国土交通省運輸安全委員会の中橋和博委員長は、1月29日に開かれた委員長会見で熊本県の熊本電気鉄道(熊本電鉄)で発生した脱線事故について言及した。
事故は1月9日に藤崎線黒髪町~藤崎宮前間で発生し、2両編成の列車で2両目の後部台車が2軸とも脱線した。これに伴ない、直通運行を行なっている菊池線を含む藤崎宮前~御代志(みよし)間が終日運休となりバス代行が実施されたが、1月11日には黒髪町~御代志間の鉄道運行を再開。2月3日には藤崎線全線が再開している。
会見では、2017年2月に同一区間で軌間拡大が原因とされる脱線事故が発生していたことから、そのことと今回の事故の関連性が質問された。
これに対して中橋委員長は「曲線中における木まくらぎの箇所で発生しており、犬くぎの緩み等も認められたことから、前回と同様、軌間拡大が原因の可能性もあると考えている」として、全国の鉄道事業者に対して、軌間拡大対策を早期に進め安全性の向上に努めてほしいと述べた。
2017年2月の事故では「適切な軌道整備が行われていなかったこと等により軌間が大きく拡大したこと」が原因として、「軌道整備の着実な実施」「木まくらぎをコンクリート製まくらぎへ交換すること」といった対策を盛り込んだ事故調査報告書が2018年1月に公表された。熊本電鉄では前回の事故を受けてそれらの対策を進めてきたが、事故区間のまくら木は依然として木製のままであったという。
「軌道」と呼ばれる鉄道線路では、左右に伸びる2本のレールの間隔を「軌間」と呼ぶが、列車が往来するごとに所定の値より間隔に少しずつ狂いが生じ、「軌間拡大」(「軌道狂い」とも呼ぶ)が発生する。これを防ぐには、まくら木を強固なコンクリート製にする、レールの締結や固定方法を見直すなどの対策が必要になる。
運輸安全委員会ではこの点も鑑み、「優先順位等その交換手順についても、今後、調査をしていきたいと考えています」としている。