XC60以上にオプション設定されているB&Wサウンドシステムに比べると中高音の情報量と繊細さ、音場感などで負けるが、それでもプレミアムクラスのクルマのオーディオとして十分以上にハイファイだと思われた。

ロングドライブを試してみたくなる

ボルボ XC40 T4 AWD INSCRIPTIONボルボ XC40 T4 AWD INSCRIPTION
今回試乗したモデルはいずれもT4エンジン。T5との性能差がどのくらいあるかは関心事のひとつだったが、実際に乗ってみるとその差は結構大きかった。とくに登り勾配のついた高速道路の流入路では、T5がSUVの重い車体を一気に高速域に持っていくようなエネルギー感を持っていたのに対し、T4は普通。プレミアムセグメントとしての過剰性を求めるならT5を選んだほうが満足度は高そうだが、日本の速度レンジではT4でも十分以上の速力を発揮できるだろう。

オンボードコンピュータの燃費計値はモメンタム、インスクリプションとも14km/リットル台半ばであった。

運転支援システム「パイロットアシスト」は素晴らしい働きをした。車線認識はラインがかすれ気味のところも含めてほとんど失探がなく、車線を見る最遠距離を長く取ったり、風景を見て車線を推測するような技術が盛り込まれているのではないかと推察された。能力的にはEセグメントの『V90』とほとんど同一であろう。

システムの運転も上手く、車線変更時にステアリングの切り戻しが十分でない状態を作ってやっても、その先の車線を踏みそうになってからアラートを鳴らして針路を急に修正するのではなく、ドライバーが微小舵角で針路を修正するような柔らかさで自然に針路を保つように作られていた。

今回のテストドライブでわかったのはこのくらい。機会をみてロングドライブでさらにツーリングフィールを試してみたくなるようなSUVであった。
外装色の調色はシックだった。外装色の調色はシックだった。

■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア居住性:★★★★★
パワーソース:★★★
フットワーク:★★★ 
おすすめ度:★★★★

《井元康一郎》

井元康一郎

井元康一郎 鹿児島出身。大学卒業後、パイプオルガン奏者、高校教員、娯楽誌記者、経済誌記者などを経て独立。自動車、宇宙航空、電機、化学、映画、音楽、楽器などをフィールドに、取材・執筆活動を行っている。 著書に『プリウスvsインサイト』(小学館)、『レクサス─トヨタは世界的ブランドを打ち出せるのか』(プレジデント社)がある。

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