BMWデザインセミナー…Z4 新型はねじれを強調したサイドの面が特徴

BMWデザイン部門デザインディレクター 永島譲二氏
BMWデザイン部門デザインディレクター 永島譲二氏全 8 枚

ビー・エム・ダブリュー(BMWジャパン)は、BMWのデザイン部門で唯一日本人として活躍している永島譲二氏を迎え、一部報道陣に最新の『8シリーズ』や『Z4』、『3シリーズ』を例に、デザインセミナーを開催した。

永島譲二氏は1955年、東京の生まれ。1978年に武蔵野美術大学工芸工業デザイン学科を卒業後、ミシガン洲ウェイン州立大学大学院に入学。翌年デザイン修士課程を終了。1980年にアダム・オペルのデザイン部門に入社後、ルノーデザイン部門を経てBMWグループのデザイン部門へ。BMWでは『Z3』(1996年)や先々代『5シリーズ』(1996年)、先代「3シリーズ」(2005年)他多くの生産車やコンセプトカーのデザイン開発に関わっている。

今回はいずれのモデルも自身では手掛けていないものの、8シリーズとZ4に関してはそのコンセプトカーのプロジェクトマネージャーを務めていた。

日本へは2019年に導入が予定されているZ4から語ってもらおう。

BMWデザイン部門デザインディレクター 永島譲二氏BMWデザイン部門デザインディレクター 永島譲二氏

ヘッドライトが縦方向に

永島氏はまずZ4のフロント周りから説明を始める。「フロントで最も大きな特徴はこの2つの要素が入ったヘッドライトが横に並んでいたものから縦、実際には斜めになったことが挙げられる」。BMWのヘッドランプはこれまで水平方向に並んでいた。これが多少上に向かって2つの要素が連なって見せていることが大きな特徴なのだ。永島氏によると、「このアイディアはかなり前からあったのだが、ついにこのクルマがそういう顔つきになった」とのことだ。

BMWデザイン部門デザインディレクター 永島譲二氏BMWデザイン部門デザインディレクター 永島譲二氏

いま述べた2つの要素だが、BMWではこれを“ダブルラウンド”と呼んでいる。「2つの丸い反射鏡、つまり丸い要素が2回重なるヘッドランプを使ってきた。しかし、我々は丸にはこだわらず、同じ形の要素が2回繰り返すことを指していると解釈した」という。このダブルラウンドはヨーロッパではデイライトドライビングランプとして点灯しており、「この形が常に点灯したまま、クルマが昼間でも走っているので、遠くからでもBMWと分かるのだ」と説明した。

キドニーグリルの位置で性格を表現

BMWデザイン部門デザインディレクター 永島譲二氏BMWデザイン部門デザインディレクター 永島譲二氏

もうひとつ、キドニーグリルにも特徴がある。まずはその位置だ。左右のとがった部分がヘッドライトよりも低い位置に配された。「実は8シリーズも同様だ。Z4や8シリーズのようなスポーツカーは、この頂点を下げたキドニーにしようというアイディアなのだ。今後どうなるかはお楽しみにということだが、いまの時代にはこの考えを取り入れている」とし、横に広く、かつ低重心に見せていることを話す。

また、キドニーグリルのメッシュはBMWとして初めて採用したものだ。「近くで見ると羽が生えたような形をしており、かなり三次元的で立体的な奥行きのある形をしている。これまでとの違いを出すという意味で良いのではないかと僕は思っている」とのことだった。

BMWデザイン部門デザインディレクター 永島譲二氏BMWデザイン部門デザインディレクター 永島譲二氏

リアフェンダーにより光が当たるように

さて、次にサイドビューに話を移そう。初代と2代目のZ4は、「フロントのホイールを覆うようなラインと、リアフェンダーのアーチに沿うようなラインが大きな特徴だった」と振り返る。これが新型では、「フロントから下がるようなラインではなく、逆に後ろに向かって上がるラインになっており、これがメインテーマのラインだ」と述べる。

BMWデザイン部門デザインディレクター 永島譲二氏BMWデザイン部門デザインディレクター 永島譲二氏

もうひとつ、Z4、3シリーズ、8シリーズに共通することとして、「リアホイールを強調するという大きなテーマがある」という。それはパワーの象徴として、また走りのBMWとしては駆動輪を強調するという表われだ。永島氏は、「リアホイールを強調した形というのは他にもあるが、その多くは実際には前輪駆動で、デザインだけリアを強調している場合もある。しかし、BMWではもちろん本当にリアの駆動輪がそのままパワーの象徴として強調されている」とした。

Z4の場合にも、「サイドのラインが上がっていくことによってリアホイールを包み込んでいく形を強調。それと共に、“ボーンライン”と呼ばれる、ドアハンドル周りが光を受けて、その下側が影になる太いラインがある」。その効果は、「光を受ける度合いが後ろにいくに従って強くなっていくことだ。つまり徐々に面が捻じれていき、リアフェンダーに一番光が当たるようになっている」ことでよりこの部分を強調しているのだ。

BMWデザイン部門デザインディレクター 永島譲二氏BMWデザイン部門デザインディレクター 永島譲二氏

より具体的に永島氏は、「エアインテーク上側のラインは最初はポジティブで、面と面とを折った形になっており、そこでは光を受け下側では影になる。そこから後ろにいくにしたがってネガティブ面がポジティブに変化していき、リアフェンダーにおいて光を受けて後輪が強調している。これが大きなテーマなのだ」とのことだ。

また、近年のBMWに共通する空力のためのフィーチャー、エアブリーザーも採用された。「ホイールから空気が抜けてここから出るようになっていると同時に、サイドのスカルプチャーを強調するためのものだ」。

BMW Z4 新型BMW Z4 新型

キドニーグリルの行方

さて、BMWデザインの大きなアイデンティティであるキドニーグリルだが、スポーツカー系では横方向に広がり、SUVではどちらかというと縦方向に大きく、少し圧力を感じるようなイメージなっている。その点について永島氏は、「遠くから視認できるという点で、グリルは一番のアイデンティティなる。BMWの場合には2分割しているという形こそが特徴だが、一方サイズ的に大きくすることか割と難しい」という。

その理由は、ライセンスプレートの位置が法規で決まっており、アメリカの安全基準でこれより下にはつけられない現状があるのだ。つまりキドニーグリルの下の限界はここで決まってしまうということだ。「しかし、SUVの場合にはフロントの高さがあるので、高さを強調する方向となり、その傾向はおそらくしばらく続くだろう」と語った。

《内田俊一》

内田俊一

内田俊一(うちだしゅんいち) 日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員 1966年生まれ。自動車関連のマーケティングリサーチ会社に18年間在籍し、先行開発、ユーザー調査に携わる。その後独立し、これまでの経験を活かしデザイン、マーケティング等の視点を中心に執筆。また、クラシックカーの分野も得意としている。保有車は車検切れのルノー25バカラとルノー10。

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