【MaaS】日本にマッチしたMaaSプラットフォームを構築する…MaaS Tech Japan 日高 代表取締役[インタビュー]

MaaS Tech Japan日高洋祐氏
MaaS Tech Japan日高洋祐氏全 2 枚

日本ではでMaaSというとクルマのサービス化(ライドシェア)というイメージが先行しているが、これらはあくまで、MaaSの一部である。自動車産業はマーケットが巨大で、車両の製造・販売というビジネスモデルの変革という視点で、新しいプレーヤーへの危機感からMaaSを語ることが多いため、このような誤解が生まれている。自動車産業におけるMaaSの影響も非常に重要ながら、MaaSにはより広くビジネスチャンスもモビリティサービスの変革もありえる。

このように語るのは、2018年11月に株式会社MaaS Tech Japanを立ち上げた日高洋祐氏だ。日高氏は、鉄道会社における輸送オペレーションやモビリティ戦略策定等の民間事業としての顔だけでなく、東京大学生産技術研究所で博士課程に通いながら日本版MaaSモデルの社会実装に向けてモビリティサービスや交通政策論の研究にも携わった経験を持つ。

研究の中で、各国の事例も見てきた日高氏に、MaaSとは、MaaS市場と日本の動向、さらに課題などを聞いた。

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MaaS Tech Japan日高洋祐氏MaaS Tech Japan日高洋祐氏

●多数の交通手段を統合するプラットフォーム

---:そもそもの基本的な質問となってしまいますが、MaaSとは何でしょうか。どのように定義できますか。

日高氏(以下同):ひとことでいえば、多様な移動手段を1つのサービスとして利用者がニーズに応じて最適な形で利用可能なモビリティサービスパッケージです。移動手段には、電車バス、自家用車だけでなく船舶や航空機など乗り物すべてということになります。ライドシェアや乗り合いなどがMaaSと認識されるケースも多く、非常に可能性のあるモビリティサービスですが、MaaSはより広い概念です。

これまで、電車やタクシーなど交通機関は独立して機能していました。また輸送ハードウェアの特性、輸送コスト、業態の違いなどもあり、時間的、空間的、物理的な制約が異なります。各モビリティ事業者間の連携がほとんどない状態です。MaaSでは、ICTの力を借りて複数の交通事業者が業界、業態を越えて連携できるようにします。MaaS実現で重要なのは、このプラットフォーム(土台)とその中にある機能です。

---:MaaSプラットフォームとは、具体的にどんなものをイメージすればいいのでしょうか。

MaaSプラットフォームは、物理的な移動ハードウェアおよびそのサービスを、仮想的なひとつサービスとみなすしくみです。利用者は、目的地やしたいことを決めれば、そこへの最適な移動手段の組み合わせがシームレスに手配されます。基本的に、ホチキス止めのように一つにすることに何の意味もありません。MaaSの価値が発現するのはそれらのデータを統合して最適化を図った時だけです。それは交通機関同士の関係もあれば、移動者と交通、決済とマーケティングなど多様な領域があります。

ここで重要になるのは、地図データ、各交通事業者の運賃、運行情報、取引データなどのデータ交換を可能にする共通のサービスAPIです。これらをクラウド上に構築し、これらを統合的に組み合わせる統合サービス事業者(MaaSオペレータ)が、利用者のリクエストに応えます。

●MaaSで自動車を減らす取り組みも

---:そのようなMaaSプラットフォームを使った事例はなにかありますか。

フィンランドは、MaaSのKPIとして自家用車比率を減らしています。国内に自動車メーカーを持たないため、自家用車市場が大きくなっても国内の資金が海外に流出し、また渋滞が増えるなど課題が山積し、国内へのメリットが多くありません。そこで政府は自家用車所有比率を減らす政策を立てました。

歴史的には、フィンランドで2012年から2015年まで行われたオンデマンドミニバスの実証実験がありました。KUTSUPLUSというプロジェクトですが、エリアを限定して乗り合いのオンデマンドバスのプロジェクトを実施しました。しかし、この実験はマネタイズ、事業化の面でビジネスとしては継続されませんでした。いくら利便性のあるサービスでも、究極のシェアリングといえる公共交通とうまく混在させないと競合になってしまいライドシェア単体、エリア限定ではスケールしなかったのです。そこで、2016年からは公共交通にオンデマンド輸送をリンクさせたMaaSにシフトするようになりました。

MaaSプラットフォームを事例としては、フィンランドのMaaSGlobal社のWhimアプリを挙げることができます。ヘルシンキ市内において、公共交通とタクシーの定額乗り放題サービスを実現しました。MaaSGlobal社は不動産会社とも連携して、交通費のサブスクライブと家賃がセットになった物件を展開するなど多様なビジネス展開を検討していると発言がありました。

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●地域の課題ごとのソリューションをカバーする日本型MaaS

---:日本にはどのようなMaaSが求められているのでしょうか。

フィンランドは自動車所有率の低減というミッションがありました。MaaSは課題解決の手段であり、設定する目標によってKPIも変わってきます。渋滞解消なのか、ラスワンマイルの利便性向上なのか。また、MaaS市場も、サービスオペレーターがプラットフォームやアプリを抑えるモデル(一人勝ち)、交通事業者が主体となって展開するモデル(交通連合)、これらのプラットフォームの相互接続させるモデル(ローミング)の形態が考えられます。

日本においては、都市部と地方ではそもそも課題が異なります。人口集中、混雑による経済損失の緩和・解消が課題の都市。過疎、赤字路線、担い手不足が課題の地方。スマートシティを目指すのか、コンパクトシティを目指すのかでもKPI設定、ソリューションが変わります。

日本では、まずこのような課題をどうするかという視点でMaaS戦略を考える必要があります。そのためにも、オープンで柔軟性のあるプラットフォームが重要なのです。また、その中に価値を生み出す機能が入っているかどうかが重要で、弊社ではその部分を様々な交通事業者様やスタートアップ、技術企業、行政機関などと連携して実装していきたいと考えています。

---:本日はお忙しいところありがとうございました。

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《中尾真二(Kazuya Miura)》

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