クルマも“おさがりコーデ”が人気?…ちょっと古いボルボに試乗する

70-90 年代のボルボ車をレストア

50年前のアマゾンで高速道路を走る

若者に人気の赤い240ワゴン

20年先まで安心して乗れる

240ワゴン
240ワゴン全 39 枚

70-90 年代のボルボ車をレストア

若い女子たちの間で、親の服を着る「おさがりコーデ」が流行っているという。年末の歌番組でアイドルグループのなんとか坂が、90年代風のダブダブな服を着て歌っているのを見たときは、「いったい何のコスプレ?」と思ったが、リアルに自分の父親、母親の服を借りて衣装にしていたのだそうだ。それってオシャレなのか? と思いつつ、流行りっていうのは“繰り返す”ものなんだなァ……、と妙に感心してみたり。

で、クルマの世界にも80~90年代リバイバルの“波”は来ている。先日観た『ワールドビジネスサテライト』では、アメリカ・テキサス州で行われている、80~90年代のクルマ(主に日本車)の愛好家たちによるイベントを紹介していた。そこに集まる若者たちは、R32スカイラインやRX-7などに嬉々として乗っているのだ。

そんな流行りと関係あるかどうかはわからないが、ボルボ・カーズ・ジャパンは数年前から、70~90年代の“ちょっと古い”ボルボ車をレストア、メインテナンスする「KLASSISK GARAGE(クラシックガレージ)」というサービス拠点をオープンさせている。

122Sアマゾン122Sアマゾン対象となるのは70年代の『アマゾン』や『P1800』から、90年代に販売されていた『240』、『940』あたりまで。基本的には“FRのボルボ”ということである。

ちなみにこの「クラシックガレージ」は、帝人ボルボ時代から35年間にわたり、ボルボでアフターサービスを担当してきた、日本におけるボルボの“生き字引”こと阿部昭男さんが会社に提案して実現したプロジェクトなのだという。

50年前のアマゾンで高速道路を走る

そのクラシックガレージが仕上げたボルボ車の試乗会が行われた。用意されたのは1970年式「122Sアマゾン」、73年式「P1800ES」、93年式「240ワゴン」、96年式「940エステート」の4台。そのうち割り当てられたアマゾンと240ワゴンの2台に乗ることができた。

まずは白いアマゾンに乗る。1956年から70年まで製造されていたアマゾンは、世界で初めて「3点式シートベルト」を装備した、ボルボの安全哲学の礎になるモデルだ。当時の「北欧自動車」が輸入し「ヤナセ」が販売した個体で、走行35万kmのワンオーナー車(!)だという。

122Sアマゾン122Sアマゾンいかにも一人のオーナーが大事に乗り続けてきたクルマらしく、ペイントはオリジナル状態を保ち、内装もグッドコンディションだ。クラシックガレージによりエンジンのオーバーホール、足まわりのリフレッシュなどが施されている。

2リットル4気筒のエンジンはセル一発で目覚める。アイドリングが安定するのを待ち、ストロークの大きな4速MTのシフトレバーを操り「ガッコン」とギアを入れ走り出す。トランジスタラジオのような横長のスピードメーターの上を、針がフラフラと動く様がなんとも可愛らしい。

1時間ほどの試乗だったが、一般道でも高速でも、現代の交通の流れに乗ってストレスなく走ることができた。“重ステ”だから低速では「エイや!」と気合を入れてハンドルを回す必要があるものの、予想以上に“普通に”運転できてしまうのに驚いた。

若者に人気の赤い240ワゴン

続いて赤い240ワゴンに乗る。50年落ちのアマゾンから乗り換えると、ずいぶんモダンなクルマに思えるが、これだってもう四半世紀前のモデルだ。

240は1974年のデビューから93年まで、20年にわたって製造された長寿モデルだ。この個体は93年式「240 WAGON TACK」で、“TACK”とはスウェーデン語で「ありがとう」という意味。ボルボが最後に感謝の意を込めて発売した、正真正銘の最終モデルなのである。

240ワゴン240ワゴン240の魅力は、なんといっても四角い箱を積み上げたようなボクシーなスタイリングだ。現代のクルマでは絶対に出せない“味”のあるデザインは、今も若者からの人気が高いという。確かにこの真っ赤な240なら、女の子にも「かわいい~」と言われそうだ。まさにクルマ版「おさがりコーデ」である。

乗ってみると、ふんわりと厚みのあるシートのかけ心地に癒やされる。まるで母の胸に抱かれているような安心感。重めのアクセルを踏み込むと、2.3リットル4気筒エンジンは粛々とトルクを積み上げ、ジワーッと車速を伸ばしていく。ハンドリングも乗り心地もすべてが穏やかで、実直としか言いようのないクルマなのである。

240ワゴン240ワゴンちなみにこの240ワゴンも1オーナー車。クラシックガレージによりボディはリペイントされ、ATは新品に交換されている。オールペンとはいえボルボ・ジャパンがやっているのだから、「色がオリジナルと違う」なんてことはない。トランスミッションをはじめパーツはもちろん純正を使用している。

責任者の阿部さんによれば、ボルボ車は古いモデルのパーツ供給体制がしっかりしているとのこと。比較的モデル数が少なく車種間の共有パーツが多いことが、潤沢なパーツ供給を可能にしていると言う。

20年先まで安心して乗れる

2016年8月に阿部さんとメカニックの2人でスタートした「クラシックガレージ」は、予想以上の好評を得て、昨年からはメカニックを増員。現在は3人体制で運営している。

「最新モデルを販売する一方で、ボルボ車に長く乗り続けていただきたいという想いもあります。20年先まで安心して乗っていただける、ということを考えてレストア、メインテナンスを行っています」

240ワゴン240ワゴンボルボ・オーナーならずとも、クルマ好きにとっては嬉しい言葉だ。クラシックガレージではレストアやメインテナンスだけでなく、仕上げたクルマの販売も行っている。これまで計13台の“ちょっと古い”ボルボを販売したそうだ。

ちなみに「試乗した240ワゴン、いくらぐらいするんですか?」と尋ねたところ、「300万円台半ばぐらいでしょうか」とのこと。うーん、安心して乗れるクラシック・ボルボを手に入れるには、やはり相応の予算が必要なのである。

《河西啓介》

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